バイトでも所得税が引かれる?計算方法や手続きを解説

バイトをしている方の中には「思っていたよりお給料が少ない」と驚いた経験がある方も多いのではないでしょうか。
その理由の一つが所得税の天引きです。
今回は、バイトでも所得税が引かれる理由や計算方法の他、年末調整や確定申告のポイントをわかりやすく解説します。
税金面で損をしないためにもぜひ参考にしてください。
バイトでも所得税が引かれるのはなぜ?

所得税は、正社員だけでなく、バイトやパートでも、一定の所得額を超えると天引きされる仕組みです。
ここでは、所得税や源泉徴収とは何かを詳しく解説します。
所得税とは?
所得税とは、1年間で得た所得に対してかかる税金のことです。
バイトや会社員といった雇用形態に関係なく、収入がある方には一定額を超えた場合に所得税がかかります。
バイトの場合、月の給与が8万8,000円以上、年収が103万円以上の方は、所得税が発生する可能性があります。
所得税の課税対象となる所得は、給与の額面金額ではないため注意してください。
年間の給与から、給与所得控除や基礎控除、経費を差し引いた金額が課税対象となります。
また所得税は「累進課税」と呼ばれる仕組みを採用しているのが特徴です。税率は5〜45%の7段階に区分され、所得が多い方ほど課税率が高くなります。
バイトや会社員の場合、所得税は給与から天引きされますが、個人事業主やフリーランスの方は自分で申告が必要です。はたらく前に、自分の年間収入の見込みと控除制度を把握しておきましょう。
源泉徴収とは?
源泉徴収とは、会社やバイト先が、はたらいた方のお給料から所得税をあらかじめ引いて、代わりに国へ納める制度のことです。
この制度は、はたらく方が自分で税金を計算して納める手間を省くために導入されています。
所得税の対象となる方は、給料明細を見ると「所得税」という項目が記載されているのが特徴です。
もし年間の収入が少なく、税金を払いすぎていた場合は、「確定申告」や「年末調整」を通じて、お金が戻ってくることもあります。
源泉徴収の対象条件
すべてのバイトで源泉徴収されるわけではなく、一定の条件を満たすときに限られます。
以下の場合は源泉徴収の対象です。
- 1カ月の給与が8万8,000円以上
- 扶養控除等申告書を提出していない
1カ月の給与が8万8,000円以上の場合、源泉徴収の対象となります。
ただし、扶養控除等申告書を提出していない方は、1カ月の給与が8万8,000円以下であっても、所得税が発生するため注意が必要です。
扶養控除等申告書は1社にしか提出できないため、バイトを掛け持ちしている方は、月の給与額にかかわらず、所得税分が源泉徴収されます。
また、日払い・単発バイトなどでは、以下の条件に該当した場合、源泉徴収の対象です。
- 日給が9,300円以上である
- 日雇いの場合、2カ月以上継続した支払いが行われている
- 契約した雇用期間が2カ月以上である
バイトを始める際は、扶養控除等申告書を提出することや、自分の収入見込みを確認することが大切です。
バイトで所得税が引かれるケース

バイトでも、一定の条件を超えると、源泉徴収という形で所得税が差し引かれるのが特徴です。
ここでは、具体的にどんな場合に所得税が引かれるのか、よくある2つのケースについて詳しく解説します。
年収103万円を超える場合
バイトで所得税が引かれる代表的なケースが、年収103万円を超えた場合です。
103万円という金額は、基礎控除の48万円と、給与所得控除の55万円を足したもので、103万円以下であれば非課税となります。
しかし、1年間の収入が103万円を少しでも超えると、超えた分に対して所得税が発生する仕組みです。
たとえば、年収105万円の場合
・105万円(年収)−103万円(基礎控除の48万円+給与所得控除の55万円)=2万円分
2万円分が、課税所得分となります。
月の収入が8万8000円を超えた場合
バイトで所得税が引かれるもうひとつの基準が、月の収入が8万8,000円を超えた場合です。
これは「扶養控除等申告書」を勤務先に提出しているかどうかで異なります。
この書類を提出していると、月8万8,000円までは所得税が引かれず、それを超えた場合に限り、所得税が源泉徴収される仕組みです。
一方、扶養控除等申告書を提出していないと、月の収入額に関係なく、所得税として給与から引かれるため注意してください。
不要な源泉徴収を避けるためにも、バイトを始めるときには必ず扶養控除等申告書を提出するようにしましょう。
また、扶養控除等申告書は1社しか提出できません。バイトを掛け持ちしている方は、メイン1社を除き、給与額にかかわらず源泉徴収されます。
所得税の計算方法

所得税の計算は、まず、1年間の収入から一定の控除額を差し引き、課税所得金額を算出します。
次に、算出した課税所得金額に対して所得税率をかけ、そこから控除額を差し引いて、最終的な所得税額が決まる仕組みです。
この計算式をまとめると、次のようになります。
・所得税額=課税所得金額 × 所得税率 − 控除額
たとえば、バイトの年収が120万円の場合、給与所得控除55万円と基礎控除48万円を差し引くと、課税所得金額は17万円です。
この17万円に5%の所得税率をかけ、さらに、配当控除や住宅借入金等特別控除などの対象となる方は、これらの控除額を差し引くことで所得税が決まります。
計算は少し難しく感じるかもしれませんが、内容を知っておけば、いくら稼ぐと税金がかかるのかがわかりやすくなるでしょう。
次に、具体的な収入別のケースを紹介します。
年収103万円以下の場合は非課税
バイトをしていても、1年間のすべての収入が103万円以下であれば、基本的に所得税はかかりません。
これは「給与所得控除」と「基礎控除」が関係しています。
バイトの年収が103万円以下の場合、給与所得控除の55万円が自動的に適用され、さらに、基礎控除の48万円も引かれます。
この2つを合計した103万円までは、所得税の対象となる課税所得がゼロになり、税金がかからない仕組みです。
年収が103万円の場合の計算式
・103万(年収)-103万円(給与所得控除55万円と基礎控除48万円)=0円(課税所得)
そのため、1年間で103万円までしかはたらかないと決めている方は、基本的に所得税を支払う必要はありません。
ただし、1カ月の収入が8万8,000円を超える場合や、扶養控除等申告書を提出していない方は、一時的に所得税が引かれることがあります。その場合、年末調整や確定申告で払いすぎた税金を戻す手続きが必要です。
年収125万の場合
年収が125万円になると、通常であれば所得税がかかります。
年収が125万円の場合の計算式
- 125万円(年収)-103万円(給与所得控除55万円と基礎控除48万円)=22万円(課税所得)
- 22万円(課税所得)×5%(所得税率)=1万1,000円
ほかに適用できる控除がない場合は、1万1,000円が所得税となります。
しかし、学生の方には「勤労学生控除」という特別な制度があるのが特徴です。
これは、勉強しながらバイトをしている学生を支援するためのもので、この控除を申請すると、給与所得控除55万円と基礎控除48万円に加え、さらに27万円が控除されます。
つまり、合計で130万円までは非課税になるという仕組みです。
ただし、勤労学生控除の適用にはいくつかの条件があるため、対象者であるか事前に確認しましょう。
年収140万の場合
年収140万円の場合でも、所得税の計算は変わりません。
所得税の計算は、以下の通りです。
- 140万円(年収)-103万円(給与所得控除55万円と基礎控除48万円)=37万円(課税所得)
- 37万円(課税所得)×5%(所得税率)=1万8,500円(所得税額)
他に控除するものがない場合は、1万8,500円が所得税となります。
しかし、年収が130万円を超えると、社会保険料の支払い義務が生じるのが特徴です。
社会保険は、種類によって保険料率が異なる上、給与と賞与のそれぞれが対象となります。
さらに、配偶者がいる場合は、被扶養者の年収が150万円を超えると、配偶者特別控除の38万円が減額され、扶養者の税負担が増える点にも注意が必要です。
収入額に応じて段階的に控除額が少なくなり、年収201万6,000円以上で、控除額がゼロになります。
年収140万円前後は、税金や社会保険料、家族の税金にまで影響する大事なラインとなるため、計画的にはたらき方を考えるとよいでしょう。
バイトの年間の所得税の確定方法

バイトをしていると、毎月の給料から所得税が差し引かれていることがあります。
しかし、年間の収入によっては引かれすぎている場合があるため注意が必要です。
1年の終わりには、実際の収入に応じて所得税を確定させ、必要に応じて税金を返してもらう「年末調整」や「確定申告」を行いましょう。
ここでは、バイト先の数やはたらき方に応じた税金の確定方法について解説します。
バイト先が1つなら年末調整
バイト先が1つだけで、年末まではたらき続けている場合は、勤務先が年末調整を行ってくれるため、自分で特別な手続きをする必要はありません。
年末調整とは、1年間に支払われた給料に対して、実際に支払うべき所得税を計算し直し、引かれすぎていた分を返してもらえる仕組みです。
ただし、バイト先が年末調整を行うには、扶養控除等申告書が必要となります。
提出を求められた場合は、正しく記入してバイト先の担当者に提出しましょう。
バイト先が複数ある場合は確定申告
バイト先が2つ以上ある場合、扶養控除等申告書を提出しているメインのバイト先以外は、自分で確定申告をする必要があります。
年末調整は1つのバイト先でしかできないため、メインのバイト先で年末調整を行った後に、他のバイト先の源泉徴収票を用意して、確定申告してください。
確定申告は、翌年の2月中旬から3月中旬の期間中に、税務署に必要な書類を提出します。
手続きは難しそうに感じるかもしれませんが、最近ではスマホやパソコンからも簡単に申告可能です。
年末前に退職した場合は確定申告
年の途中でバイトを辞めた場合も、原則として自分で確定申告をする必要があります。
年の途中で退職すると、退職時点では1年間の収入が確定していないため、勤務先は年末調整を行えません。
最終的に年収が少なかった場合、払いすぎた所得税が戻ってくる場合があります。
たとえば、1年間の収入が103万円以下だったのに、毎月の給料から所得税が引かれていたケースなどが該当します。
確定申告には、退職時に会社から渡される源泉徴収票が必要となるので、大切に保管しておきましょう。
バイトの所得税に関するよくある質問

バイトの場合、所得税に関してさまざまな疑問を持つ方も多いはずです。
ここでは、バイトに関係する所得税について、よくある質問をピックアップしています。
知っておくと、損せず正しく対処できるので、ぜひチェックしてみてください。
アルバイトでも所得税が引かれる?
アルバイトでも所得税は引かれます。
一定の基準を超えた収入を得ている方は全員が対象となるため、正社員・パート・アルバイトの区別なく、所得税が課税される仕組みです。
ただし、月の給料が8万8,000円以下の方や、年間の収入が103万円以下の方に関しては、所得税が控除されます。
しかし扶養控除等申告書をバイト先に提出しないと、収入が少なくても所得税が引かれてしまうので注意しましょう。
年収の壁とは?
年収の壁とは、年間の収入が一定の金額を超えることで、所得税や社会保険料が発生するラインのことです。
たとえば、「103万円の壁」は、年収が103万円を超えると、所得税が発生することを意味し、「106万円の壁」や「130万円の壁」は社会保険の加入義務が生じます。
さらに、「150万円の壁」は、所得税や社会保険料に加え、配偶者特別控除の減額が始まるラインです。
このように、収入によって発生する税金や保険料、家族の控除額が変わってくるため、自分がどの壁に関係しているかを確認しておきましょう。
源泉徴収票を紛失してしまった場合はどうすればいい?
源泉徴収票を紛失してしまった場合は、バイト先に再発行を依頼しましょう。
源泉徴収票は、1年間に支払われた給料と、引かれた税金の金額が記載された大切な書類で、年末調整や確定申告の際に必要です。
退職したバイト先でも遠慮なく申し出て問題ありません。
再発行を依頼する際は、氏名や連絡先などを伝えるとスムーズです。再発行には少し時間がかかる場合もあるので、必要になる前に早めに依頼しておきましょう。
バイト先が源泉徴収票を発行してくれない場合は?
労働者には源泉徴収票を受け取る権利があり、会社には発行義務があるため、源泉徴収票の発行を拒否したバイト先は違法となる可能性があります。
それでも応じてくれない場合は、所轄の税務署に相談しましょう。
税務署からバイト先に行政指導が入り、再発行を促すようはたらきかけてもらえます。
また、やむを得ず源泉徴収票が入手できない場合でも、給与明細などを使って確定申告できる可能性もあります。
税務署に事情を相談すれば対応策が見つかるかもしれないので、諦めずに行動することが大切です。
まとめ
バイトでも、年収や月収によって所得税の負担が発生します。
給与明細を見て天引きされている場合は、給与額などを確認すると良いでしょう。
また、年収の壁や、確定申告・年末調整の必要性など、仕組みが複雑に感じられますが、正しい情報を理解することで余計な負担を避けられます。
大切な収入に関することなので、疑問があれば、税務署や勤務先に相談することも大切です。