ワークシェアリングとは?企業が導入するメリット・デメリット、種類、導入方法を解説

人材確保が難しくなるなかで、「既存従業員の負担を増やさずに現場を回したい」「長時間労働を減らしたい」「育児や介護と両立しやすい勤務形態を整えたい」と考える企業は少なくありません。一方で、労働時間を短縮すれば、現場の稼働や売上、給与、評価制度に影響が出るため、単純にシフトや勤務時間を削ればよいわけではありません。
そこで注目される考え方が、ワークシェアリングです。本記事では、ワークシェアリングの意味や種類、メリット・デメリット、導入方法、スポットワーク・スキマバイトを活用した人材確保の考え方まで、求人を掲載する企業向けに解説します。
- ワークシェアリングとは、仕事や労働時間を複数人で分担し、雇用の維持・創出を図る仕組みであること
- ワークシェアリングには、雇用維持型(緊急避難型)/ 雇用維持型(中高年対策型)/ 雇用創出型 / 多様就業対応型の4種類があること
- 企業にとっては、離職防止、人材確保、長時間労働の抑制、業務改善につながる一方で、管理負担や処遇調整のリスクもあること
- 導入時は、目的設定、業務量の把握、人事制度の見直し、労使合意、マニュアル化、効果測定が重要であること
- 社内の業務分担だけで補いきれない時間帯は、スポットワーク・スキマバイトを活用することで欠員対応や採用コストの最適化につなげられること
【結論】ワークシェアリングとは「雇用・賃金・労働時間を適切に配分し、雇用の維持・創出のために労働時間の短縮を行う」こと

ワークシェアリングとは、雇用の維持・創出を目的として、労働時間の短縮を行う取り組みです。厚生労働省が2002年に発表した「ワークシェアリングに関する政労使合意」では、ワークシェアリングについて「雇用の維持・創出を図ることを目的として労働時間の短縮を行うもの」であり、「雇用・賃金・労働時間の適切な配分を目指すもの」と整理されています。
企業にとってのワークシェアリングは、単に労働時間を減らす施策ではありません。少子高齢化や経済・産業構造の変化に対応しながら、既存従業員の雇用を守り、新たな雇用機会を創出し、多様なはたらき方を実現するための人事・労務施策です。業績悪化時の緊急的な雇用維持だけでなく、短時間勤務やシフト制などを通じた人材確保にも活用できます。
[出典]厚生労働省「ワークシェアリングに関する政労使合意」
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/03/h0329-1.html
ワークシェアリングの意味とビジネス用語としての使われ方
ワークシェアリングは、英語の「work sharing」に由来し、仕事を分かち合うという意味を持ちます。ビジネス用語としては、企業が労働時間や仕事量を分散し、雇用維持、人材確保、労働環境の改善、生産性向上を目指す人事・労務施策を指します。
例えば、業績悪化により仕事量が一時的に減った場合、解雇や早期退職を選ぶのではなく、従業員全体の労働時間を短縮して雇用を維持する方法があります。一方で、業績が悪化していない企業でも、短時間勤務やシフト制を整備し、育児や介護と両立したい社員、定年後も継続してはたらきたい社員、限られた時間で就業したい人材を活用する目的で導入されることがあります。
ワークシェアリングとジョブシェアリングの違い
ワークシェアリングと似た言葉に、ジョブシェアリングがあります。ワークシェアリングは、企業や部署全体で仕事量や労働時間を分け合う広い考え方である一方、ジョブシェアリングは、1つの職務やポジションを複数人で担当する仕組みを指します。
例えば、店舗全体で社員の残業時間を減らし、ピーク時間だけアルバイトや短時間勤務者を配置する取り組みは、ワークシェアリングに近い考え方です。一方で、1つの管理業務を午前担当と午後担当に分けたり、1つの専門職ポジションを2名で分担したりする場合は、ジョブシェアリングに近い形といえます。
ワークシェアリングが日本で注目される背景
日本でワークシェアリングが注目される背景には、少子高齢化による労働力の減少、人材確保の難化、長時間労働の改善、育児・介護との両立ニーズの増加があります。
従来は、フルタイムで長時間はたらける社員を中心に業務を組み立てる企業も少なくありませんでした。しかし、現在は育児、介護、健康上の理由、定年後の継続就業、副業・兼業など、従業員一人ひとりの事情や希望が多様化しています。企業側が画一的な勤務形態だけを前提にしていると、経験やスキルを持つ人材が離職したり、応募者の対象が狭まったりする可能性があります。
ワークシェアリングの種類|企業が理解すべき4つのタイプ
ワークシェアリングには、主に4つのタイプがあります。雇用維持型(緊急避難型)、雇用維持型(中高年対策型)、雇用創出型、多様就業対応型です。
企業が導入を検討する際は、どのタイプに該当するのかを明確にする必要があります。業績悪化への一時的な対応なのか、中高年層の継続雇用なのか、新たな雇用機会の創出なのか、多様なはたらき方への対応なのかによって、制度設計や従業員への説明内容が変わるためです。
[出典]厚生労働省「ワークシェアリングに関する調査研究報告書」
https://www.mhlw.go.jp/houdou/0104/h0426-4.html
ワークシェアリングの4つのタイプ比較表
| 種類 | 目的 | 背景・想定される場面 |
|---|---|---|
| 雇用維持型(緊急避難型) | 一時的な景況悪化を乗り越え、社内の雇用を維持する | 業績悪化や生産量・売上の減少により、余剰人員が発生している場面 |
| 雇用維持型(中高年対策型) | 中高年層や高齢者の雇用を維持し、経験・知識・技術を継続活用する | 中高年層の余剰人員の発生、60歳台前半の雇用延長、定年後再雇用への対応が必要な場面 |
| 雇用創出型 | 労働時間の短縮により、新たな雇用機会を創出する | 高失業率への対応や、既存従業員の長時間労働を見直して新たな人材を採用したい場面 |
| 多様就業対応型 | 多様な勤務形態を整備し、より多くの人材に雇用機会を提供する | 育児・介護との両立、健康上の事情、定年後の就業、女性・高齢者の就業機会拡大、就業意識の多様化に対応したい場面 |
このように、ワークシェアリングは一律に労働時間を短縮する制度ではなく、目的に応じて設計すべき人事・労務施策です。特に企業が導入する場合は、対象となる従業員、分担する業務、賃金や評価の扱いを明確にし、現場で無理なく運用できる形に整えることが求められます。
1.雇用維持型(緊急避難型)|業績悪化時に解雇を防ぐ方法
雇用維持型(緊急避難型)は、一時的な景況悪化を乗り越えるため、従業員1人あたりの所定内労働時間を短縮し、社内でより多くの雇用を維持する方法です。厚生労働省によると、企業業績の低迷を背景に、現在雇用されている従業員間で仕事を分け合い、所定内労働時間の短縮や休暇の増加によって雇用維持を図る類型とされています。
例えば、工場で生産量が一時的に減少した場合、出勤日数や1日あたりの勤務時間を調整し、特定の社員だけを休ませるのではなく、社員全体で仕事量を分担する方法があります。店舗やサービス業でも、売上が落ち込む時期に一部の社員だけに負担を寄せるのではなく、勤務時間やシフトを調整して雇用を維持する選択肢が考えられます。
一方で、雇用維持型(緊急避難型)は、賃金や収入の取り扱いが課題になりやすい点に注意が必要です。厚生労働省の調査でも、企業側は「労働時間短縮ほど人件費は低下しない」「一律の扱いによる不公平感」を課題として挙げ、勤労者側は「賃金の低下」を不安視する傾向が示されています。そのため、企業側は実施理由、対象範囲、期間、労働時間の短縮幅、賃金や手当への影響を明確にし、従業員と十分に協議したうえで導入することが重要です。
2.雇用維持型(中高年対策型)|経験豊富な人材を継続活用する方法
雇用維持型(中高年対策型)は、中高年層の雇用を確保するために、対象となる従業員1人あたりの所定内労働時間を短縮し、社内でより多くの雇用を維持する方法です。厚生労働省によると、中高年層を中心とした余剰人員の発生や、60歳台前半の雇用延長などを背景にした類型とされています。
企業にとって、中高年層や高齢者の継続雇用は、単なる人材確保にとどまりません。長年の経験、知識、技術を持つ社員が在籍し続けることで、若手社員への技能継承、現場判断の安定、教育コストの削減にもつながります。特に製造、物流、販売、専門職など、現場経験や専門性が成果に直結する職種では、経験豊富な人材をどのように継続活用するかが重要になります。
導入時には、短時間勤務、勤務日数の調整、職務限定、定年後再雇用などを組み合わせることが考えられます。一方で、勤務時間や役割が変わる場合は、責任範囲や評価方法も見直す必要があります。フルタイム時代と同じ成果を一律に求めるのではなく、短時間勤務の中で担う職務、期待する成果、賃金や処遇の考え方を明確にし、本人と現場の双方が納得できる制度設計を行うことが大切です。
3.雇用創出型|労働時間の短縮で新たな雇用機会を作る方法
雇用創出型は、失業者に新たな就業機会を提供することを目的として、国または企業単位で労働時間を短縮し、より多くの人材に雇用機会を与える方法です。厚生労働省によると、高失業率の慢性化を背景に、労働者と失業者の間で雇用機会を分かち合う類型として整理されています。
企業単位で考える場合は、既存従業員の長時間労働を見直し、短縮した労働時間や切り出した業務を新たな採用に振り向ける方法が考えられます。例えば、社員が毎日残業して対応していたピーク時間帯の業務を切り出し、短時間勤務のアルバイトやパートタイマーを採用する方法です。物流、小売、飲食、イベント、オフィスワークなど、時間帯ごとに業務量が変動する業種では、必要な時間に必要な人材を配置しやすくなります。
ただし、厚生労働省の調査では、法定労働時間短縮による雇用創出について、企業側・従業員側とも積極的な評価は多くない傾向も示されています。そのため、企業が雇用創出型を進める場合は、単に労働時間を短縮するのではなく、どの業務を切り出すのか、どの時間帯に人材が必要なのか、既存従業員と新たな人材の役割をどう分けるのかを具体的に設計することが重要です。求人掲載時にも、仕事内容、勤務時間、必要なスキル、教育体制を明確にすることで、採用後のミスマッチを防ぎやすくなります。
4.多様就業対応型|短時間勤務やシフト制で多様なはたらき方に対応する方法
多様就業対応型は、正社員の勤務の仕方を多様化し、女性や高齢者をはじめ、より多くの人材に雇用機会を与える方法です。厚生労働省によると、勤務時間や日数の弾力化、ジョブシェアリング、フルタイムからパートタイムへの転換などが、仕事の分かち合いの手法として整理されています。
多様就業対応型は、現在の企業にとって特に重要な考え方です。育児や介護と仕事を両立したい社員、健康上の理由で勤務時間を調整したい社員、定年後も一定の範囲で就業したい高齢者など、フルタイム以外の選択肢を求める人材は増えています。企業が短時間勤務、時短勤務、シフト制、在宅勤務などの選択肢を整備できれば、離職防止や採用対象の拡大につながります。
厚生労働省の調査でも、多様就業対応型については、企業側が「有能な人材の確保や、退職・流出の防止につながる」点を重視していることが示されています。一方で、責任の所在が曖昧になる、生産性が低下する、人件費が上昇するなどの懸念も挙げられています。そのため、多様なはたらき方を認めるだけでなく、職務内容、責任範囲、成果基準、賃金・退職金の取り扱い、昇進・昇格、教育訓練、登用ルールを整理し、公平に運用する体制を整えることが求められます。
ワークシェアリングを導入するメリット・デメリット

ワークシェアリングには、企業にとって多くのメリットがあります。一方で、導入方法を誤ると、管理負担の増加、生産性の低下、処遇に関する不満などのデメリットが発生する可能性もあります。
重要なのは、労働時間を減らすことだけを目的にしないことです。雇用維持、人材確保、労働環境の改善、生産性向上を実現するには、業務設計や人事制度の見直しとセットで進める必要があります。
メリット|雇用維持・離職防止・人材確保につながる
メリット|労働環境の改善と長時間労働の抑制につながる
メリット|業務の見直しにより生産性向上を狙える
デメリット|管理負担・生産性低下・処遇調整のリスクがある
ワークシェアリングの導入方法・失敗を防ぐポイント
ワークシェアリングを導入する際は、社内制度としての設計を丁寧に行う必要があります。特に多様就業型ワークシェアリングでは、短時間正社員制度のように、フルタイム正社員より所定労働時間が短い勤務形態を整備し、育児・介護・自己啓発などの事情がある従業員も正社員のまま就業を継続できる環境を作ることが重要です。
また、いきなり全社導入するのではなく、現場の実態を把握し、業務運営と人事管理の両面から課題を整理したうえで、段階的に導入・改善していくことが失敗防止につながります。
[出典]厚生労働省「多様就業型ワークシェアリング 制度導入マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/01/dl/h0119-1d.pdf
ステップ1:制度を導入するメリットを確認する
まず、ワークシェアリングを導入することで、自社にどのようなメリットがあるのかを整理します。厚生労働省のマニュアルでは、短時間正社員制度の導入により、有能な人材の定着や人材確保、企業競争力の向上、人事管理・労働時間管理・賃金管理・業務の進め方の見直しによる効率性向上が期待できるとされています。
例えば、家庭の事情により優秀な従業員が退職してしまう、長時間労働によってモラールや仕事の効率が低下している、若い人材を確保・定着させたい、高齢者の経験や技術を継承したいといった課題がある企業では、多様就業型ワークシェアリングの導入余地があります。
この段階では、単に「労働時間を短くする制度」として考えるのではなく、離職防止、人材確保、生産性向上、技能継承、労働環境の改善といった経営課題にどうつながるのかを確認することが重要です。導入目的が曖昧なままだと、制度を作っても現場で活用されにくくなります。
ステップ2:現場の管理職・従業員のニーズを把握する
次に、現場の管理職や従業員のニーズを把握します。厚生労働省のマニュアルでは、制度導入にあたって現場の管理職・従業員の声を聞き、各層のニーズを偏りなく把握することが重要とされています。
管理職に対しては、現在の職場で人材の定着、長時間労働、若手人材の確保、高齢者の技術継承などに課題があるかを確認します。あわせて、短時間勤務や短日勤務を導入した場合、顧客対応に支障が出ないか、仕事の配分が難しくならないか、人事労務管理が複雑にならないかといった懸念も把握します。
従業員に対しては、育児・介護、健康面、自己啓発、社会活動などの理由で、残業のないはたらき方、1日の労働時間が短いはたらき方、週の勤務日数が少ないはたらき方を希望するかを確認します。その際、制度導入が「コスト削減のために労働時間を短くするもの」と誤解されないよう、企業側の目的だけでなく、従業員側のメリットも伝えることが大切です。
ステップ3:制度導入の対象となる職場・業務を整理する
ニーズを把握したら、制度導入の対象となる職場や業務を整理します。厚生労働省のマニュアルでは、制度導入にあたって対象を絞らず全社的に導入することが望ましい一方、いきなり全社導入が難しい場合は、初めは対象業務を限定し、徐々に対象を広げる方法も有効とされています。
まずは、現在の職場の中で特に対応が必要な業務や職層を洗い出します。例えば、長時間労働が発生しやすい部署、育児や介護による離職リスクが高い職場、経験豊富な高齢者の技術継承が必要な現場などです。そのうえで、比較的導入しやすい業務や職層から試行し、段階的に対象を広げる流れが現実的です。
一見すると導入が難しい業務でも、業務の進め方を見直すことで対応できる場合があります。業務を分解し、短時間勤務でも担当できる範囲を明確にする、主担当と補助担当を分ける、情報共有の仕組みを整えるなど、自社の実情に応じて導入の道筋を検討しましょう。
ステップ4:業務運営と人事管理の課題解決策を検討する
制度導入の対象が見えてきたら、業務運営と人事管理の両面から課題解決策を検討します。厚生労働省のマニュアルでは、短時間勤務や短日勤務などの勤務形態にはさまざまな選択肢があり、労使のニーズに合わせて適切なものを選ぶべきとされています。
業務運営では、短時間勤務者の業務を誰が補完するのか、引き継ぎをどのように行うのか、資料や情報をどこで共有するのかを整理します。現場の管理職が職場全体の進捗をフォローし、資料の所在を明確にし、IT化によって誰でも情報を共有できるようにすることも有効です。
人事管理では、賃金、賞与、退職金、評価、昇給・昇格、教育訓練、福利厚生、フルタイム正社員への復帰・転換ルールを整理する必要があります。特に、短時間勤務者であることだけを理由に不利益な評価にならないよう、能力や成果に基づく評価制度を整え、評価者への教育も行いましょう。制度利用者だけでなく、周囲の従業員の理解を得るためにも、会社にとっての意義や制度内容を丁寧に周知することが重要です。
ステップ5:社内規程を整備し、対象職場・業務で試行する
制度内容が固まったら、社内規程を整備し、対象となる職場や業務で試行します。厚生労働省のマニュアルでは、短時間正社員制度は労働条件に関係するため、労働組合または労働者の代表と十分に協議し、制度の内容や導入段階に応じて社内規程を整備することが望ましいとされています。
社内規程では、制度の目的、制度内容、対象となる業務・職場、短縮時間や短縮日数、対象事由や期間、制度利用や延長、フルタイム正社員への復帰手続き、業務遂行上の留意点、仕事の割り当て、引き継ぎ方法などを明確にします。常時10人以上の労働者を使用する企業では、就業規則の作成・届出が必要になるため、労働時間や賃金に関する事項を適切に反映することも大切です。
試行段階では、導入しやすい職場でモデル的に運用し、問題点を把握します。想定していたメリットが得られたか、懸念していた問題が発生したか、周囲の従業員にどのような影響が出たかを確認し、本格導入に向けたノウハウを蓄積します。
ステップ6:試行結果を踏まえて本格導入し、フォローアップを続ける
試行した結果を検証したうえで、本格導入へ進みます。厚生労働省のマニュアルでは、制度導入後も経過を把握し、必要に応じて問題点を解決しながら制度を改善すること、段階的に対象職場・業務の範囲を拡大することが示されています。
本格導入後は、制度利用者、同僚、上司に対してヒアリングを行い、仕事の引き継ぎ、業務内容、権限、仕事の進め方、顧客対応、制度への意見などを確認します。制度利用者だけでなく、周囲の従業員に一時的な負担がかかっていないか、評価面で適切に配慮されているかも確認しましょう。
ワークシェアリングは、一度制度を作れば終わりではありません。残業時間、生産性、離職率、欠員発生回数、採用コスト、従業員満足度などを継続的に確認し、必要に応じて勤務形態、業務分担、評価制度、教育訓練、シフト設計を見直すことが重要です。制度を運用しながら改善を重ねることで、企業にとっても従業員にとっても使いやすい仕組みに近づけられます。
業種別に見るワークシェアリングの活用パターン

ワークシェアリングは、業種や職種によって導入方法が異なります。工場・製造業、小売・販売・飲食、オフィス・事務職・専門職では、仕事の切り分け方や必要な管理体制が変わるためです。
ここでは、企業が自社で導入する際の参考になるよう、業種別の活用パターンを整理します。重要なのは、制度だけを作るのではなく、現場の業務量や人材配置に合わせて運用することです。
[出典]厚生労働省「第2章 わが国におけるワークシェアリングの実践例」
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/06/h0630-2c1.html
工場・製造業|生産量に応じて勤務時間や休日を調整する
工場・製造業では、景気や需要の変化によって生産量が大きく変動することがあります。生産量が一時的に減少した場合は、休日数の増加、1日あたりの勤務時間短縮、交替勤務制度の見直しなどによって、雇用を維持しながら稼働を調整する方法が考えられます。
厚生労働省の資料でも、緊急対応型ワークシェアリングの事例として、工場部門を対象に「工場週3休制」を導入した企業や、交替勤務を見直して労働時間を短縮した企業が紹介されています。これらは、一時的な生産量や売上の減少により余剰人員が発生した際、労使の合意により、生産性の維持・向上を図りながら雇用を維持する取り組みとして整理されています。
また、生産水準が下がる時期を単なる休業期間にするのではなく、研修や多能工化、技能継承の機会として活用することも可能です。実際に、工場ラインの余裕時間を活用して若手従業員の多能工化を目的とした研修を行い、需要回復後の生産性向上につなげた事例もあります。中高年層や高齢者の経験を活かし、若手社員への教育や作業標準化を進めれば、将来的な生産性向上にもつながります。
小売・販売・飲食|ピーク時間に合わせて短時間シフトを設計する
小売・販売・飲食では、来店数が集中する時間帯や曜日が比較的明確に分かれることが多くあります。土日、祝日、平日夕方、ランチタイム、ディナータイム、イベント時期などに業務量が増える場合、短時間シフトを組み合わせることで、既存社員の長時間労働を抑えやすくなります。
例えば、社員が開店から閉店まで長時間カバーしている店舗では、ピーク時間帯だけアルバイトやスポットワーク・スキマバイトで人材を配置する方法があります。レジ、品出し、清掃、配膳補助、受付、バックヤード作業などを切り出せば、社員は管理業務や顧客対応、売場づくり、スタッフ教育などに集中しやすくなります。
ワークシェアリングの観点では、単に人材を追加するのではなく、既存従業員の労働時間や担当業務を見直し、必要な時間帯に必要な人材を配置することが重要です。短時間で任せやすい業務をあらかじめ整理しておけば、長期採用だけでは埋めづらい時間帯にも対応しやすくなります。
オフィス・事務職・専門職|業務分解と情報共有の仕組みが重要
オフィス・事務職・専門職では、業務をどのように分解し、複数人で担当できる形に整えるかが重要です。人事、経理、カスタマーサポート、営業事務、エンジニアなどでは、定型業務、確認作業、顧客対応、レビュー業務、資料作成などを分けることで、短時間勤務や複数担当制を導入しやすくなります。
例えば、経理業務であれば、請求書確認、データ入力、支払い処理、承認、月次締めなどに分解できます。カスタマーサポートであれば、一次対応、専門確認、返信文面の作成、管理者承認といった流れに整理できます。専門職では、設計、開発、レビュー、保守、顧客対応などに分けることで、役割や責任範囲を明確にしやすくなります。
厚生労働省の資料でも、緊急対応型ワークシェアリングの事例として、本社・間接部門や工場間接部門を対象に、1日あたりの労働時間短縮や休日増によって雇用維持を図った例が紹介されています。オフィス業務や専門職では、時間で区切りやすい業務と、判断力や継続的な対応が求められる業務を切り分けることが重要です。
スポットワーク・スキマバイトを活用したワークシェアリングの導入
ワークシェアリングは、社内の業務分担だけで完結するとは限りません。既存従業員の労働時間を調整すると、平日夕方、土日、繁忙期、急な欠勤時など、一部の時間帯だけ人材が不足することがあります。
そのような場合は、スポットワーク・スキマバイトを活用し、短時間の求人掲載や単発シフトで不足時間帯を補う方法が有効です。社内の労働時間を分担しながら、必要な時間に外部人材を組み合わせることで、現場の稼働を安定させやすくなります。
不足している曜日・時間帯を可視化し、募集条件に落とし込む
スポットワーク・スキマバイトを活用する前に、まず不足している曜日や時間帯を可視化します。既存従業員の勤務時間、来店数、作業量、欠員発生状況、残業時間を確認し、どの時間に何人必要なのかを整理します。
例えば、飲食店ではランチタイムやディナータイム、小売店では土日や夕方、物流拠点では出荷作業が集中する時間帯に人材が必要になりやすいでしょう。オフィスでも、月末月初やキャンペーン時期にデータ入力や問い合わせ対応が増える場合があります。
不足時間帯が明確になれば、求人掲載時の条件も具体化できます。勤務時間、仕事内容、必要なスキル、服装、持ち物、当日の流れ、受け入れ人数を明記することで、就業者が業務を理解しやすくなり、現場の受け入れ負担も軽減できます。
短時間で任せやすい業務を切り出し、受け入れ体制を整える
スポットワーク・スキマバイトを活用する場合は、数時間単位で任せやすい業務を切り出すことが重要です。品出し、仕分け、清掃、受付補助、検品、イベント対応、ピークタイムの接客補助など、短時間でも成果を出しやすい業務は、スポットワーク・スキマバイトと相性がよいといえます。
一方で、専門的な判断や長期的な顧客対応が必要な業務を、いきなり外部人材に任せるのは難しい場合があります。最初は定型作業や補助業務から始め、業務内容をマニュアル化したうえで、必要に応じて任せる範囲を広げるとよいでしょう。
受け入れ体制の整備も欠かせません。当日の責任者、集合場所、業務説明、休憩時間、注意点、トラブル時の対応を決めておくことで、就業者も既存従業員もスムーズに動きやすくなります。結果として、現場責任者の負担を抑えながら、短時間の人材活用を進めやすくなります。
欠員対応・繁忙期対応としてスポットワーク・スキマバイトを活用する
スポットワーク・スキマバイトは、長期採用だけでは埋めづらい短時間のシフトや、急な欠員、繁忙期の増員に対応しやすい手段です。ワークシェアリングで社内の労働時間を分担しつつ、不足する時間帯を外部人材で補うことで、現場の稼働安定と採用コストの最適化につなげられます。
特に、求人広告を出しても応募が集まりにくい短時間帯や、数日だけ人材が必要な繁忙期には、スポットワーク・スキマバイトの活用が有効です。長期雇用を前提にした採用では、採用までの期間や面接、教育に時間がかかる場合があります。一方、短時間・単発の募集であれば、必要なタイミングに合わせて人材を確保しやすくなります。
ただし、スポットワーク・スキマバイトを継続的に活用する場合も、業務品質や現場負担を確認することが重要です。募集内容と実際の業務にずれがないか、既存従業員の負担が増えていないか、就業者が迷わず業務に入れているかを定期的に見直しましょう。
スポットワーク・スキマバイトの導入ならパーソルグループの「シェアフル」がおすすめ!
スポットワーク・スキマバイトの導入を検討する企業には、シェアフルがおすすめです。シェアフルは、スポットワーク・スキマバイトの募集・求人掲載ができる企業向けサービスで、数時間の単発シフトから求人掲載が可能です。
ワークシェアリングを進めると、社内の労働時間や業務分担を調整する一方で、どうしても不足する時間帯が出てくる場合があります。シェアフルを活用すれば、その不足している時間帯に合わせて求人掲載を行いやすく、欠員対応や繁忙期の増員にもつなげやすくなります。


ワークシェアリングに関してよくある質問

ワークシェアリングは、意味や種類だけでなく、導入時の注意点、法制度との関係、海外での広がりについても疑問を持たれやすいテーマです。ここでは、企業の採用担当者や店舗責任者が確認しておきたいポイントをQ&A形式で整理します。
Q. ワークシェアリングとはどういう意味ですか?
ワークシェアリングとは、雇用の維持・創出を目的として、労働時間の短縮を行う取り組みです。厚生労働省では、ワークシェアリングについて、雇用・賃金・労働時間の適切な配分を目指すものとして整理しています。
企業にとっては、業績悪化時に解雇を防ぐための緊急的な対応だけでなく、短時間勤務やシフト制などを通じて、多様なはたらき方を整備する施策でもあります。単に労働時間を削減するのではなく、業務量、賃金、評価、勤務時間、人材配置を見直し、雇用維持と人材確保を両立させる仕組みとして理解することが重要です。
Q. ワークシェアリングのデメリットは?
ワークシェアリングの主なデメリットは、管理負担の増加、生産性低下、引き継ぎ負担、賃金・評価制度の複雑化です。複数人で仕事を分担するほど、業務範囲、責任者、進捗共有、品質管理を明確にする必要があります。
また、労働時間の短縮により収入が減る場合は、従業員の不安や不公平感につながる可能性があります。厚生労働省の調査でも、緊急避難型では賃金低下への不安、多様就業対応型では賃金・退職金・昇進・昇格の取り扱いが課題として挙げられています。導入前に、マニュアル、評価基準、処遇ルール、相談体制を整え、労使で十分に協議することが失敗防止につながります。
Q. ワークシェアリングとはビジネス用語でどういう意味ですか?
ビジネス用語としてのワークシェアリングは、企業が労働時間や業務量を分散し、雇用維持、人材確保、生産性向上を目指す人事・労務施策を指します。採用やシフト運用の文脈では、フルタイム勤務だけに依存せず、短時間勤務、短日勤務、複数人での業務分担を組み合わせる考え方として使われます。
企業がこの考え方を取り入れることで、既存従業員の負担を軽減しながら、必要な時間帯に人材を配置しやすくなります。特に、採用難や長時間労働が課題になっている職場では、勤務形態、求人条件、シフト設計、スポットワーク・スキマバイトの活用を見直すきっかけになります。
Q. ワークシェアリング法とは?
日本で「ワークシェアリング法」という単一の法律があるわけではありません。検索上は、労働時間短縮、短時間勤務制度、雇用維持、助成金、労使合意、就業規則など、関連制度を確認したい意図で調べられることが多いと考えられます。
導入時には、労働条件の変更、賃金、勤務時間、休業、有給休暇、社会保険、就業規則などに影響が出る可能性があります。特に、短時間正社員制度や短日勤務を導入する場合は、制度の目的、対象者、勤務時間、賃金・賞与・退職金の扱い、評価、フルタイム勤務への復帰や転換ルールを明確にし、必要に応じて社内規程や就業規則を整備することが重要です。
Q. ワークシェアリングはどこの国で始まったのですか?
ワークシェアリングは、一国だけで明確に始まった制度と断定するより、欧州を中心に雇用維持や雇用創出の政策として広がった考え方として理解するとよいでしょう。代表例としては、オランダのワッセナー合意に基づく取り組みがよく知られています。
日本では、厳しい雇用情勢や少子高齢化、就業意識の多様化を背景に、政労使でワークシェアリングに関する基本的な考え方が整理されました。現在の記事の文脈では、海外制度そのものを詳しく比較するよりも、日本企業が導入する際に、雇用維持型や多様就業対応型をどのように自社の人事制度・シフト運用に落とし込むかを理解することが重要です。
Q. ワークシェアリングにはどんな種類がありますか?
ワークシェアリングの主な種類は、雇用維持型(緊急避難型)、雇用維持型(中高年対策型)、雇用創出型、多様就業対応型の4つです。業績悪化への一時的対応なら雇用維持型(緊急避難型)、中高年層や高齢者の継続雇用なら雇用維持型(中高年対策型)、新たな雇用機会の創出なら雇用創出型、多様な勤務形態の整備なら多様就業対応型が該当します。
ただし、実際の企業運用では、1つのタイプだけを選ぶとは限りません。例えば、短時間正社員制度を整えながら、ピーク時間帯だけスポットワーク・スキマバイトを活用する場合は、多様就業対応型と雇用創出型の考え方を組み合わせることになります。自社の課題に合わせて、複数の方法を組み合わせる視点が重要です。
まとめ┃ワークシェアリングは雇用維持と人材確保を両立するための企業施策
ワークシェアリングとは、雇用の維持・創出を目的として労働時間の短縮を行い、雇用・賃金・労働時間の適切な配分を目指す取り組みです。企業にとっては、業績悪化時の解雇防止だけでなく、人材確保、離職防止、長時間労働の抑制、労働環境の改善、生産性向上にもつながる施策といえます。
導入時には、雇用維持型(緊急避難型)、雇用維持型(中高年対策型)、雇用創出型、多様就業対応型のうち、自社の目的に合うタイプを見極めることが重要です。そのうえで、業務量や労働時間の現状を把握し、分担できる業務を選別し、人事制度や処遇ルールを整える必要があります。
一方で、ワークシェアリングには、管理負担の増加、生産性低下、賃金・評価制度の複雑化といったデメリットもあります。制度だけを作って終わりにせず、労使合意、マニュアル化、試行運用、効果測定を通じて、現場に定着する形へ改善していくことが求められます。
また、社内の業務分担だけでは、平日夕方、土日、繁忙期、急な欠員など、一部の時間帯を補いきれない場合があります。そのようなときは、スポットワーク・スキマバイトを活用し、短時間の求人掲載や単発シフトで必要な人材を確保する方法も有効です。ワークシェアリングを人材確保やシフト運用まで含めて設計することで、現場の稼働安定と採用コストの最適化につなげやすくなります。






