派遣切りとは?失業保険の適用やコロナによる影響について
「派遣切り」という言葉を聞いたことはありませんか?派遣切りとは、 派遣労働者が派遣元や派遣先から契約が途中で切られ、働けなくなることです。
これだけ聞くと、「解雇と何が違うの?」と思うかもしれません。しかし、派遣切りには解雇と雇い止めの両方を指す場合があります。
「派遣切り」をされた場合、どうするのが正しいのでしょうか?
また、派遣切りの違法性について、派遣切りはケースによって違法かどうかが異なります。違法な派遣切りをする企業も存在しますが、適切な対処をすれば継続して勤務することも可能です。
そこで今回は派遣切りについて、合法・違法の切り分けや派遣切りされたときの対処法、新型コロナウイルスによる影響などをお伝えしていきます。
派遣切りとは
冒頭でもお伝えしたように、派遣切りとは「派遣労働者が派遣先や派遣元から途中で契約を切られることで働けなくなること」を指します。
まず前提として、派遣という働き方は以下の3つの立場が絡んでくることを覚えておきましょう。
用語 | 意味 |
派遣元 | 派遣労働者を雇用している派遣会社のこと |
派遣先 | 派遣労働者が勤務する職場・企業のこと |
派遣労働者 | 派遣元に雇用され、派遣先で勤務する人のこと |
派遣労働者は、派遣元と雇用契約を結ぶことで派遣先の企業で勤務する人のこと。また派遣元と派遣先は労働者派遣契約で繋がっています。
派遣切りは、冒頭でもお伝えしたように「解雇」と「雇い止め」の2つが含まれます。派遣元から雇用契約を解消されることを「解雇」、派遣先から労働者派遣契約を解消されることを「雇い止め」といいます。
派遣切りが合法なケース
派遣切りは、実は簡単にできるものではありません。派遣切りが認められる場合について、解雇と雇い止めに分けてまとめた表は次の通りです。
派遣切りの種類 | 認められるケース |
解雇 |
|
雇い止め |
|
基本的に、派遣での解雇はよほど重大な違反をした場合でないと起きません。例えば仕事のミスが多かったり、居眠りや無断欠勤など勤務態度が悪いだけでは簡単に解雇できないのです。
しかし、情報の漏えいや犯罪のような行動を起こしてしまった場合には解雇が可能になる場合もあります。会社の業績が悪化し、やむを得ず人員整理が必要になった場合も解雇は認められます。
なお解雇する場合、予定日の30日以上前に解雇通告が必要です。もし通告がない場合、派遣元は「30日-予定日までの期間を引いた日数分」の給与を支払わなければなりません。つまり通告が解雇予定日の5日前の場合、派遣労働者は25日分の給料はもらえます。
また雇い止めの場合でも、会社の業績が悪化したり、契約前から期間や更新回数の規定があった場合はそれ以上の契約をする必要はありません。
しかし雇い止めは派遣先との契約の問題なので、派遣労働者と派遣元の雇用契約は残っています。そのため雇い止めによる派遣切りは、派遣元から別の派遣先で働けるように紹介を受ける必要があります。
派遣切りが違法になるケース
一方、違法な派遣切りも存在します。それは「重大な規約違反・業績悪化などやむを得ない事由に該当しない場合」です。
解雇の場合は、会社の業績が著しく悪化しておらず、就業規則への違反もないのにも関わらず派遣切りすると違法となります。
また雇い止めの場合、何回も契約更新を繰り返しているのに、次の契約更新を社会的に合理的な理由なしに拒絶した場合は違法です。
なお合理的な事由がない雇い止めの場合、
- 契約の更新
- 雇用期間の満了後に有期労働契約への切り替え
これらの申し込みをすると派遣元は簡単に派遣切りできず、同条件で雇用する必要があります。
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派遣切りが起きる2つの理由
派遣切りが起きる背景には、次の2つの理由が関わっていることが多いです。
- 派遣先の業績悪化による人件費削減
- 派遣3年ルールから逃れるため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
理由①派遣先の業績悪化による人件費削減
前述の通り、派遣元や派遣先の業績が悪化し、人件費を削減せざるを得なくなった場合に派遣切りを実施することがあります。
理由②派遣先や派遣元が派遣3年ルールから逃れるため
また派遣切りが起きる理由には、「派遣3年ルール」から逃れるための場合もあります。
派遣3年ルールとは、労働者派遣法により「派遣労働者を同じ派遣先の同じ部署で3年以上続けて働かせてはいけない」とされている決まりです。これは派遣労働者がいつまでも正社員になれない実態を受け、労働者を保護するために作られたルールです。
派遣元や派遣先は、派遣労働者の勤務期間が3年以上経過したら以下の措置を取る必要があります。
- 派遣先が派遣社員を正社員として雇用する
- 派遣先が延長手続きをして別の部署に異動させる
- 派遣元と派遣社員が無期雇用契約を結ぶ
- 派遣元が別の派遣先を紹介する
しかし、派遣先は正社員が増えると福利厚生の面でサポートしたり定期的な昇給が必要であるため、なるべく直接雇用したくないのが実情です。また別の部署に異動させたとしてもまた再教育が必要になります。
派遣元としても無期雇用契約にすると定年まで雇う必要があるほか、他の派遣先を紹介するのは大変など、コスト面の負担が増えます。
これらのデメリットから、派遣切りを行う会社があるのです。派遣3年ルールの詳細は、次の記事をご覧ください。
セクハラやパワハラで自主退職に追い込まれることも
違法な派遣切りを行なった会社は、社会的な信用を失ってしまう可能性があります。
そのため、会社都合ではなく自主都合で退職させるために、セクハラやパワハラをしてくる会社も中には存在します。
もちろん、自主退職に追い込むことは非合法です。そのような場合は専門の機関に相談しましょう。対処法は次の章でお伝えします。
派遣切りされたときの対処法
派遣切りに遭った場合の対処法は、違法か合法かで異なります。ここからはそれぞれの対処法について見ていきましょう。
派遣切りが違法に当たる場合
もし正当な理由がなく派遣切りに遭った場合、それは違法です。もし派遣元に相談しても効果が無さそうな場合は、次のような専門機関に相談しましょう。
- 労働基準監督署
- 法テラス
- 総合労働相談コーナー
- 派遣労働ネットワーク
またこれらの機関に相談する前には、以下の書類を準備しておくと話がスムーズに進みます。
- 就業条件明示書
- 解雇理由証明書
就業条件明示書は、就業前に派遣元から必ず発行される書類です。また解雇理由証明書は派遣元に請求することで発行できます。
派遣切りが合法な場合
もし派遣切りが業績の悪化や派遣労働者が著しく問題のある行動によるものの場合でも、派遣元はすぐに解雇できるわけではありません。
派遣元は派遣労働者が雇い止めに遭った場合、新しい派遣先を紹介する必要があります。
また同じ派遣元で働きたくない場合は、新しい派遣元を探すしかありません。
派遣切りされたら失業保険は適用できる?
派遣切りされて新しい派遣先を探すのに失業期間が発生する場合、条件を満たせば失業保険が適用できる可能性があります。
まず派遣切りのような会社の都合による解雇の場合、以下の要件を満たせば1ヶ月程度で失業保険の支給が始まります。
- 雇用保険に加入していること
- 直近1年間で最低6ヶ月以上勤務していること
ただし、自己都合の退職だと給付日数が減るため手当が少なくなるため注意しましょう。
もし派遣切りされたのに離職票に自己都合と書いてあったら、離職票を提出する前にハローワークに事情を説明してください。すると調査が入り、会社都合による退職と認めてもらえる可能性があります。
コロナの影響によって33%が派遣切りされている
派遣切りは2008年のリーマンショックで生まれた言葉ですが、2020年から大流行した新型コロナウイルスによる不況でも影響が出ています。
『派遣ガールズ』の調査によると、2021年中に派遣社員の33%が派遣切りされたというデータが出ています。140万人いるうちの150人を対象としたアンケートなので、全体のごく一部ではありますが確実にコロナによる派遣切りは存在すると言えるでしょう。
また政府による「働き方改革」のひとつである、「同一労働同一賃金」という制度も派遣切りを助長する恐れがあるとされています。この制度は、「雇用形態に関わらず同じ仕事をしていれば時間に応じて同じ賃金を払う」というものです。
派遣労働者のような非正規雇用を救うための制度ですが、非正規雇用を安く雇うことができなくなるためより正社員のみが残される動きが加速すると考えられています。
まとめ
今回は、派遣切りについて合法・非合法なものやその対処法、コロナによる影響などを解説しました。
業績悪化による派遣切りの場合、派遣元から別の仕事を紹介してもらいましょう。また新しい派遣元を探すのに無職の期間が出るなら、失業保険を申請すると早めに受け取れる可能性があります。
また非合法な派遣切りに遭った場合は、専門期間に相談することをおすすめします。