カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?具体例や対策方法について解説

カスタマーハラスメント(略してカスハラ)とは、顧客が業務範囲を超えた要求を押し付けたり、不適切な言動で従業員に精神的・身体的な負担を与える行為を指します。近年、接客業やサービス業で特に問題視されており、暴言や過度なクレーム、無理難題を突きつける行為が典型例です。こうしたカスハラは、従業員のストレスや職場の雰囲気に深刻な影響を与えるだけでなく、企業全体の健全な運営を脅かすこともあります。
この記事では、カスハラの具体例や、従業員が自身を守るための対策方法について詳しく解説します。
クレームとカスハラの違い
クレームとカスハラの違いは、その目的と内容にあります。クレームは、商品やサービスに対する正当な不満や問題を解決するための意見や要望を伝える行為です。お客様の立場から、具体的な問題点を指摘し、合理的な範囲で対応を求めるものが中心となります。
一方、カスハラは、不当な要求や相手への攻撃を含む行為を指します。これは、問題解決ではなく相手を威圧したり、自分の感情を発散したりすることが目的である場合が多く、常識を超えた要求や暴言などが特徴です。
クレームは誠実に対応し、問題解決や改善につなげることが重要ですが、カスハラには毅然とした態度で臨み、場合によっては法的措置や社内の対応策を講じる必要があります。このように、クレームは正当な意見、カスハラは理不尽な行為といえる点が大きな違いです。
判断基準はどうする?
クレームとカスハラを判断する基準は、要求の合理性と相手の態度、そして目的の明確さに注目することがポイントです。以下に具体的な基準を示します。
1. 要求の合理性
クレームは、商品やサービスに何らかの不具合やミスが生じた場合に、それを修正するための合理的な改善や補償を求める行為です。たとえば、購入した商品が壊れていた際に、その商品の交換を依頼するのは正当な要求と言えます。一方で、カスハラは、不当で過剰な補償や謝罪をしつこく求める行為を指します。商品の不具合に対して、本来の責任を超えた大規模な補償や過剰な謝罪を求める場合などが該当します。その要求が他のお客様や社会的常識に照らして妥当なものであるかを慎重に検討する必要があります。
2. 相手の態度
クレームでは、指摘や要望を伝える際の態度が冷静で、建設的である場合がほとんどです。問題解決を目指しているため、企業側とも協力的な姿勢で話し合うことができます。しかし、カスハラの場合、相手の態度が大きく異なります。暴言や威圧的な言動、同じ要求を繰り返す執拗な行為、さらには過剰な感情的反応が特徴です。話し合いが冷静に進められるか、または相手が意図的に脅迫的な態度を取っているかを見極めることが重要です。
3. 目的の明確さ
クレームは基本的に、具体的な問題を解決することや、サービスの改善を目的としています。これらの要望は現実的で、解決に向けた協力的な姿勢が見られるのが特徴です。一方、カスハラは、自己満足や相手を屈服させることが主な目的になりがちです。その要求が実際の問題解決に寄与するものか、それとも相手を困らせたり不快にさせるためだけのものであるかを判断することが大切です。
4. 回答や対応への反応
クレームの場合、企業側が合理的で適切な回答や対応を行うことで、相手は一定の納得を示すことが多いです。問題解決が目的であるため、納得感を得ると要求が収束する傾向があります。これに対し、カスハラでは、企業側がどんなに誠意を持った対応をしても納得せず、次々と新しい要求や非難を繰り返します。対応後の反応が建設的な方向に向かうのか、それとも終わりが見えず悪化するのかを観察することで、判断の手がかりとすることができます。
これらの基準を総合的に考慮し、「要求が正当で、解決を目的としているかどうか」を判断することが大切です。また、迷った場合は上司や法務部門に相談し、客観的な視点を取り入れることをおすすめします。

カスハラの具体事例
カスハラに該当する行為が具体的にどのような場面で起こりうるのか、実際にあった事例を業種別にいくつかご紹介します。これによりクレームとの違いを明確に理解し、適切に対応するための判断材料に役立てていただければ幸いです。
※引用元:厚生労働省「カスタマーハラスメント事例集」
1. 情報通信業
- 顧客が(サポートデスクに)「殺すぞ」「家に火をつけるぞ」と脅迫にあたる発言を行った。
- 顧客が(サポートデスクに)「可愛らしいね、ずっと話していたいよ」「癒やされるね」「下の名前も教えて」とセクハラにあたる言葉をかけた。
2. 運輸業、郵便業
- 運転見合わせ時に、お詫び放送を繰り返していたところ、旅客から「いつ発車するのか放送しろ」としつこく詰問を受けた。運転再開見込みがわからない旨を伝えたが、旅客は納得せずスマホで車掌の対応を無断で動画撮影した。
- 旅客から「(電車が遅延したため)接続路線の最終電車に間に合わなかった。目的地までの一部区間はタクシーを利用した。その分を負担せよ。インターネットで流すぞ。社長もよく知っているぞ。」という苦情があった。社員は「タクシー代は負担できない」旨を繰り返し回答したが、納得しなかった。後日、当該旅客が同趣旨の要求を記載した書面を送付してきた。
3. 卸売業、小売業
- 顧客が20年前に購入した商品が動かなくなったと無償での修理を要求してきた。2日間、当該企業及び商品の輸入元へ執拗に架電し、長時間に渡り、「購入時にきちんとメンテナンスの説明を聞いていない」、「メンテナンスの注意書きを貰っていないため説明に落ち度がある」等と主張を続け、無償での修理を要求した。
- 顧客が揚げ足取りからの謝罪要求をしてきた。顧客の物品要求に対して従業員が対応出来ない旨を伝えると、土下座して謝らないと許さないと発言。従業員はそれを受け謝罪した。
4. 宿泊業、飲食サービス業
- 顧客が宿泊のたびに客室の清掃不備を指摘し、客室のグレードアップや顧客の前で清掃することを要求した。
- 顧客が半額シールの付いた弁当を自身の過失で落とし販売不可能な状態となった。従業員が衛生の観点でその商品は販売できない旨伝えたところ、その商品を販売するか、もしくは他の商品を半額にすることを求め、店内で騒ぎ続けた。
5. 医療、福祉
- 利用者が看護師をたたく、つねる、唾をはく、看護師にものを投げる、看護に必要な物品を破損する等した。
- 薬を過剰に内服することを希望する患者に対し、薬剤師と従業員ができない理由を伝えたところ、「殺すぞ」と発言した。
企業がカスハラを放置するリスク
カスハラを軽視したり放置したりすると、企業全体にさまざまな悪影響を及ぼします。従業員の負担が増えることで職場環境が悪化し、結果として企業の運営に深刻な支障をきたすことも少なくありません。以下に、カスハラを放置することで生じる具体的なリスクについて解説します。
1. 生産性の低下
カスハラがもたらす精神的なストレスや、過剰な対応を求められることによる疲労感は、従業員の集中力や業務効率を著しく低下させます。ストレスを抱えたままでは日常の業務に十分な力を発揮できず、結果的にチーム全体の生産性が低下してしまう可能性があります。
2. 離職者や休職者の増加
カスハラを日常的に受け続けることで、従業員の心身の健康が損なわれ、休職や退職を余儀なくされるケースが増加します。これにより、企業は貴重な人材を失うだけでなく、新たな人材を採用し教育するためのコスト負担も大きくなります。長期的に見ても企業の成長にマイナスの影響を及ぼします。
3. 企業イメージの悪化
カスハラへの対応が不十分だと、企業の労働環境が問題視される可能性があります。特に、SNSや口コミを通じて悪い評判が広まれば、顧客や求職者からの信頼を失いかねません。結果として、取引先や新規顧客の減少、採用活動の難航といった影響が出る恐れがあります。

職場におけるカスハラの対応策
カスハラへの対応は、従業員を守るだけでなく、企業全体の健全な運営にも欠かせない重要な課題です。問題が発生した際に適切に対処するためには、企業としての明確な指針やサポート体制を整えることが必要です。以下では、職場で取り入れるべき具体的な対応策を解説します。
1. カスハラ対応マニュアルの作成
カスハラに直面した際、従業員が迷うことなく適切な対応を取れるようにするため、明確なマニュアルを整備することが重要です。このマニュアルには、カスハラの具体的な定義や想定される状況別の対応手順を記載します。従業員全員が共有することで、組織全体で統一した対応が可能になります。
2. カスハラ対応に関する従業員研修の実施
カスハラの適切な対処法を従業員が身につけるためには、研修を通じた教育が有効です。たとえば、顧客との適切な距離感の保ち方や、問題がエスカレートした際の対応フローを学びます。これにより、従業員は自信を持って冷静に対処できるようになります。
3. カスハラに関する相談窓口の設置
被害を受けた従業員が安心して相談できる窓口を設けることは、心身の負担軽減に大いに役立ちます。専門スタッフを配置し、迅速かつ適切に対応することで、従業員が孤立感を感じることなく働ける環境を整えられます。この窓口は、企業として従業員を守る姿勢を示す場でもあります。
カスハラが起こった場合の対応フロー
カスハラが発生した際には、迅速かつ適切な対応を行うことが重要です。その場限りの対応ではなく、組織として一貫した対応を取るために、明確なフローを定めておく必要があります。以下では、カスハラが発生した際に取るべき具体的な対応手順を順を追って解説します。
※この内容は、労働政策研究・研修機構や各種企業の対応ガイドラインに基づいています。
1. 初期対応
まずは状況を冷静に把握し、適切なコミュニケーションを心がけます。顧客の言動がカスハラに該当するかを見極めつつ、従業員が感情的にならず、落ち着いて対処することが重要です。可能であれば、第三者に状況を共有することで公平な判断がしやすくなります。
2. エスカレーション
状況が自分一人で解決できない場合や、業務範囲を超える対応が求められた場合は、上司や専門部署に相談します。社内ルールに従った対応を取ることで、従業員が必要以上の負担を背負わずに済む体制を整えることがポイントです。
3. 被害防止の措置
暴力や脅迫行為がある場合には、速やかに安全を確保しつつ、詳細な記録を残します。言葉や態度の具体例を記録することで、後に問題を客観的に検証する際に役立ちます。また、従業員の安全が最優先であることを強調します。
4. 話し合いの制限
不適切な要求が続く場合には、対応を制限することも検討します。電話やメールのやり取りを制限することで、従業員への負担を軽減し、無理な対応を防ぎます。適切な言葉を選びつつ、毅然とした態度で断ることが必要です。
5. 外部機関への相談
状況が深刻化した場合や解決が困難な場合は、外部機関への相談を検討します。たとえば、労働基準監督署や警察に相談するほか、企業向けの専門コンサルティングサービスを活用することで、適切な法的措置を講じることが可能です。
6. 社内教育と再発防止
事後には従業員向けの教育や、カスハラ対応マニュアルの見直しを行い、再発防止を図ります。過去の事例を参考に、従業員がよりスムーズに対応できるよう、実践的な研修を取り入れることも効果的です。
まとめ
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、従業員や企業に大きな負担を与える深刻な問題です。クレームとの違いを正しく理解し、初期対応やエスカレーション、外部機関への相談など、適切な対応フローを整えることが重要です。また、マニュアルや研修を通じて従業員をサポートし、再発防止に努めることが、健全な職場環境の維持につながります。
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