「ご放念ください」の正しい意味と使い方とは?ビジネス敬語としての例文も紹介

「ご放念ください」の意味とは?

「ご放念ください」は、相手が抱いている心配・気がかり・配慮を“手放してよい”ことを丁寧に伝える言い回しです。平たく言えば「お気になさらないでください」「対応は不要です」という意味になります。主に書き言葉(メール・通知・案内文)で映える、改まった敬語に属します。読み方は「ごほうねんください」です。
「放念」の語源・漢字の成り立ち
放:はなす・ほどく
念:心にかける思い
→ 心に掛けているものから意識を離す=気にかける必要はないの意。ここに尊敬の接頭辞「ご」と依頼形「ください」が付いたのが「ご放念ください」です。
「ご放念ください」の丁寧語としての位置づけ
- 丁寧度:日常的な言い回しよりも一段と丁寧で、改まった表現に属します。普段の会話で多用するには堅い表現です。
- 向いている媒体:もっとも相性がよいのはメールや文書になります。次点で電話・対面でも使えますが、チャットのようなカジュアルな連絡では馴染みにくいことがあります。
- 向いている相手:社外の相手、目上の方、初対面の方など、一定の距離感がある関係に向きます。
- 留意点:会話で繰り返すと堅すぎる印象になりがちです。口頭やチャットでは「お気になさらず」「対応不要です」などの平易な言い換えに切り替えると自然です。
類似語との違い:「ご安心ください」との違いは?
ご放念ください:相手の注意・心配をそこから離してよいことを伝える(=行動停止の依頼にも使える)
ご安心ください:問題がない・解決済みという事実の保証を伝える
→ 事実保証までできるなら「ご安心ください」を使いましょう。保証は難しく、“気に病む必要はない”を優先して伝えたいなら「ご放念ください」を使うと良いでしょう。
「ご放念ください」の正しい使い方と例文

ビジネスメールでの使用例
用途別の即コピペ可能な例文
1.誤送信・誤情報の訂正
件名:先ほどの資料について(訂正)
本文:先ほどお送りした資料に誤りがございました。当該箇所はご放念ください。正しいファイルを添付いたします。
2.依頼の取り下げ
件名:ご依頼の件(取り下げのお願い)
本文:方針変更により、ご対応は不要となりました。本件はご放念ください。お時間を頂戴し失礼いたしました。
3.過剰な配慮の停止
件名:昨日の件について
本文:影響は生じておりません。以後のご対応はご放念ください。当方で引き取って進めます。
4.やんわり辞退・断り
件名:ご厚意について
本文:お気持ちのみありがたく頂戴します。今後のご厚情につきましてはご放念くださいますようお願い申し上げます。
NG例(言い換え推奨)
「本件は解決済みです。ご放念ください」
→ 事実保証が主なら「ご安心ください」の方が自然。
口頭・電話対応での活用パターン
「こちらで対応しますので、どうぞご放念ください」
「ご準備は不要です。以後はご放念ください」
※口頭は堅く響きます。社内・近い関係なら「お気になさらず」「お気遣いなく」「対応不要で大丈夫です」
と置き換えると自然。
カジュアルな文脈ではNG?フォーマル度の注意点
社内でのSlack/Microsoft Teamsなどのチャットツールにて使用するには、読み手に堅い印象を与える場合があります。また、使い方によっては、冷たく聞こえてしまうこともありますので、NG例と一緒に確認しましょう。
—使って失敗した/誤解を生んだNG例—
NG1:一言で切り捨てに見える
・文面:「当件はご放念ください。」
・受取手の印象:理由なく“突っぱねられた”印象。
・修正案:「この件は当方で巻き取ります。影響なしのため対応不要です。詳細は、〜〜・・・」
NG2:何をやめればいいか不明
・文面:「先ほどの件はご放念ください。」
・受取手の印象:どの資料・作業を止めるのか不明で不親切。
・修正案:「旧版の見積書v2を破棄してください。以後はv3のみでお願いします。」
NG3:社内カジュアルに過剰敬語
・文面:「大変恐縮ですが当該件はご放念賜れますと幸甚です。」
・受取手の印象:古風・読みにくい・距離感が出る。
・修正案:「この件はクローズでOKです。対応不要です。」
「ご放念ください」が使われやすいシーンとは?

謝罪・補足説明・フォローアップの場面
誤送信・誤案内・仕様変更のアナウンスなど、相手の行動/注意を止めたい時に有効です。
例:「旧手順はご放念ください。新手順は以下の通りです。」
お詫びメールの結び文句として
謝罪の代替ではなく補助線として使います。
例:「誤情報の共有、重ねてお詫び申し上げます。当該内容はご放念ください。正しい情報を添付いたします。」
プレッシャーをかけない意図で使うケース
依頼に辞退の余地を残したい時にも使用可能です。
例:「ご都合が合わない場合はご放念ください。次回以降で問題ありません。」
「ご放念ください」の言い換え・類語表現

「お気遣いなく」「お気になさらず」などの言い換え
ニュアンス別の使い分け:
- お気遣いなく:相手の善意の手間を止める(柔らかい)
- お気になさらず:心配の解除(万能)
- 対応は不要です/破棄してください:実務指示を明確化
- ご安心ください:事実保証(安全・解決の明示)
迷った際は、書面で改まって言うなら「ご放念ください」、口頭/チャットでサッと伝えるなら「お気になさらず」「対応不要です」などと使い分けると良いでしょう。
「失念」との違いに注意:「ご放念」とは別の意味
- 失念=自分がうっかり忘れること(例:「返信を失念しておりました」)
- ご放念ください=相手に気にしないでよいと伝えること
→ 主語も目的も異なり、この2つは置換は不可のため注意です。
「ご放念ください」は丁寧だが古い?現代的な使い方のコツ

古風・かしこまりすぎの印象を与えないためには?
メール文化・チャット文化での使い方の違い(Slack/Microsoft Teamsで使うなら?)
メール:
定型句として効果的(件名で「対応不要」を明示/本文は要点箇条書き)
Slack/Microsoft Teams:
1行目に結論「対応不要」「巻き取り」
2行目に理由(影響なし・方針変更など)
3行目に次アクション(新手順、連絡先、期限)
必要に応じて(ご放念ください)を括弧補足
敬語・丁寧語に不安がある人にこそ必要な「実践の場」

言い回しに悩むのは普通。実務で学ぶのが最も近道
敬語は事例→使用→フィードバックの反復で体に入ります。テンプレは出発点でしかありません。実務の場で相手・関係・媒体に合わせて微修正することで定着します。
シェアフルなら、現場で敬語と表現力が磨ける
多様な現場に単発・短期で関わるほど、相手や業界ごとの言語感覚が早く身に付きます。口頭、メール、電話、チャットツールの媒体別のさじ加減も、現場でこそ最速で学ぶことができます。ぜひアプリをインストールして、現場で実践してみましょう。
「ご放念ください」に関するよくある質問(Q&A)

Q. 「ご放念くださいませ」は正しい?
A. 過剰に改まった響きになりやすいので、通常は「ご放念ください」で十分です。
Q. 英語でなんて言う?
A. 文脈に合わせて下記から使い分けて選びます。
置き換え早見表
情報を無効化したい → Please disregard…
相手の作業を止めたい → No (further) action is required/from you.
不安を和らげたい → Please don’t worry about it.(+理由・根拠)
そのまま使える(コピペOK)例文
誤送信・旧版の破棄
Please disregard the previous notice; the updated document is attached.
(先ほどの案内は破棄し、添付の最新版をご確認ください)
対応不要(巻き取り)
No further action is required on your side—we’ll handle the rest.
(そちらでの追加対応は不要です。こちらで引き取ります)
安心させる(影響なし)
Please don’t worry about it; this issue has no impact on production.
(ご心配なく。本件は本番環境への影響はありません)
Q. 目上・取引先に失礼になりませんか?
A. メールや通知の文面なら問題ありません。ただし理由と代替案を添えると冷たさを避けられます(例:影響なしのため対応不要です/正本を添付します)。
まとめ|「ご放念ください」は心配を和らげる上級敬語

意味・使い方・類語を理解して適切に使おう
- 意味:相手の気がかりを外してよいことを丁寧に伝える
- 使い所:誤情報の撤回、依頼取り下げ、配慮停止、やんわり辞退
- 使い分け:「事実保証」→ご安心ください/「行動停止・配慮停止」→ご放念ください
正しい敬語で信頼感ある対応を目指そう
本文は短く具体的に、結論は先に伝えることが大切です。媒体に合わせて言い換えも併用し、相手の不安や手間をスマートに取り除くことで信頼感のある対応を心がけましょう。