パワハラの定義とは?事例を理解して相談できる環境を整えよう
地位や立場を利用したハラスメントでも注目されるパワハラ。
精神的に体調を崩し、自殺に追い込まれるケースもあり、社員や会社全体で防止できる雰囲気を作る必要があります。
今回はパワハラの定義や種類、具体的な事例、対処法などについて詳しく解説します。
✓ 6つの類型がある→身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害
✓ パワハラに遭ったら周囲に相談し証拠を残すこと、公的機関を頼るなどの対応策がある
パワハラとは?
パワハラとは職場などの労働者が立場や権利などの優位性を利用し、社会的が自分より低い人に対して、嫌がらせや苦痛を与えること。※
パワーハラスメントの略称で、不当な要求や居心地の悪さを相手が感じる行為が適正範囲を越えて行っている特徴があります。
上司が部下に行う嫌がらせ以外にも先輩と後輩や部下と上司、同僚同士など多様な地位関係で成立。
また、該当する場合は意識的・無意識的関係なくパワハラとなり、過去にはさまざまな事例も出ています。
※参考:厚生労働省 雇用環境・均等局 平成30年10月17日「パワーハラスメントの定義について」
パワハラ指針の公表による措置の義務化
2020年の6月に制定されたパワハラ阻止法に伴い、令和2年1月に厚生労働省からパワハラ指針※が公表されました。
その結果、パワーハラスメント対策は事業主の義務に。
セクハラやモラハラと同様、措置内容や適切な対処法などを細かく制定することが必要になりました。
※参考:令和2年1月15日「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(厚生労働省告示第5号)」
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職場においてパワハラの定義
職場におけるパワーハラスメントは大きく3つに定義されます。
職場におけるパワハラの定義は以下。※
1. 優越的な関係を背景とした言動
2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
3. 労働者の就業環境が害されるもの
注意点としては、1~3までの全要素が満たされてパワーハラスメントと認定されます。
ただ第三者が客観的に見て適切な業務指示や指示である場合、パワ―ハラスメントに該当するのは難しいです。
そのため、職場においては全ての「注意事項」がパワハラに当てはまるとは言い切れません。
※引用:厚生労働省「あかるい職場応援団」
https://work-magazine.sharefull.com/parttimejob/5082/
パワハラの6つの類型とその例
厚生労働省が公表しているパワハラの定義は主に6つに分類されています。
パワハラの6つの類型は以下の通り。
1. 身体的な攻撃
2. 精神的な攻撃
3. 人間関係からの切り離し
4. 過大な要求
5. 過小な要求
6. 個の侵害
ここではそれぞれの具体的な内容と代表的な事例についてご紹介します。
身体的な攻撃
身体的な攻撃とは暴行や傷害行為を指し、相手に暴力を加える行為や物を投げつける行為のことです。
具体的な行為は以下。
- 脚けりをする
- タバコの火を近づける
- 胸ぐらを掴む
- 話している途中で相手を殴る
注意点として意識的にぶつかることであって、無意識でぶつかった場合は身体的な攻撃には該当しません。
また物を相手に当てて威嚇する行為も、身体的な攻撃に含まれます。
具体的な例
警視庁の海技職員が、同僚らから、暴行や脅迫を含む嫌がらせを受けた事案。
嫌がらせには、侮辱する内容のポスターの掲示や名誉棄損、シンナーなどで接触皮膚炎を起こす可能性が高い体質である被害者にシンナーを用いるなどが含まれた。警察署の課長らが個人として損害賠償責任を負うことはないと判断された。
引用:東京都ほか(警視庁海技職員)事件
シンナーを用いた嫌がらせや週刊誌への記事掲載を告げる行為などの行き過ぎた行為が、不法行為と認定されるきっかけになりました。
精神的な攻撃
精神的な攻撃とは言葉による暴力や脅迫、名誉棄損、侮辱、暴言など。
また相手の性的志向や性自認に関する侮辱的な言動も、精神的な攻撃の分類です。
代表的な例は以下。
- 相手の能力の否定
- 人格を否定するような言動
- 大勢の前で繰り返し叱責する
- 大勢を宛先に入れたメールで暴言を吐く
- 十分な指導や教育をせずに放置する
言葉で直接相手にダメージを与えるだけでなく「ため息をつく」「物を机にたたきつける」などの威圧的な態度なども含まれます。
具体的な例
被告会社の専務や上司らによる、罵倒、のけ者行為、降格ないし配転命令等が不法行為にあたるとして、慰謝料請求を認めた事例。
医療的な効能を詳細に述べるセールストークを記載したマニュアルを従業員へ配布。
マニュアルに違和感や疑問を抱いた部下が上司に相談したところ、不平分子と見なされいじめにあう。
その後、上司から退職強要を受け、理由なく退職させられ、腰痛やうつ状態に陥たったため、慰謝料との支払いを請求した。引用:美研事件
こちらの事例は精神的な攻撃の他、人間関係からの切り離しにも該当します。
人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しとは職場で居場所がなくなるように仕事を外す行為です。
具体的には以下。
- 長期間別室に隔離する
- 自宅研修させたりする
- 同僚と離れた位置にデスクを話す
- 集団で相手を無視する
- 連絡事項をその人だけに伝えない
- 忘年会や送別会などの全員参加のイベントに1人だけ呼ばれない
- 全員に共有のメールが回ってこない
人間関係からの切り離しではさまざまな手段で、物理的または精神的に孤立した状態にする点が特徴です。
特に精神的・心理的な場合は、仲間はずれや無視などで相手を切り離し、いじめとも似ています。
具体的な例
複数の女性社員から執拗ないじめや嫌がらせを受けた事案。
職場内のトラブルという類型に属する事実である、同僚の女性社員のいじめや嫌がらせが約2年に渡り続く。
内容としては、執拗な陰口や、メッセンジャーを使用しての悪口、跳び蹴りのまねや顔すれすれに殴るまねを複数回など。
その陰湿さや執拗さは、常軌を逸し極めて悪質なひどいいじめや嫌がらせともいうべきパワハラであった。
執拗で長期間に渡ることから、精神的・身体的な攻撃型にも該当します。
過大な要求
過大な要求とは業務で明らかに不要なことや不可能なことの強要をするパワハラです。
例えば以下の例が挙げられます。
- 勤務に直接関係のない作業を指示する
- 達成不可能なノルマを課す
- 私的な雑用を労働者に強制させる
その他にも新卒採用者に教育せずに無謀な目標を課し、達成できないと厳しく叱責するケースあります。
時間内で不可能な業務量や明らかに不要な仕事を意図的に指示することが特徴です。
具体的な例
精神疾患を有する市立中学の教員に対して、校長や教育委員会等がパワーハラスメントを行ったことが原因で精神疾患が増悪。
当該教職員が自殺したとして県や市に対して、遺族が損害賠償を求めた事案。
病気休暇明け直後に従来の業務に加え、教員免許外科目を担当させ、その他の業務の軽減はなかった。
労働者の個性の多様さとして想定される範囲を超えた素因及び自己の健康を保持するための行動を取っていないことについて、全損害の半分の支払いを被告らに命じた。引用:損害賠償請求事件
業務量の増加や特別研修への参加、業務範囲以上の仕事を加えるなど、心理的な負担も大きい過大な要求になります。
過小な要求
過大な要求とは反対に、能力がある労働者に程度の低い仕事を命じる他、仕事を与えないケースが過小な要求です。
該当する例は以下。
- 役職に就く労働者に簡単な雑務のみ任せる
- 営業職の労働者に1日中清掃を任せる
- 仕事を与えない
労働者にやる気があることを知りながら、嫌がらせのために業務を制限する点が特徴です。
ただ能力に応じ、一定の業務内容や業務量を軽減することは過小な要求には該当しません。
具体的な例
営業本部から倉庫への配置転換や課長職からの降格を命じられ、賃金の減少が起こる。
会社は配置転換命令が無効であるとし、未払賃金等の支払や賞与の残金等の支払等を求めた事案。なお、配置転換先に就労義務がないことの確認や配置転換命令に伴う賃金の減額は無効であることも主張された。
引用:新和産業事件
配置転換の際、能力に見合わない部署移動や業務である場合などは、異議を申し立てることが可能なケースもあります。
個の侵害
個の侵害とは、プライベートに過度に立ち入るタイプのパワハラです。
このタイプは職場だけでなく、相手が異性の場合や性的な意味合いを取れる場合はセクハラとしても当てはまります。
該当例は以下。
- 家庭環境や休日の過ごし方に執着して問いただす
- 退社後に個別に連絡する
- 性的志向の暴露
- 性自認や病歴の暴露
- 職場外での継続的な監視
私的なことに過度に立ち入った後相手の同意を得ないまま、他者に暴露することなども個の侵害です。
具体的な例
同人らの上司である総務課の課長が職員同士の交際に口をはさみ、誹謗中傷や名誉棄損、私生活への不当な介入とみなされた事案。
「一度失敗したやつが幸せになれると思うな。」「美人でもスタイルもよくない○○が結婚できなくなったらどうするんだ」など。
引用:豊前市(パワハラ)事件
こちらの事例は個の侵害だけでなく、精神的な攻撃も含まれます。
パワハラの具体的な対処法
パワハラの相談やパワハラが起きた場合は、早急な対応で社内環境の改善や解決に向かうことが重要です。
会社側は以下のポイントを整理していきましょう。
- 事実関係の調査
- 社内処分の検討
- 再発防止の取り組み
ここではそれぞれのポイントについてご紹介します。
また普段から相談窓口を設置するなど、パワハラを未然に防げる環境に整えていくことも重要です。
事実関係の調査
事実調査の確認では、ヒアリングや資料の収集などが挙げられます。
ヒアリングでは5W1Hを明確にし、些細な点も細かく調査してください。
例えば、ヒアリングでは以下は確認しておくとその後役に立つ項目です。
- 相談者と加害者の関係
- 普段の加害者の被害者に行う言動
- 被害者が加害者に対して求める措置(処罰や転勤など)
- 匿名希望の有無
これらを加害者、第三者、被害者などの各立場から聞き取ります。
ヒアリング以外での資料の収集では、メールやメモ、写真などの客観的情報の収集がおすすめです。
このような項目はパワハラにおいて活用できる重要な資料のため、書面化し保持します。
社内処分の検討
事実関係を確認後それぞれの立場の方の意見や求める措置などを参考に、加害者に対しての社内処分を検討します。
ここでは、就業規定などを配慮したうえで判断します。
また適切な処分方法となるよう最善の注意を払うことが大切です。
再発防止の取り組み
このようなことが再び起こらないよう、再発防止の取り組みを会社全体で行います。
例えば以下の取り組みが具体的です。
- 公園や研修会の実施
- パワハラの相談窓口を設置
- アンケートによる聞き込み
- 就業規則などの社内規定へのパワハラの盛り込み
今回の調査で分かった社内の実態を元に、細やかな防止策の構築を行うことが大切です。
パワハラを受けた際の対応策
パワハラを受けた際、まず1度はお互いに話し合いの場を設けます。
ただ、解決しなかった場合は以下が大切です。
- 第三者への相談
- 万が一のために証拠を残す
第三者とは社内の人事や相談窓口だけでなく、友人や家族、同僚など身近で話しやすい相手で構いません。
また知り合いに知られたくない場合は、公的機関の利用もおすすめです。
利用可能な公的機関は以下。
- 労働局の総合労働コーナー
- 労働基準監督署の総合労働相談コーナー
- 人権110番
- テラス(日本司法支援センター)
その他にはパワハラを受けた場合、社内メールなどの証拠をしっかりと残しておいてください。
パワハラは精神的・肉体的に苦痛を感じるもので、相談は恥ずかしいものではありません。
1人で悩まずに、周囲への相談や証拠集めなどをおこなうことが大切です。
まとめ| 知識を身に着けて自分を守ろう!
パワハラには明確な線引きがなく「○○をしたからパワハラだ」といった判断は難しい傾向にあります。
ただ今回紹介したパワハラの基本的な知識を身につけ、6つの事例や対処法を理解すると自分を守ることが可能です。
パワハラを受けた際は周囲に相談し、証拠をしっかり残しておくなどして適切な対処を行ってくださいね。
パワハラなどの被害に合った場合、仕事先を変えることも1つの手です。
ぜひ活用してみてください!