スキマバイトリサーチ、年収の壁「178万円への引き上げ方針」に対する意識の実態調査を実施

〜引き上げ方針に対しては肯定的意見が35.9%、「経済的なゆとりがない」と回答した人は61.5%〜
シェアフル株式会社は、『シェアフル』ユーザーを対象に、2024年に引き続き2025年版となる第二回「年収の壁」に対する意識の実態調査を実施しました。

背景
日本の税制では、給与所得者の年収が一定額を超えると所得税がかかる「年収の壁」が長年注目されてきました。従来の「103万円の壁」は、給与収入のみで他の控除がない場合に、基礎控除と給与所得控除によって所得税がかからなくなる年収の目安として広く意識されてきました。
令和7年度(2025年度)の税制改正では、所得税の基礎控除額の引き上げと給与所得控除の最低保障額の引き上げが行われ、これらの合計によって課税開始点(年収の壁)が大きく引き上げられることとなりました。これにより、従来より高い年収まで所得税がかかりにくくなる制度設計が進んでいます。(※)
さらに、2025年12月には政府与党・野党が、2026年度(令和8年度)税制改正大綱で「年収の壁」を約178万円まで引き上げることで基本合意したと報じられています。これは、これまでの課税最低限(約160万円)の水準からさらに引き上げ、より広い層で所得税の負担を下げることを目的とした動きです。
こうした税制の変更は、パート・アルバイト、フリーランス、複数就業者など多様な個人が自らのはたらき方や収入調整に影響を受ける可能性を高めています。年収の壁に対する意識や実際の行動がどう変化しているかは、スポットワーク事業者として、サービス提供と社会的議論の両面で重要です。そこでシェアフルでは、2024年に引き続き、第二回「年収の壁」に対する意識の実態調査を実施しました。
※出典:財務省「基礎控除等の引上げと基礎控除の上乗せ特例の創設」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/20250417syotoku.html
調査概要
『シェアフル』アプリをインストールしているユーザー(求職者)を対象に、アプリ内機能「シェアフルmembers」を使用したアンケートを実施しました。「年収の壁」に関するアンケートを取った結果、15,185名の回答がありました。
出典:2024年度 『シェアフル』スキマバイトリサーチ、「年収の壁」に関する実態調査を実施
https://sharefull.com/information/6914/
◾️サマリー
・年収の壁を「意識している」(※主に、収入が「年収の壁」の額を超えないかどうか気を付けることを指す)割合は前年より低下した一方、実際に「就業時間を調整している」と回答した人は6割を超え、「年収の壁」がはたらき方に及ぼす影響は引き続き確認された。
・経済的なゆとりについては、「ゆとりがない」と感じている人が全体の6割を占め、属性によって差が見られた。
・年収の壁が178万円へ引き上げになることついての意識調査では、制度変更を前向きに評価する声が一定数ある一方、「様子見」など中立的な意見が多数を占めた。
調査結果

2025年の調査では、年収の壁を意識している方は全体の40%、意識していない方は60%であった。
これは、2024年調査における「意識している47%」「意識していない53%」と比較すると、年収の壁を意識している割合が7ポイント低下した結果となる。


2025年12月における就業時間の調整状況について、「例月の100%(調整していない)」と回答した割合は38%であった。一方で、「例月の0%(1時間もはたらいていない)」は31%となった。
また、「例月の60%~99%程度」は11%、「例月の40%~59%程度」は10%、「例月の1%~39%程度」は10%となり、就業時間を何らかの形で調整した層は全体の62%を占めている。

「経済的なゆとりはあると感じますか?」という設問に対し、「ゆとりがある」22.0%、「ある程度ゆとりがある」16.5%となり、経済的なゆとりがあると回答した割合は合計38.5%であった。
一方で、「あまりゆとりがない」29.9%、「全くゆとりがない」31.6%となり、経済的なゆとりがないと回答した割合は合計61.5%を占めている。

属性別に見ると、「ゆとりがある」と回答した割合は、学生が28%と最も高く、次いで主婦・主夫が25%、正社員などの社員属性が23%、アルバイト・パートが19%となった。「ゆとりがある」「ある程度ゆとりがある」を合算した割合は、学生が49%で最も高く、主婦・主夫が46%、社員属性が40%、アルバイト・パートが33%という結果となっている。
一方で、「全くゆとりがない」と回答した割合は、アルバイト・パートが33%、社員属性が31%、主婦・主夫が23%、学生が22%となっている。「全くゆとりがない」「あまりゆとりがない」を合算すると、「経済的なゆとりがない」と感じている割合は、アルバイト・パートが67%と最も高く、社員属性が60%、主婦・主夫が54%、学生が52%であった。


「2026年度より年収の壁が178万円に引き上げられることが決まったことについて、どう感じますか?」という質問(回答必須)では、有効回答数15,158件に対し肯定的な意見が35.9%、否定的な意見が2.1%、関心なし・中立的な意見が47.4%、要望が11.8%、回答なし・不明が2.8%となった。
※分類方法
自由記述のため、各回答者ごとに、回答内容に含まれる代表キーワードと文意を基に、回答の主たる評価の方向性や意見の性質を総合的に判断し、5分類(肯定/否定/関心なし/要望/回答なし)へ分類して集計した。なお、「要望」は、制度自体への賛否というよりも、改善要望が主となっている回答を対象としている。また、「空白・記号のみ・単文字(例: . / わ / か)」は 回答なし/不明 として集計した。
(回答例)
・肯定的な回答:「いいこと」「ありがたい」「前よりも働きやすくなりそうで、嬉しい。」「生活にゆとりができる」
・関心なし/中立の回答:「自分にはあまり関係がない」「わからない」「どうでもいい」などの回答。
・要望の回答:「もっと上げて欲しい」「社会保険も考えてほしい」「もっと働けるようにしてほしい」
・否定的な回答:「大きな効果はなさそう」「税収が見込めなくなり負担が増える」「反対」
・回答なし/不明:「(空白)」「.」「あ」
実際に寄せられた回答では、「シフト調整をしていたので気にせず働けるのは嬉しい。」 「特に関係はないので嬉しさなどはない。」 「年収が上がる分税金も高くなり今までと変わらないか又は悪くなる。稼ぎたくても稼げない。」 「所得税だけじゃなく社会保険も考えてほしい。」などといったコメントが寄せられた。
考察
本調査では、年収の壁に対する意識や就業調整、経済的なゆとりに関する実態を多角的に把握した。
年収の壁に対する意識については、「意識している」と回答した割合が2024年の47%から2025年は40%へと低下し、「意識していない」層が6割を占める結果となった。
また、2025年12月の就業状況に関する設問では、62%が何らかの就業調整を行っていることが明らかとなった。属性別に見ると、就業調整の有無や度合いには差があり、はたらき方や立場によって調整の仕方が異なっている。
経済的なゆとりに関する設問では、「ゆとりがない」と感じている人が全体の61.5%と過半数を占めた。特にアルバイト・パートでは約7割が「ゆとりがない」と回答しており、属性による差が見られる結果となった。
先日合意された年収の壁178万への引き上げについての設問では、「肯定/否定/関心なし(中立)/要望/回答なし・不明」に分類した結果、最多は「関心なし(中立)」で47.4%となった。一方、「肯定」は35.9%で、「ありがたい」「生活にゆとりができる」など前向きな声が確認された。「否定」は2.1%と少数で、財源や負担増への懸念が中心だった。また「要望」は11.8%で、「社会保険の壁も上げてほしい」など追加改善を求める意見がみられ、制度改定への期待が一定程度広がっていることが示された。
これらの結果から、年収の壁の引き上げに対しては「中立的」な立場の意見が多いものの、就業調整を行っている人や、「経済的にゆとりがない」と感じている人は依然として多く、はたらき方や生活における課題は引き続き存在していることがうかがえる。
シェアフルは、求人と求職者をマッチングし、スキマ時間の就業を可能にする『シェアフル』を通じて、柔軟なはたらく選択肢を提供することで、「はたらく」課題の解決策の一つを提供することを目指していきます。






