パートでも社会保険に加入できる？条件やメリットデメリット・加入する手順を解説

社会保険は、万が一はたらけなくなった場合や、高齢や介護などのリスクに対応した保険制度のことで、バイトでも条件を満たせば加入義務があります。

今回は、社会保険の基礎知識を始め、バイトでの加入条件やメリット・デメリットまで詳しく解説します。

社会保険制度を活用して、将来のリスクに備えたい方はぜひ参考にしてみてください。

社会保険とは？

社会保険とは、はたらく方の病気やケガだけでなく、失業や老後を迎えたときなどに、経済的な負担を軽減してくれる公的な保険制度のことです。

社会保険には「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つがあります。

一般的に、社会保険というと「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」のことを指し、「雇用保険」と「労災保険」は労働保険と呼ばれています。

社会保険は、はたらけなくなった際に給付を受けられたり、老後に年金を受け取れたりと、誰にでも起こり得るリスクに対応しているのが特徴です。

また、労働者だけでなく、その家族も保険の対象になることがあるため、安心した生活を送る上で非常に重要な役割を持ちます。

なお、社会保険は一定の条件を満たした場合に会社が加入手続きを行い、給料から保険料が天引きされる仕組みです。保険料は会社と折半して支払います。

バイトでも社会保険加入は義務？

バイトでも社会保険への加入は義務付けられる場合があります。

しかし、バイトが社会保険に加入するには、一定の条件が設けられているため、自分が加入対象になるか、事前に確認しておくことが大切です。

具体的には、「バイト先の事業所が社会保険の加入対象であること」と「バイト従業員自身が社会保険の加入条件に該当していること」の2つで決定します。

社会保険の加入義務が生じる事業所は、従業員が51人以上の法人事業所や、5人以上の従業員を常時使用している個人事業所が対象です。

そのため、これらの事業所で勤務する従業員個人が、社会保険の加入条件を満たしている場合は、必ず加入する必要があります。

バイトの社会保険への加入条件と適用範囲

バイトが社会保険に加入するには、一定の条件を満たす必要があります。

社会保険の制度は少し難しく感じるかもしれませんが、自分が加入対象かどうかを知ることで、今後のはたらき方や収入の管理にも役立つでしょう。

ここでは具体的な加入条件や、適用範囲について詳しく解説します。

バイトの社会保険への加入条件

バイトが社会保険に加入する条件は、主に労働時間や雇用期間、収入によって定められています。フルタイムに近いはたらき方になるにつれ、加入対象となりやすいのが特徴です。

社会保険の加入対象となる条件は、以下の通りです。

• 月の所定労働時間と所定労働日数が、正社員の4分の3以上の方

または、以下の条件全てに該当する方

• 週の所定労働時間が、20時間以上の方
• 2カ月以上の雇用が見込まれている方
• 年収が106万円を超える方（月収8万8,000円を超える方）
• 学生ではない方

条件に該当した方は、社会保険の加入が法律で義務付けられています。

以下でさらに詳しい条件を確認してみましょう。

正社員の勤務時間・日数に対して4分の3以上勤務

バイトが社会保険に加入する条件の一つは、「週の所定労働時間と月の所定労働日数が、フルタイムではたらく正社員の、4分の3以上であること」です。

正社員と近いはたらき方であるため、バイトやパートなどの雇用形態にかかわらず、正社員と同等に社会保険に加入できます。

たとえば、正社員が1日8時間・週5日勤務している場合、バイトであっても週30時間以上、または週4日程度以上勤務していれば、この条件を満たすため、社会保険の加入対象です。

これは、所定労働時間や所定労働日数が、4分の3を超えると分かった時点で適用されます。

年収が106万円以上

もう一つの社会保険加入の目安は、「年収が106万円を超えている」ことです。

年収が106万円を超えることを「106万円の壁」と言い、このラインを超えると、社会保険の加入条件の一つに該当します。

先に解説した「週の所定労働時間と月の所定労働日数が、フルタイムではたらく正社員の、4分の3以上であること」に適用しない方でも、以下の条件に全て該当した場合、社会保険の加入対象です。

• 週の所定労働時間が、20時間以上の方
• 2カ月以上の雇用が見込まれている方
• 年収が106万円を超える方（月収8万8,000円を超える方）
• 学生ではない方

年収が106万円以上の場合、必然的に条件に該当しやすくなります。

すべてのバイト従業員が対象になるわけではないため、自分が社会保険の対象となるかが分からない方は、バイト先の担当者に確認しましょう。

社会保険の適用範囲は2024年10月に拡大

2024年10月から、社会保険の適用範囲が拡大されました。

具体的には、これまで従業員数が101人以上の企業ではたらく方に適用されていた条件が、51人以上の企業にも適用される点です。

そのため、これまで対象外だった方も、条件を満たせば社会保険に加入する必要が出てきます。

この変更により、中小企業ではたらく方も、将来の年金や医療保障がより手厚くなる点がメリットです。

一方で保険料が給料から引かれるため、手取り収入が減ることを考慮しておく必要があります。

従業員数のカウントは、「フルタイムではたらく従業員数」と「週の所定労働時間と月の所定労働日数が、フルタイム勤務の4分の3以上の従業員」を足した数で決まります。

バイトやパートも含まれるため、従業員数の少ない企業でバイトをしている方は、自分が制度変更の影響を受けるのか、確認しておきましょう。

バイトが社会保険に加入するメリット

バイトが社会保険に加入することで、多くのメリットを得られます。

将来もらえる年金額が増えたり、病気やケガではたらけなくなったときに手当がもらえたりと、生活の支えになるでしょう。

ここからは、具体的なメリットを2つに分けて解説します。

将来受け取る年金が増加

社会保険に加入すると、将来もらえる年金の金額が増える点がメリットです。

年金には「国民年金」と「厚生年金」の2種類があり、社会保険に加入すると、厚生年金にも加入することになります。

国民年金に加え、厚生年金も受け取れるため、老後の生活にゆとりが生まれるでしょう。

さらに厚生年金は、はたらいて得た収入と加入期間によって、受給額が増える仕組みです。

長く加入するほどメリットが大きく、将来の安心感を得られます。

傷病手当金や出産育児一時金などを受けられる

社会保険は、病気やケガ、出産などではたらけないときに「傷病手当金」や「出産育児一時金」などの給付が受けられることも大きなメリットです。

たとえば、病気やケガを理由に仕事を休んだことで、収入がなくなったり減額されたりして、十分な報酬が得られない場合に適用されます。万が一はたらけなくなった場合でも、生活の支えとなるでしょう。

また、出産時には「出産育児一時金」として、まとまった金額が支給されることも魅力の一つです。

出産には入院や分娩などで大きな出費となるので、必要な費用を軽減できると、今後の経済的な不安も解消されます。

バイトが社会保険に加入するデメリット

社会保険に加入すると、多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。

特に短期間の勤務や、将来の年金よりも今の収入を重視したい方にとっては、社会保険の加入が負担に感じることもあるでしょう。

ここからは、具体的なデメリットについて詳しく解説します。

手取りの金額が減る

社会保険に加入すると、毎月の給料から社会保険料が自動的に引かれるため、手取り収入が減ってしまうことがデメリットです。

そのため、長くはたらく予定のない方や、生活費をできるだけ確保したい方にとっては負担に感じる可能性があります。

ただし、健康保険に加入している期間は、万が一はたらけなくなって収入が得られなくなっても、傷病手当が受けられます。そのため「今」と「将来」のバランスを見据えて判断することが大切です。

家族手当が支給されなくなる恐れ

社会保険に加入すると、「家族手当」が受けられなくなる可能性があります。

家族手当は、家族を養う世帯主に対して、経済的な負担を軽減するために、会社が支給する制度のことです。

家族手当の支給条件は、社会保険に加入している企業によって異なりますが、一定の収入がある世帯は支給対象外となる恐れがあります。

その基準の一つが、社会保険の加入です。

世帯主以外の家族が社会保険に加入している場合、年収が106万円以上であることが明確なため、支給不要と判断されやすくなります。

家族全体の収入に影響が出る可能性もあるので、バイト先で社会保険に加入する前に、配偶者や親の企業で定められた就業規則を確認してください。

バイトが社会保険に加入する手順

バイト従業員が、社会保険の加入条件を満たした場合、バイト先はバイト従業員を社会保険に加入させる義務があります。

加入手続きはバイト先が行ってくれますが、すでに国民健康保険に加入している場合や、家族の扶養に入っている場合は、状況に応じて手続きが必要です。

ここでは、それぞれのケースごとに、社会保険に加入する手順を解説します。

国民年金に加入している場合

バイトを始めたときに、すでに国民年金に加入している方は、厚生年金保険への切り替えを行います。

手続きはバイト先を通じて行われ、自分で手続きを行う必要はありません。厚生年金保険への切り替えが完了すると、個人で支払っていた国民年金の保険料は不要になります。

バイト先から手続きのために、年金手帳やマイナンバーカードの提出を求められることがあるので、指示に従いましょう。

国民健康保険に加入している場合

バイトで社会保険に加入する場合、すでに加入している国民健康保険から、バイト先が加入している健康保険への切り替えを行います。

加入手続きはバイト先が行うため、自分で健康保険に再加入する手続きは不要です。

ただし、今まで加入していた国民健康保険については、自分で資格喪失の届出を提出し、保険証を返却する必要があります。

新しい保険証をバイト先から渡されたら、14日以内にお住まいの自治体で国民健康保険の喪失届手続きを行ってください。

手続きを行わない場合、国民健康保険料の請求が続くため、忘れずに手続きを行いましょう。

配偶者の勤務先の健康保険に加入している場合

配偶者の健康保険に扶養として加入している方は、その扶養から外れ、バイト先で自分名義の社会保険に加入し直す必要があります。

この場合、配偶者の扶養から外れたことを配偶者の勤務先にも報告し、健康保険の喪失手続きと不要になった保険証の返却が必要です。

喪失手続きは配偶者の会社が行います。加入している健康保険によって提出物などが異なる可能性があるため、配偶者を通じて会社の指示通りに手続きを行ってください。

自分名義の社会保険へ加入する手続きは、バイト先が行います。

バイトで社会保険に加入したくない場合はどうする？

「保険料を払いたくない」「扶養から外れたくない」などの理由で、社会保険の加入を避けたい方は、加入条件を満たさないようにはたらくことで、加入を回避できます。

ここでは、社会保険に加入しないための具体的な方法を紹介します。

労働時間を20時間未満に

社会保険の加入を避けるには、週の労働時間を20時間未満に抑えるようにしましょう。

週20時間以上はたらくと、以下の加入条件に該当する可能性が高まります。

• 週の所定労働時間が、20時間以上

• 月収額が8万8,000円以上・年収106万円以上
• 週の所定労働時間と月の所定労働日数が、フルタイム勤務の4分の3以上

ただし、労働時間を少なくすると収入も減るため、生活費とのバランスを考慮することが大切です。

バイト先でシフトを調整できるかも確認しましょう。

雇用期間が31日未満の短期アルバイトとして働く

社会保険は、2カ月以上の雇用契約が見込まれる場合に対象となります。

そのため、バイトをする際は、単発バイトや期間限定のバイトを選ぶことで、社会保険を回避することが可能です。

雇用契約の期間が、31日未満の短期バイトであれば、たとえ週20時間以上はたらいて、月8万8,000円以上の収入があっても、社会保険に加入する必要はありません。

ただし、31日未満の契約でも、契約内容の変更などで2カ月以上はたらくとみなされた場合は加入対象となるため、注意が必要です。

面接や契約の際に、雇用期間について明確に確認しておきましょう。

社会保険が非該当の事業所で働く

社会保険の加入条件には、「社会保険の適用事業所であること」も含まれます。

つまり、そもそも社会保険が非該当の事業所ではたらけば、社会保険に加入する義務は発生しません。

たとえば、従業員数が5人未満の個人事業所や、農林水産、飲食サービス業、宿泊業、娯楽業などが社会保険の非該当事業です。

非該当事業は限られているため、求人票などに「社会保険なし」などと記載されているかを確認する必要があります。

社会保険がないバイト先では、万が一ケガや病気をした際の傷病手当金や、出産育児一時金が受け取れません。メリット・デメリットをよく理解してから、はたらくかを決めましょう。

まとめ

バイトでも条件を満たせば社会保険に加入する義務があります。将来の年金が増えるだけでなく、はたらけなくなった際に手当を受けられる点がメリットです。

一方、社会保険に加入することで、保険料分の手取りが減ることや、扶養から外れてしまうなどのデメリットもあります。

家族全体の収入にもかかわるため、はたらき方やライフスタイルに合わせて、社会保険に加入すべきかどうかを判断することが大切です。