「一身上の都合」とは?退職届で使う意味・書き方・注意点を徹底解説

退職届や退職願でよく使われる「一身上の都合」。
一見フォーマルで便利な言葉ですが、その意味や使い方を誤解している人も少なくありません。この記事では、「一身上の都合」の正しい意味から、退職時の使い方・注意点までをわかりやすく解説します。
「一身上の都合」とは?基本的な意味

「一身上の都合」の辞書的な意味
「一身上の都合」とは、文字通り自分自身の事情や個人的な理由を指す表現です。 辞書では「個人の事情に基づく都合」という意味で掲載されており、家族・健康・進路など、社会的な事情ではなく、個人の内面的な理由を丁寧に伝えられる表現とされています。(参考:デジタル大辞泉・広辞苑)
退職時に使われる文脈での意味合い
退職時に使われる「一身上の都合」とは、個人的な理由によって自ら退職することを丁寧に表す表現です。転職・結婚・出産・介護・体調不良など、具体的な事情を明かさずに私的な理由で退職する旨を伝える際に用いられます。特に退職届や退職願では、「一身上の都合により退職いたします」と書くのが一般的です。この言葉を使うことで、会社側に余計な詮索を避けながら、円満に退職の意思を伝えられます。つまり、「一身上の都合」は、退職理由の詳細を伏せつつも誠意と礼儀を保つための、会社側への配慮も示す言い回しであり、社会的に定着した定型表現といえます。
「一身上の都合」と退職の関係

「一身上の都合により退職」と「一身上の都合により退社」の違い
「一身上の都合により退職」と「一身上の都合により退社」は似た表現ですが、使われる場面や意味に違いがあります。「退職」は、会社との雇用契約を正式に終了することを指し、正社員や契約社員が会社を辞める際に用いる公的かつ正式な表現です。一方、「退社」は「会社を辞める」という意味のほかに「その日会社を出る(=帰る)」という日常的な使い方もあります。そのため、退職届や退職願などの正式文書では『退職』を用います。「退社」は、口頭で「今月で退社します」と伝える程度なら問題ありませんが、文書上では「退職」を使う方が適切で、誤解を避けることができます。
なぜ「一身上の都合」が退職理由として一般的に使われるのか
「一身上の都合」が退職理由として一般的に使われるのは、角の立たない表現で円満に退職を伝えられるためです。転職や家庭の事情、健康上の問題など、退職理由は人によってさまざまですが、具体的に説明すると誤解や詮索を招くおそれがあります。「一身上の都合」はそうしたトラブルを避け、個人のプライバシーを守りながら丁寧に意思を示すことができる便利な表現です。また、企業側も形式的な理由として受け入れやすく、手続きを円滑に進められるため、双方にとって無難で実務的な定型句として定着しています。
退職届・退職願における「一身上の都合」の書き方

退職届・退職願の違い
- 退職願:退職の意思を「お願い」する書類。上司の承認前に提出。
 - 退職届:退職が確定した後に提出する「正式な通知書」。 つまり、退職のプロセスではまず「退職願」を出し、了承を得た後に「退職届」を提出するのが正しい流れになります。
 
退職届に書く場合の正しい例文
このたび、一身上の都合により、
令和○年○月○日をもって退職いたします。
具体的な理由(転職・家庭・体調など)は記載不要です。「個人的な事情による退職」であることを伝える定型句として、「一身上の都合」の記載だけで十分です。提出日(書類の日付)と実際の退職日は異なることが多いので注意しましょう。感謝の言葉を添えることで、より誠意が伝わり、円満な退職に繋がります。
退職願に書く場合の正しい例文
このたび、一身上の都合により、
令和○年○月○日をもって退職させていただきたくお願い申し上げます。
「お願い申し上げます」という丁寧な表現を用いる点が「退職届」との違いです。退職願は、あくまで「退職をお願いする文書」であるため、”願い出”の姿勢を明確に示しましょう。「退職させていただきたくお願い申し上げます」と柔らかく表現するのがマナーです。「誠に勝手ながら」と添えることで、自身の都合で退職を申し出るという意味合いを明確にし、より誠実な印象を与えることができます。
「一身上の都合」を使うときの注意点

退職理由を細かく書かなくてもよい理由
退職届や退職願は、あくまで退職の意思を正式に伝えるための通知書であり、詳しい理由を説明する場ではありません。「家庭の事情」「体調不良」「転職準備」などの具体的な内容は、一般的には書面に記載する必要はありません。個人的な事情を明かさないことはマナー違反ではなく、相手への配慮を示すビジネス上のマナーとされています。簡潔で丁寧な表現を心がけることで、円満な退職につながります。
面接や引き継ぎで理由を聞かれたときの対応
退職面談や引き継ぎで理由を聞かれた際は、詳細を話しすぎず、前向きかつ簡潔に伝えることが大切です。たとえば「家庭の事情で勤務時間の調整が難しくなったため」「体調の都合で長期勤務が困難になったため」など、理由を柔らかく伝えると良いでしょう。転職を目的とする場合も、「新しい分野でスキルを活かしたいと考えたため」など、ポジティブな表現に言い換えることで角が立ちにくくなります。大切なのは、会社や上司を批判するような言い方を避け、感謝の姿勢を持って冷静に伝えることです。誠実かつ丁寧な対応を心掛けましょう。
上司や人事とのコミュニケーションのコツ
退職を伝える際は、まず直属の上司に口頭で相談するのが基本です。いきなり書面を提出するのではなく、事前に話すことで誠意が伝わり、スムーズに手続きが進みます。伝えるタイミングは、退職希望日の1〜2か月前が目安です。業務の引き継ぎや人員調整の時間を考慮し、会社側に迷惑をかけないよう配慮しましょう。話す際は、「お世話になりました」「貴重な経験をさせていただき感謝しています」など、感謝の気持ちを添えることが大切です。不満やネガティブな理由を強調せず、あくまで前向きな姿勢で伝えることで、上司との関係を良好に保ち、円満な退職につなげることができます。
実際の退職シーン別「一身上の都合」活用例

転職を目的とした退職の場合
転職を理由に退職する場合は、社内では詳細を伏せ、書面では「一身上の都合」で統一するのがマナーです。また、 転職活動中であることは社内には伏せるのが一般的です。
結婚・出産・育児など家庭の事情の場合
結婚や出産、育児などの家庭の事情で退職する場合も、書面上は「一身上の都合」とまとめて記載します。「家庭の事情」「育児のため」などの具体的な表現は、社内文書としてはやや個人的すぎる印象を与えることがあります。また、家庭の事情は人それぞれ異なり、詳細に踏み込むとプライバシーの範囲に及ぶこともあるため、あえて一般的な表現にとどめるのが社会的マナーです。
体調不良・療養が理由の場合
体調不良や療養を理由に退職する場合は、詳細な病名や症状までは伝える必要はありません。体調に関する詳細はプライバシーに関わるため、「健康上の理由」や「一身上の都合」と表現するのが適切です。もし面談などで上司に説明する際は、「治療に専念するため」「体調の回復を優先したいため」などと伝えるとよいでしょう。
会社都合退職との違い
「一身上の都合により退職」は、本人の意思による自己都合退職に分類されます。 一方で、リストラや倒産など会社側の事情による退職は会社都合退職です。この違いは失業保険の給付開始時期や給付期間にも影響するため、区別して理解しておきましょう。自己都合退職の場合、原則として7日間の待機期間+約3か月の給付制限期間が発生しますが、会社都合退職ではすぐに受給が始まることもあります。そのため、退職理由を伝える際は、書類上の表現や手続きの区分を正確に確認しておくことが重要です。
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退職届と退職願の書式・テンプレート
企業によっては社内フォーマットが用意されている場合もあります。まずは就業規則や人事部門に確認しましょう。
以下は、どの業種でも使える一般的な退職届の書き方テンプレートです。
退職届
このたび、一身上の都合により、
令和◯年◯月◯日をもちまして退職いたします。
令和◯年◯月◯日
〇〇部 〇〇〇〇
株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇 様
退職願
このたび、誠に勝手ながら一身上の都合により、
令和◯年◯月◯日をもちまして退職させていただきたく、
ここにお願い申し上げます。
令和◯年◯月◯日
〇〇部 〇〇〇〇
株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇 様
| 書類名 | 提出タイミング | 表現の特徴 | 用途 | 
| 退職願 | 退職を申し出る段階 | 「お願い申し上げます」など丁寧な表現 | 承認前 | 
| 退職届 | 退職が確定した後 | 「退職いたします」と断定的な表現 | 承認後・正式書類 | 
履歴書・職務経歴書における「一身上の都合」の書き方
履歴書や職務経歴書の退職理由欄には、「一身上の都合により退職」と記載すれば十分です。この表現は、個人的な理由で退職したことを丁寧かつ中立的に伝える定型句であり、採用担当者にも違和感を与えません。また、ネガティブな印象を避けつつ、必要な情報を簡潔にまとめられるため、履歴書や職務経歴書の書き方として最も無難で好印象な表現とされています。
会社規定や就業規則の確認の重要性
退職時期や手続き方法は会社ごとに異なります。 特に退職届提出の期限(1か月前など)や有給消化の扱いは就業規則を確認しておきましょう。
よくある質問

「一身上の都合」とはどういう意味ですか?
「一身上の都合」とは、自分自身に関する事情や個人的な理由を丁寧に表す言葉です。 辞書では「個人の生活や健康、家庭などに関する都合」と定義されています。 退職時には、「自分の都合で会社を辞める」という意味をやわらかく伝えるために用いられ、具体的な理由を伏せながら誠実さを保つ表現として一般的です。
「一身上の都合により退職」と「退社」はどう違うのですか?
「退職」は、会社との雇用契約を正式に終了する行為を指します。 一方、「退社」は「その会社を辞める」という意味のほかに、「本日退社します(=帰宅します)」のように一時的な退勤にも使われます。 したがって、正式な文書では「退職」を使うのが正解です。
「退社」は日常会話では問題ありませんが、退職届や退職願などの書類には適しません。
退職届に「一身上の都合」と書くだけで大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。退職届や退職願は、退職の意思を正式に伝える書類であり、詳細な理由を書く必要はありません。「一身上の都合により退職いたします」と一文記すだけで十分に意味が伝わります。 むしろ、家庭の事情や健康状態などを詳しく書くと、プライバシーや社内の詮索を招くおそれがあるため、簡潔さを意識するのがマナーです。
会社から退職理由を聞かれたらどう答えればいいですか?
上司や人事から退職理由を尋ねられた場合は、角が立たない表現で前向きに答えることが大切です。
たとえば以下のような答え方が無難です。
- 「家庭の事情で勤務時間の調整が難しくなったため」
 - 「健康上の理由で長期勤務が難しくなったため」
 - 「新しい分野に挑戦したいと考えたため」
 
感謝と前向きな姿勢を示すことが円満退職につながります。
「一身上の都合」で履歴書に書く場合はどうすればいいですか?
履歴書や職務経歴書の退職理由欄には、「一身上の都合により退職」と記載すれば問題ありません。 面接で理由を深堀りされた場合は、「キャリアアップを目指した」「家庭の事情で転居した」など、前向きな説明を簡潔に添えると好印象です。書面では詳細を省き、面談時に丁寧に説明するのがビジネスマナーです。
一身上の都合と会社都合退職の違いは何ですか?
「一身上の都合による退職」は、本人の意思で会社を辞める自己都合退職に該当します。
これに対し、「会社都合退職」はリストラ・倒産・契約終了など、企業側の事情による退職を指します。 この違いは失業保険の受給条件に影響するため、 退職時にはどちらの区分に当たるかを正確に確認しましょう。
一身上の都合で退職したら失業保険はどうなりますか?
自己都合退職の場合、待機期間が発生しますが、一定の条件を満たせば3か月後に受給可能です。原則として7日間の待機期間+約3か月の給付制限期間があります。 ただし、体調不良や家族の介護、職場でのハラスメントなどやむを得ない事情がある場合は「特定理由離職者」として認定され、 待機期間が短縮または免除されることもあります。 退職後はハローワークで離職理由の確認と必要書類の提出を行いましょう
まとめ|「一身上の都合」は便利な表現だが正しい使い方が大切
「一身上の都合」は、退職理由を穏やかかつ丁寧に伝えるための便利でフォーマルな表現です。個人の事情を詳しく説明せずに、社会的マナーを保ちながら退職の意思を示すことができます。書類の種類に応じて適切に使い分けることで、誠意と敬意を両立した伝え方が可能になります。相手への配慮を忘れず、「一身上の都合」を正しく使って円満な退職と新しいキャリアへの一歩を踏み出しましょう。




		
			
			
			
			
			
			
			
			
			


