有期雇用とは?定義・無期雇用との違い、契約期間の上限、企業の実務ポイントを解説

企業が採用や人材配置を検討する際、有期雇用(有期労働契約)は非常に重要な選択肢の一つです。事業環境の変化が激しい現在において、繁忙期や特定業務、期間限定プロジェクトなどに対応するため、一定期間に限定して人材を活用できる有期雇用は、経営の柔軟性を高める制度として広く利用されています。
一方で、有期雇用は「期間満了で終了するから簡単」と誤解されがちですが、実際には無期転換ルール、雇止め法理、不合理な労働条件の禁止、労働条件明示義務など、多くの法的ルールが関係します。これらを正しく理解せずに運用すると、想定外の無期雇用化や、雇止めを巡るトラブル、法令違反によるリスクが発生する可能性があります。
本記事では「有期雇用とは何か」という基本的な定義から、企業担当者が実務で押さえるべき制度・法律・手続き・注意点までを網羅的に解説します。人材戦略や採用方針を検討する企業にとって、判断の軸となる実践的な内容をお届けします。
【結論】有期雇用とは:期間の定めのある労働契約を締結している雇用
有期雇用とは、雇用契約(労働契約)にあらかじめ契約期間を定めて締結する雇用形態です。契約期間が満了すれば、原則として雇用契約は終了します。
有期雇用の大きな特徴は、契約締結時点で「いつまで雇用するか」が明確になっている点です。ただし、期間満了後も引き続き雇用を継続する場合には、契約更新について企業と労働者双方の合意が必要となります。更新を繰り返す運用を行うと、無期転換ルールや雇止め規制の対象となる点には注意が必要です。
参照:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001567594.pdf
有期雇用に関する基礎知識

有期雇用を正しく運用するためには、まず関連する用語や概念を正確に理解しておくことが重要です。有期雇用は、単に「期間が決まっている雇用」というだけではなく、雇用契約の性質や終了の考え方、契約更新や無期転換のルールなど、無期雇用とは異なる前提で整理されています。
特に企業担当者にとっては、用語の使い分けが曖昧なまま制度を運用してしまうことで、契約書の内容と実態が乖離し、雇止めや解雇を巡るトラブルに発展するケースも少なくありません。ここでは、有期雇用を理解するうえで押さえておくべき基礎知識を体系的に整理します。
有期雇用に関する用語
有期雇用を理解する際には、実務で頻繁に使われる用語と、法令・行政資料で用いられる用語の関係を正しく把握しておく必要があります。意味は同じであっても、表現の違いによって誤解が生じることがあるため、企業として用語を整理・統一しておくことが重要です。
有期雇用
有期雇用とは、雇用契約にあらかじめ契約期間の定めがある雇用形態を指します。契約期間が満了すると、原則として雇用契約は終了します。期間満了後も雇用を継続する場合には、契約更新について企業と労働者双方の合意が必要となります。
実務上は、有期雇用という言葉が、期間の定めがある雇用全般を指す概念的な表現として使われることが一般的です。
有期雇用契約
有期雇用契約とは、有期雇用を成立させるために締結される雇用契約そのものを指します。企業の現場では、この「有期雇用契約」という表現が最も多く用いられており、労働条件通知書や雇用契約書の説明時にも使用されるケースが一般的です。
有期雇用契約では、契約期間に加え、契約更新の有無、更新判断基準、更新上限などを明確に定めることが、後のトラブル防止に直結します。
有期労働契約
有期労働契約は、労働契約法や厚生労働省の行政資料などで用いられる正式な用語です。意味としては有期雇用契約と同一であり、両者に法的な違いはありません。
企業実務ではどちらの表現を用いても問題ありませんが、就業規則や契約書、社内資料では表現を統一し、混在させないことが望ましいでしょう。
参照:厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index.html
雇用期間
雇用期間とは、雇用契約が有効に存続する期間を指します。有期雇用の場合は、この雇用期間があらかじめ定められており、契約満了が雇用終了の基準となります。
実務では口頭説明や社内共有の場面で使われることが多く、契約期間とほぼ同義で扱われるのが一般的です。
契約期間
契約期間とは、雇用契約書や労働条件通知書などの書面上で明示される契約の有効期間を指します。雇用期間と意味はほぼ同じですが、書面では「契約期間」という表現が用いられることが多く見られます。
企業としては、雇用期間と契約期間のどちらの用語を使用するかを統一し、更新や終了の判断に誤解が生じないよう整理しておくことが重要です。
有期雇用の対象となる雇用形態
有期雇用かどうかは、契約社員、パート、アルバイト、嘱託社員といった雇用形態の名称だけで判断されるものではありません。最も重要な判断基準は、雇用契約に「期間の定め」があるかどうかです。
たとえば、社内的には「契約社員」という呼び方であっても、契約期間の定めがなく、期間満了という概念が存在しない場合には、法的には無期雇用に該当します。一方で、「アルバイト」や「パート」と呼ばれていても、3か月、6か月、1年といった契約期間が明示されていれば、有期雇用契約として扱われます。
企業担当者が特に注意すべきなのは、名称による思い込みです。名称だけを根拠に有期雇用だと判断し、実態としては無期雇用であった場合、契約終了時に解雇規制が適用されるなど、対応を誤るリスクがあります。雇止めとして処理できると考えていたケースが、実際には解雇として扱われる可能性も否定できません。
また、派遣については、派遣社員と派遣先企業との間に直接の雇用契約は存在しません。雇用主は派遣会社であり、派遣先企業は受入れ企業として、労務管理や業務指示、安全配慮などに関する別の法的責任を負います。有期雇用契約の主体が誰であるかを正確に把握することが重要です。
参照:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001567594.pdf
有期雇用の契約期間はどれくらいが一般的か
有期雇用の契約期間としては、3か月、6か月、1年のように、企業が業務内容や事業計画に応じて自由に設定することができます。
たとえば、繁忙期のみ発生する業務であれば数か月の契約、特定のプロジェクト業務であればプロジェクト完了までの期間を契約期間とするなど、業務の性質と契約期間を連動させることが合理的です。業務内容と契約期間の整合性が取れているかどうかは、後のトラブル防止の観点でも重要なポイントになります。
一方で、短期間の契約を更新前提で繰り返す運用には注意が必要です。更新を前提とした短期契約を継続すると、労働者側に更新期待が形成されやすくなります。更新の有無や判断基準を明確にしないまま更新を続けた結果、雇止め時に紛争へ発展するケースも少なくありません。
有期雇用の契約期間の上限(原則3年、例外5年)
有期労働契約の契約期間には、法律上の上限が設けられています。原則として、1回の契約期間は3年までとされています。ただし、専門的な知識等を有する労働者または満60歳以上の労働者については、例外として最長5年までの契約期間が認められています。
参照:厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index.html
ここで注意すべきなのは、この「3年」「5年」という上限は、あくまで1回の契約期間に関するルールであるという点です。更新を重ねた結果、通算で何年まで雇用できるかという無期転換ルールとは、別の論点として整理する必要があります。
有期雇用の最短期間に制限はあるか
有期雇用の最短期間については、法律上の制限はありません。理論上は、1か月未満の契約であっても、有期雇用契約として締結することは可能です。
しかし、実務上は、あまりに短い契約期間を設定すると、教育や引継ぎにかかるコストが増加し、業務効率が低下する可能性があります。また、短期契約を更新前提で繰り返す運用は、無期転換や雇止めに関する法的リスクを高める要因にもなります。
契約期間の長短だけでなく、更新回数や通算期間も含めた全体設計が重要です。
雇用期間と試用期間の違い
雇用期間とは、雇用契約そのものが有効に存続する期間を指します。一方、試用期間は、採用後に業務適性や勤務態度などを確認するために設けられる期間です。
試用期間は、有期雇用・無期雇用のいずれにも設定される場合があります。有期雇用においては、「有期雇用契約+試用期間」という形になることもあり、両者の位置づけを混同しないよう注意が必要です。
なお、試用期間中であっても、企業が自由に契約を解除できるわけではありません。解除には客観的に合理的な理由が求められ、社会通念上の相当性がなければ無効と判断される可能性があります。試用期間を理由に安易な解除を行うことは、企業にとって大きなリスクとなる点を理解しておく必要があります。
無期雇用とは

無期雇用(無期労働契約)とは、雇用契約に期間の定めがない状態を指します。多くの企業では、正社員が無期雇用に該当しますが、無期雇用と正社員は必ずしも同義ではありません。
無期雇用では、期間満了による終了がないため、雇用を終了させる場合には、退職や解雇のルールが問題となります。
無期雇用と有期雇用の違い
有期雇用と無期雇用の最大の違いは、契約期間の有無です。有期雇用は期間満了による終了が前提である一方、無期雇用は期間満了という概念がありません。
企業にとっては、人材調整の柔軟性と雇用の安定性のバランスをどう取るかが重要な判断ポイントとなります。
無期雇用と正社員の違い
無期雇用は契約期間の概念であり、正社員は雇用区分の一つです。無期のパートタイムや、無期の契約社員という区分を設ける企業もあります。
無期転換後の区分や待遇をどう設計するかは、就業規則や制度設計に大きく影響します。
有期雇用に関する法律上の重要ルール
有期雇用は、期間満了で終了するという特徴がある一方で、法律によって企業の裁量が一定程度制限されています。特に、長期間にわたる更新や、実質的に継続雇用と評価される運用が行われている場合には、企業側の判断だけで契約を終了させることはできません。
ここでは、企業担当者が必ず押さえておくべき、有期雇用に関する代表的な法律ルールを整理します。
無期転換ルール(いわゆる5年ルール)
無期転換ルールとは、同一の使用者(企業)との間で有期労働契約が5年を超えて更新された有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)から、期間の定めのない労働契約への転換の申込みがあった場合に、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。申込みがあった場合、企業は原則としてこれを拒否することはできません。
無期転換ルールは、長期間にわたって有期雇用が繰り返されることにより、雇用の不安定さが固定化することを防ぐ目的で導入されました。契約が一度でも中断せず、更新が継続している場合には、契約の名称や期間の長短にかかわらず、通算期間としてカウントされます。
企業側が注意すべき点として、無期転換は「自動的に」発生するものではなく、あくまで労働者からの申込みによって成立する点が挙げられます。しかし、申込みがあった場合にこれを拒否できない以上、実務上は事前の備えが不可欠です。
特に重要なのが、無期転換後の労働条件の整理です。賃金、労働時間、業務内容、配置転換の有無などについて、無期転換後にどのような条件が適用されるのかを明確にし、就業規則や関連規程に反映させておく必要があります。無期転換後の条件を曖昧なままにしていると、待遇差や契約内容を巡るトラブルに発展する可能性があります。
参照:厚生労働省「無期転換ルールについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21917.html
参照:厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」
https://muki.mhlw.go.jp/
雇止め法理の法定化
有期雇用は、契約期間満了により終了するのが原則です。しかし、一定の条件を満たす場合には、契約期間満了であっても、企業の判断による雇止め(契約期間満了による雇用終了)が制限されることがあります。これが、いわゆる雇止め法理です。
具体的には、以下のいずれかに該当する場合、雇止めが無効と判断される可能性があります。
・過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
・労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの
企業担当者が注意すべきなのは、「形式的には期間満了である」という理由だけでは、雇止めが正当化されない点です。更新回数、通算雇用期間、業務内容の継続性、更新時の説明内容など、総合的な事情が考慮されます。
そのため、契約更新時には、更新の有無や判断基準を明確に伝え、記録として残しておくことが重要です。また、更新しない場合には、事前に説明を行い、理由を明示できる体制を整えておくことが、トラブル防止につながります。
参照:「「雇止め法理」の法定化 (第19条)」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet06.pdf
労働条件の明示義務 ※2024年(令和6年)4月改正
有期雇用においては、労働条件の明示が特に重要視されています。2024年(令和6年)4月の法改正により、有期雇用に関する明示事項はさらに拡充されました。
具体的には、従来の契約期間や更新の有無に加え、有期労働契約の締結時と更新時には「就業場所・業務の変更の範囲」および「更新上限の有無と内容」を、無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時には「無期転換申込機会・無期転換後の労働条件」を、それぞれ明示することが義務付けられています。
これらの事項を曖昧にしたまま契約を締結・更新すると、後に「説明を受けていない」「聞いていた内容と違う」といった主張を招きやすくなります。労働条件通知書や雇用契約書の記載内容を定期的に見直し、法改正に対応しているかを確認することが、企業の重要な責務です。
参照:厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
不合理な労働条件の禁止(同一労働同一賃金)
有期雇用労働者と無期雇用労働者の間で労働条件に差を設ける場合、その差が不合理であってはならないとされています。いわゆる同一労働同一賃金の考え方です。
ここで重要なのは、「同じ待遇にしなければならない」という意味ではない点です。職務内容、責任の程度、配置転換の範囲などの違いに基づき、合理的な理由があれば待遇差を設けること自体は認められています。
企業としては、有期雇用と無期雇用の役割や期待値を整理し、その違いが待遇にどのように反映されているのかを説明できる状態にしておくことが求められます。説明できない待遇差は、不合理と判断されるリスクが高まるため、制度設計と運用の両面で注意が必要です。
参照:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
有期雇用のメリット・デメリット

有期雇用は、企業にとって人材活用の柔軟性を高める有効な手段である一方、法的ルールを正しく理解せずに運用すると、思わぬトラブルやコスト増につながる可能性もあります。ここでは、有期雇用を導入・活用する際に、企業側が理解しておくべきメリットとデメリットを整理します。
単に「コストを抑えられる」「調整しやすい」といった表面的な利点だけでなく、長期的な人材戦略や労務管理の観点からも検討することが重要です。
メリット:人材調整の柔軟性
有期雇用の最大のメリットは、人材配置を柔軟に調整できる点にあります。繁忙期や季節要因によって業務量が変動する場合、必要な期間だけ人材を確保できるため、過剰な固定費を抱えにくくなります。
また、特定のプロジェクトや期間限定業務においては、業務完了と同時に契約満了となるため、終了後の配置転換や人員整理に悩む必要がありません。事業計画と連動した人材活用がしやすい点は、企業にとって大きな利点といえます。
ただし、この柔軟性は、契約期間や更新方針を明確にしたうえで運用してこそ発揮されるものです。更新を前提としない場合には、その旨を契約時に丁寧に説明し、書面でも明示することが不可欠です。
メリット:専門性のある人材を確保しやすい
有期雇用は、専門的な知識や経験を持つ人材を、必要な期間だけ活用したい場合にも有効です。高度な専門業務や特定分野の知識が求められる業務では、無期雇用として長期雇用するよりも、有期雇用での活用が適しているケースも少なくありません。
たとえば、システム導入、業務改善、期間限定の調査・分析業務などでは、専門性を持つ人材をプロジェクト単位で迎え入れることで、社内リソースを補完できます。企業側は必要なスキルを明確に定義したうえで契約を結ぶことで、業務の質を高めることが可能です。
また、専門人材にとっても、期間限定で柔軟にはたらける点は魅力となる場合があり、双方のニーズが合致しやすい点もメリットといえるでしょう。
デメリット:教育コストと定着の課題
一方で、有期雇用には教育・研修コストが回収しにくいというデメリットがあります。契約期間が限られているため、時間やコストをかけて育成しても、契約満了と同時に人材が離れる可能性があるためです。
特に、業務に一定の習熟期間が必要な場合、短期間での契約終了は企業側にとって効率的とはいえません。結果として、常に新しい人材の受け入れと教育を繰り返す状態になり、現場の負担が増大するケースも見られます。
このような課題に対しては、業務内容を切り分け、有期雇用で担う業務範囲を限定する、マニュアル整備を進めるなどの工夫が求められます。更新の可能性がある場合には、評価基準やキャリアの見通しを示すことで、一定の定着を促すことも有効です。
デメリット:法改正やトラブル対応のリスク
有期雇用において企業が特に注意すべきなのが、法改正や法的トラブルへの対応リスクです。無期転換ルール(いわゆる5年ルール)や雇止め法理、不合理な労働条件の禁止など、有期雇用を巡る法規制は複雑で、運用を誤ると紛争に発展する可能性があります。
たとえば、更新を繰り返すことで無期転換申込権が発生しているにもかかわらず、適切な説明や対応を行わなかった場合、企業側の対応が違法と判断されるリスクがあります。また、雇止めに際して合理的な理由や十分な説明がない場合、雇止め自体が無効とされる可能性も否定できません。
さらに、有期雇用労働者と無期雇用労働者との待遇差についても、不合理でないことが求められます。賃金や手当、福利厚生の設計が不十分な場合、同一労働同一賃金を巡る問題が生じるおそれがあります。
これらのリスクを回避するためには、就業規則や雇用契約書の整備、契約更新の管理、法改正への継続的な対応が不可欠です。有期雇用を「手軽な雇用形態」と捉えるのではなく、適切な労務管理が求められる制度として理解することが重要です。
有期雇用契約を締結する際の手続き
有期雇用契約は、契約締結時の説明や書面整備だけでなく、その後の更新や契約満了までを見据えた運用が重要です。最初の対応を誤ると、無期転換や雇止めを巡るトラブルにつながる可能性があるため、契約締結から終了までを一連の実務フローとして整理しておく必要があります。
ここでは、有期雇用契約を締結する際に企業が押さえるべき手続きを、時系列に沿って解説します。
契約期間・更新の有無を明確にする
有期雇用契約を締結する際に、最も重要となるのが契約期間と更新に関する取り扱いです。契約期間がいつからいつまでなのかを明確にし、期間満了時に契約が終了するのか、それとも更新の可能性があるのかを、契約締結時点で明示する必要があります。
特に注意すべきなのは、「更新の有無」と「更新判断基準」です。更新の可能性がある場合には、その判断がどのような要素に基づいて行われるのかを、できる限り具体的に示しておくことが重要です。たとえば、業務量、業務成績、勤務態度、会社の経営状況など、判断基準を整理しておくことで、後の更新判断や雇止め時の説明がしやすくなります。
また、契約更新を繰り返す場合には、更新回数や通算期間が長期化しやすくなります。そのため、更新上限を設定するかどうか、設定する場合には何回まで、あるいは通算何年までとするのかを検討し、契約書や労働条件通知書に反映させることが望ましいでしょう。更新上限を明示していない場合、更新期待が形成されやすくなり、雇止めが制限されるリスクが高まります。
労働条件通知書・雇用契約書の明示事項
有期雇用契約を締結する際には、労働条件通知書や雇用契約書によって、労働条件を明示することが法律上義務付けられています。有期雇用の場合は、通常の明示事項に加え、契約期間や更新に関する情報を正確に記載することが特に重要です。
具体的には、就業場所、業務内容、始業・終業時刻、所定労働時間、休憩、休日、休暇といった基本的な労働条件に加え、賃金の決定方法、支払方法、締日・支払日などを明示します。また、社会保険や雇用保険の加入有無についても、条件に応じて適切に記載する必要があります。
有期雇用に特有の明示事項としては、契約期間、契約更新の有無、更新判断基準、更新上限、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件などが挙げられます。これらを曖昧な表現で済ませてしまうと、後に「説明を受けていない」「聞いていた内容と違う」といったトラブルに発展する可能性があります。
書面は交付するだけでなく、内容を口頭でも丁寧に説明し、労働者が理解したうえで契約を締結することが重要です。
参照:厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
契約更新・契約満了時の対応
有期雇用契約では、契約更新や契約満了時の対応がトラブル発生のポイントになりやすいため、事前の準備が欠かせません。更新を行う場合には、契約期間満了前に面談を実施し、業務状況や今後の方針を共有したうえで、更新の意思確認を行うことが望ましいでしょう。
更新する場合には、契約期間や労働条件に変更があるかどうかを確認し、変更がある場合には書面で明示したうえで再度合意を得る必要があります。更新を繰り返している場合には、通算期間や無期転換申込権の発生時期を管理し、対応漏れが生じないよう注意が必要です。
一方、契約満了により雇用を終了する場合には、事前の説明と適切なコミュニケーションが重要です。更新を期待させるような言動や運用があった場合には、雇止めとして扱われ、制限が課される可能性があります。満了終了とする場合でも、早めに方針を伝え、業務の引継ぎや最終出勤日の調整を行うことで、不要なトラブルを防ぐことができます。
契約更新・満了のいずれの場合においても、書面での記録を残し、説明内容や合意の有無を明確にしておくことが、企業のリスク管理上非常に重要です。
有期雇用に関してよくある質問
有期雇用については、制度の概要だけでなく、実務上の扱いや法的な位置づけについて疑問を持つ企業担当者も少なくありません。ここでは、企業側から特に多く寄せられる質問について、実務と法律の両面から整理します。
有期雇用とはどういう意味ですか?
有期雇用とは、雇用契約にあらかじめ契約期間の定めがある雇用形態を指します。契約期間が満了すると、原則として雇用契約は終了し、継続して雇用する場合には契約更新について双方の合意が必要となります。
正社員のように期間の定めがない無期雇用とは異なり、「いつまで雇用するのか」が契約時点で明確になっている点が、有期雇用の最大の特徴です。契約社員、パート、アルバイトといった名称で呼ばれていても、実際に契約期間の定めがあれば有期雇用に該当します。
企業にとっては、事業計画や業務量に応じて人材を活用しやすい一方、契約更新や雇止めに関する法的ルールを正しく理解しておく必要があります。
参照:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001567594.pdf
有期雇用契約のデメリットは?
有期雇用契約の主なデメリットとしては、教育コストが回収しにくい点や、人材が定着しにくい点が挙げられます。契約期間が限られているため、一定の期間で人材が入れ替わりやすく、現場の負担が増えるケースもあります。
また、更新を繰り返すことで無期転換ルールが適用される可能性があり、制度理解が不十分なまま運用すると、想定外の雇用義務が発生するリスクもあります。さらに、雇止めや待遇差を巡るトラブルが生じる可能性がある点も、企業にとっての注意点といえるでしょう。
有期雇用を活用する際には、短期的なメリットだけでなく、長期的な人材戦略や労務管理の負担も含めて検討することが重要です。
参照:厚生労働省「無期転換ルールについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21917.html
参照:厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」
https://muki.mhlw.go.jp/
有期雇用契約は何年までできますか?
有期雇用契約の契約期間には、法律上の上限があります。原則として、1回の契約期間は最長3年までとされています。ただし、高度な専門的知識や技術を有する人材や、満60歳以上の人材については、例外として最長5年までの契約期間が認められています。
なお、この「3年」「5年」という上限は、あくまで1回の契約期間に関するルールです。更新を重ねた場合の通算期間とは別の考え方であり、通算5年を超えた場合には無期転換ルールが適用される点に注意が必要です。
参照:厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index.html
有期雇用と無期雇用と正社員の違いは何ですか?
有期雇用と無期雇用の最も大きな違いは、契約期間の定めがあるかどうかです。有期雇用は契約期間が定められており、期間満了で終了するのが原則です。一方、無期雇用は期間の定めがなく、定年まで雇用が継続するのが一般的です。
正社員という言葉は、雇用形態ではなく、企業内での呼称や処遇区分を指すことが多く、必ずしも無期雇用とイコールではありません。実際には、無期雇用の契約社員や、限定正社員など、さまざまな形態が存在します。
企業担当者は、「正社員かどうか」ではなく、「有期か無期か」という雇用契約の性質を基準に、制度設計や運用を行う必要があります。
有期雇用の5年ルールはいつから?
有期雇用の5年ルール(無期転換ルール)は、2013年(平成25年)4月1日に施行された改正労働契約法に基づく制度です。この制度により、同一の使用者との間で有期労働契約が更新などによって通算5年を超えた場合、労働者は無期労働契約への転換を申し込むことができるようになりました。
実際に無期転換の申込みが可能となるのは、2018年(平成30年)4月1日以降に通算5年を超えたケースからです。企業は、通算契約期間を適切に管理し、無期転換申込権が発生する時期を把握しておく必要があります。
参照:厚生労働省「労働契約法改正のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet.pdf
有期雇用期間が終了したらどうなる?
有期雇用契約は、契約期間が満了すると原則として終了します。契約満了により雇用が終了する場合、更新を行わないという判断自体は直ちに違法となるわけではありません。
ただし、更新を繰り返してきた場合や、更新を期待させるような説明や運用があった場合には、雇止めとして制限がかかる可能性があります。その場合、合理的な理由や十分な説明がなければ、雇止めが無効と判断されるリスクもあります。
企業としては、契約満了時の対応を事前に想定し、更新方針を明確にしたうえで、適切なタイミングで説明を行うことが重要です。
参照:「「雇止め法理」の法定化 (第19条)」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet06.pdf
まとめ丨有期雇用を適切に運用するために企業が押さえるべきポイント
有期雇用とは、契約期間の定めがある雇用契約であり、無期雇用とは異なる法律ルールと実務上の注意点が存在します。契約期間の上限、無期転換ルール、雇止めの制限、労働条件明示義務、不合理な待遇差の禁止など、企業が遵守すべき事項は多岐にわたります。
有期雇用は、人材調整の柔軟性や専門人材の活用といったメリットがある一方、運用を誤るとトラブルや法的リスクにつながる制度でもあります。そのため、契約締結時から更新・満了までを一貫したルールで管理し、就業規則や雇用契約書を整備しておくことが不可欠です。
有期雇用を単なる一時的な雇用手段としてではなく、企業の人材戦略の一部として位置づけ、制度理解と実務対応を両立させることが、安定した人材活用につながります。





