【企業向け】パートの残業代・割増賃金 完全ガイド|計算方法・支給条件・就業規則の整備(2026年最新版)

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パートやアルバイトの残業代は、「なんとなく正社員より簡易なルール」と思われがちですが、法律上は多くの場面で正社員と同じように扱う必要があります。日本の労働基準法は、雇用形態や勤務時間の長さにかかわらず、一定の条件を満たす労働者に対して残業代(割増賃金)を支払うことを企業に義務づけています。

一方で、所定労働時間と法定労働時間の違い、時間外労働・休日労働・深夜労働の割増率、36協定による時間外労働の上限規制など、実務で押さえるべきルールは多岐にわたります。パートの勤務時間はシフト制で変動しやすく、1日の労働時間や週間の合計時間の管理も複雑になりがちです。

本ガイドでは、人事部・人事・労務担当の方を対象に、パートタイマーを含む従業員の残業代のルールと計算方法、就業規則・雇用契約での記載方法、シフトや勤務時間管理のポイントを、具体的なケースや計算例とともに解説します。未払い残業代による違反リスクを回避しつつ、採用や求人戦略と整合する運用を構築するための参考にしてください。

目次

パートの残業代について要点を整理

まず、パート・アルバイトの残業代に関する最重要ポイントだけをまとめます。

  • パート・アルバイトも、原則として労働基準法上の「労働者」に該当し、雇用主には残業代の支給義務があります。
  • 所定労働時間を超えても、法定労働時間(1日8時間・週40時間)以内であれば、法律上、割増賃金を支払う必要はありません(ただし就業規則で上乗せ支給することは可能)。
  • 法定労働時間を超える時間外労働(法定時間外)は、通常の賃金の25%以上の割増率で残業代を支払う必要があります。
  • 22時以降の深夜労働は、原則25%以上の深夜手当を支給します。時間外労働と深夜労働が重なる場合は、25%+25%=50%以上の割増になります。
  • 労働基準法上の法定休日(毎週少なくとも1日、または4週間で4日)に勤務させた場合は、35%以上の休日手当が必要です。法定休日かどうかは就業規則や勤務先カレンダー上の休日区分の規定が重要です。
  • 月60時間を超える時間外労働部分については、50%以上の割増率が法律上定められています。中小企業にも順次適用が拡大しており、上限を超えない管理が重要です。
  • 時間外・休日労働を行わせるためには、36協定を従業員代表と締結し、所轄労働基準監督署へ届出を行うことが原則必要です。協定がない時間外労働は原則違法となります。
  • 残業代の未払いが発生した場合には、是正勧告・付加金・遅延損害金・罰則などのリスクがあり、過去分の残業代と割増賃金をまとめて支給しなければならない可能性があります。

次の章から、用語・ルール・計算方法を順に理解していきましょう。

割増賃金の早見表(時間帯・範囲・割増率)

パートの残業代を正しく計算するためには、「どの時間帯がどの割増率になるのか」を一目で理解できることが重要です。ここでは、時間外労働・深夜労働・休日労働などの割増率を整理します。

区分対象となる時間帯・条件割増率備考
通常の勤務時間内法定労働時間内(1日8時間以内/週40時間以内)割増なし(通常賃金)
時間外労働(残業)法定労働時間を超える時間25%以上月60時間超は割増率が上昇
深夜労働22時〜翌5時25%以上深夜手当
休日労働(法定休日)週1回以上与えるべき法定休日に勤務した場合35%以上法定休日の定義に注意
時間外 × 深夜法定時間外かつ22時〜翌5時50%以上(25%+25%)実務で最も見落とされやすい部分
休日 × 深夜法定休日かつ22時〜翌5時60%以上(35%+25%)特に割増率が高い
月60時間超の時間外労働時間外労働合計が月60時間を超えた分50%以上中小企業にも適用済み(2023年〜)

具体的な計算方法は後述しますが、まずは「どの条件のときに、どの割増率が適用されるか」を理解しておくことが、残業代の計算と管理の第一歩です。

パートの残業代を支払わないとどうなる?(未払い・違反リスク)

パートの残業代を支給しなかった場合、あるいは割増率を誤って計算していた場合、企業にはさまざまなリスクが発生します。

  1. 労働基準法違反としての是正勧告・指導
    労働基準監督署の調査で未払い残業代が発覚すると、是正勧告により一定期間以内の支給を指示されます。従業員からの申告や、退職時の相談がきっかけになるケースも多く、人材採用力にも悪影響を及ぼします。
  2. 過去分の残業代請求
    賃金請求権の時効は、法律上は「原則5年」とされていますが、現在は経過措置により「当面の間3年」となっています。未払い残業代だけでなく、割増賃金部分も含めてまとまった金額の支給が必要になり、経営の負担となる可能性があります。
  3. 付加金・遅延損害金・罰則
    悪質な違反と判断された場合は、付加金(未払い額と同額など)や遅延損害金、罰金・懲役などの制裁を受ける可能性もあります。社会保険労務士や弁護士に相談され、訴訟に発展すれば、残業時間と賃金の管理の甘さが裁判所で厳しくチェックされます。
  4. 企業イメージ・採用への影響
    SNSや口コミサイトで「残業代が支給されない職場」として情報が広まれば、求人への応募が減り、採用コストが上昇します。短期的な人件費削減のつもりが、中長期では大きな損失になりかねません。

未払いの「可能性」が少しでもあると思われる場合は、早期に実態を把握し、労務・人事部門と社会保険労務士事務所などの専門家と連携して対応することが重要です。

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基本の考え方:用語とルール(所定・法定・残業の定義)

ここからは、パートの残業代の計算に必要な基本用語とルールを整理します。用語の理解があいまいなままだと、勤務時間の管理や割増賃金の計算方法を誤り、結果として未払いが発生しやすくなります。

所定労働時間と法定労働時間の違い

まず押さえたいのが、「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いです。

  • 所定労働時間
    就業規則や雇用契約書で、企業と従業員とのあいだで決めた勤務時間の範囲です。例えば、「1日7時間勤務・週5日勤務・1週間35時間」といった定め方をします。パートやパートタイマーの場合、「1日4時間労働・週3日勤務・1週間12時間」など、短時間労働のパターンも多く見られます。
  • 法定労働時間
    労働基準法で定められた、原則として「1日8時間・週40時間」までの労働時間の上限です(業種によって例外あり)。この範囲を超える時間外労働には、割増賃金が必要になります。

多くの企業では、所定労働時間は法定労働時間より短く設定されており、「所定時間を超えたが、法定時間内」という時間帯が発生します。この時間帯は「残業」と呼ばれることもありますが、法律上は割増賃金の支払いが必ずしも必要なわけではありません。就業規則で「所定外労働にも残業代を上乗せ支給する」と規定すれば、従業員の納得感も高まります。

休憩・法定休日・1週間の考え方/定義

労働時間の管理では、休憩や休日のルールも重要です。

  • 休憩時間
    労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分の休憩を与えることが義務づけられています。休憩は原則として自由利用できる時間であり、指揮命令下にある「待機時間」は労働時間として扱う必要があります。
  • 法定休日
    少なくとも毎週1日、または4週間を通算して4日以上の休日を与えることが法定されています。就業規則で「日曜日を法定休日」と定めるなど、どの日が法定休日なのかを明確にしておくことが重要です。
  • 1週間・1日の起算
    1日や1週間の起算日をどう扱うかは、残業時間の計算に影響します。週の始まりを「月曜日」とするのか「日曜日」とするのか、シフト制の勤務先では就業規則で起算日を規定し、PCやクラウド型勤怠システムでも同じ設定にしておくと管理がスムーズです。

残業時間の用語整理(通常・時間外・休日・深夜)

残業時間に関する用語は、現場では混同されやすいポイントです。ここで整理しておきましょう。

  • 時間外労働(法定時間外)
    法定労働時間である1日8時間・週40時間を超えて行わせる労働時間。割増賃金(25%以上)が必要です。
  • 休日労働
    法定休日に勤務させること。休日手当として35%以上の割増賃金が必要です。所定休日(会社カレンダー上の休日)であっても、法定休日でない場合には、時間外労働として扱うかどうかを個別に判断します。
  • 深夜労働
    22時から翌5時までの時間帯の労働を指します。深夜手当として25%以上の割増が必要で、時間外・休日と重なれば加算されます。

パート・アルバイトも、これらの定義における「労働者」の対象に含まれます。雇用形態や勤務時間の長さではなく、労働基準法上の要件を満たすかどうかが法律上の取り扱いの基準となります。

週の始まりと1日の考え方/シフト実務

シフト制の職場では、「1日」「1週間」の区切り方や、日をまたぐ勤務の扱いが残業時間の計算に大きく影響します。

例えば、21時〜翌6時のシフトで勤務するスタッフの場合、22時以降は深夜労働に該当し、5時〜6時の1時間は通常時間帯として扱います。このとき、翌日のシフトとの通算により、1日の合計勤務時間が8時間を超えれば、その超過分は時間外労働になり得ます。

また、繁忙期にシフトを急きょ変更するケースでは、もともと休日だった日を出勤日に変える「勤務変更」や、法定休日と所定休日を入れ替える「振替休日」の取り扱いなど、就業規則に沿った運用が求められます。事情に応じて柔軟にシフトを調整しつつ、法定の範囲内に収まるように管理することが、人事部・店長・現場管理者の重要な仕事です。

パートの残業代の計算方法(時給・日給・月給:各ケースの数式と例)

次に、パートの残業代の具体的な計算方法を整理します。パートは時給制であることが多いですが、日給や月給で契約している従業員にも同じルールが適用されます。

基本:時給制の残業代計算

時給制のパートについて、典型的なケースを想定した計算方法を見ていきます。

  1. 所定内(法定内)超過=割増なし
    例:所定労働時間が1日6時間のパートが、繁忙により7時間勤務した場合で、週40時間以内に収まっているケース。
    この場合、1時間分は「所定外だが法定内」の時間として、通常の時給で支給します(就業規則で割増支給することも可能です)。
  2. 法定時間外労働=25%割増
    例:時給1,200円のパートが、1日で9時間勤務し、1週間の合計勤務時間も40時間を超えた場合。
    法定労働時間8時間を超える1時間分については、
    1,200円×1.25=1,500円
    を1時間あたりの残業手当として支給します。
  3. 深夜労働=25%割増
    例:時給1,200円のパートが、22時〜23時に勤務した場合。
    1,200円×1.25=1,500円
    を深夜手当として支給します。
  4. 法定休日労働=35%割増
    例:日曜日を法定休日と定めている企業で、日曜日に5時間勤務した場合。
    1,200円×1.35=1,620円
    が1時間あたりの休日手当となります。
  5. 月60時間超の時間外労働=50%割増
    月の時間外労働が60時間を超えた部分については、
    1,200円×1.5=1,800円
    と、50%以上の割増賃金を支払う必要があります。

これらの計算は、勤怠システムの設定や給与計算ソフトのロジックとも密接に関係します。ルールの理解と同時に、システム側の設定値(所定労働時間、法定休日、割増率など)が就業規則と整合しているかを必ず確認しましょう。

ケース別計算例(上位記事踏襲+拡張)

ここでは、代表的なケースごとに残業代をどのように計算するかを具体的に見ていきます。

1.1日の労働が8時間以内・週40時間以内

  • 例:所定6時間勤務のパートが、ある日だけ7時間勤務したが、1週間の合計勤務時間は35時間以内。
    → 法定労働時間の範囲内なので、1時間分は通常の時給で支給。割増なし。

2.1日の8時間超・週40時間超

  • 例:時給1,100円、週5日シフトで、ある日9時間勤務し、週間合計が42時間になったケース。
    8時間〜9時間の1時間は法定時間外労働となり、
    1,100円×1.25=1,375円
    が残業代。
    残業時間が複数日の合計で週40時間を超えた場合にも、超過分に割増賃金が発生します。

3.法定休日出勤

  • 例:日曜日を法定休日とする企業で、日曜日に4時間勤務。
    時給1,200円×1.35×4時間=6,480円
    が休日労働分の給与となります。別日に振替休日を設定したかどうかで、休日手当の要否が変わる点に注意が必要です。

4.深夜労働

  • 例:22時〜23時に勤務した場合。
    通常時給1,000円×1.25=1,250円。
    シフトで22時以降の勤務が多い業種(飲食・コールセンター・物流など)では、深夜手当を前提にした賃金コストの見積りが重要です。

5. 深夜×時間外

  • 例:1日9時間勤務のうち、22時〜23時が時間外かつ深夜に該当するケース。
    通常時給1,200円×1.5(25%+25%)=1,800円
    がその時間帯の1時間あたりの賃金となります。

6.法定休日×深夜

  • 例:日曜日22時〜24時に勤務した場合。
    通常時給1,200円×1.6(35%+25%)=1,920円
    が1時間あたりの賃金で、2時間分で3,840円となります。

7.月60時間超

  • 例:1か月の時間外労働が合計70時間だったケース。
    最初の60時間までは25%以上の割増、それを超える10時間分は50%以上の割増で計算します。
    中小企業も含め、現在は多くの企業がこのルールの適用対象となっているため、36協定と合わせて上限管理を行うことが重要です。

8.所定休日(法定外)の扱い

  • 例:土曜日を「所定休日」とし、日曜日を「法定休日」としている企業で、土曜日に出勤したケース。
    土曜日の勤務が法定労働時間を超えていなければ通常賃金、超えていれば時間外労働として25%以上の割増となります。休日の区分を就業規則で明確に記載しておかないと、誤った扱いをしてしまうおそれがあります。

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複雑な状況の計算(複合・制度導入時の注意)

実務では、変形労働時間制やフレックスタイム制、振替休日・代休、固定残業代など、より複雑な制度を導入している勤務先も多く存在します。これらの制度は、導入方法やルールを誤ると違法となる可能性があるため、法律上の要件を十分に理解しておく必要があります。

法定時間外×深夜/法定休日×深夜

時間外労働と深夜労働が重なる時間帯、休日労働と深夜労働が重なる時間帯では、割増率を単純に「足し算」する必要があります。

  • 時間外労働(25%)+深夜労働(25%)=50%以上
  • 休日労働(35%)+深夜労働(25%)=60%以上

22時以降にまたがるシフトでは、「どの時間帯が時間外に該当するか」「どの時間帯が休日労働になるか」を丁寧に区分し、通算した勤務時間と照らし合わせて計算することが重要です。勤怠システムと給与計算システムの両方で、割増率と対象時間帯を誤りなく設定しておきましょう。

変形労働時間制・フレックス時の残業判定

1か月単位・1年単位・1週間単位の変形労働時間制、フレックスタイム制などを導入している場合、残業時間の判定がさらに複雑になります。

  • 1か月単位の変形労働時間制
    繁忙期と閑散期の勤務時間を平均して、1か月の法定労働時間の範囲内に収める制度です。シフトのパターンを事前に定め、就業規則と協定書に明確に記載しておくことが必要です。
  • フレックスタイム制
    コアタイム・フレキシブルタイムを設定し、清算期間内の総労働時間を基準に残業時間を判断します。清算期間の合計労働時間が法定労働時間を超えた部分に、時間外労働として割増賃金を支払います。

これらの制度は、36協定や変形労働時間制に関する協定の締結・届出など、法律上の手続きが求められます。社会保険労務士など専門家の監修のもとで導入・運用することが望ましいでしょう。

振替休日と代休の違い/割増の要否

パートに休日出勤を依頼する場合、「振替休日」と「代休」の違いを理解しておくことも重要です。

  • 振替休日
    あらかじめ休日とする日と勤務日を入れ替えることをいいます。事前に就業規則や雇用契約で振替のルールを規定し、具体的な日を特定して振り替えれば、その日は休日労働とならず、休日手当の割増賃金は不要です。
  • 代休
    先に法定休日に出勤させ、その代償として別の日に休みを与えることです。この場合、法定休日に行った休日労働は、休日手当の対象となります。代休を与えたからといって、休日手当の支給義務が消えるわけではありません。

現場では、この2つの概念を混同しやすく、「代休を取ったから休日手当は不要」と誤解されるケースもあります。就業規則に用語とルールを整理して記載し、人事部から従業員へ丁寧に解説しておくことが重要です。

固定残業代(みなし)導入時の適法運用

固定残業代(みなし残業代)をパートに適用する企業もありますが、法律上の要件を満たさないと違法と判断される可能性があります。主なポイントは以下のとおりです。

  • 固定残業代の時間数と金額を明確に区分して記載すること
  • 固定残業時間を超える時間外労働が発生した場合には、超過分の残業代を別途支給すること
  • 固定残業代を含めても、最低賃金以上の水準を確保すること
  • 雇用契約書や給与明細で、基本給と固定残業代を明確に区分して表示すること

これらの条件を満たさず、単に給与の一部を「みなし」としているだけのケースでは、裁判所から違法と判断されるリスクがあります。社会保険労務士や弁護士と協議の上で、制度導入の是非を検討しましょう。

適用除外の範囲(管理監督者 等)

労働基準法では、一部の「管理監督者」について、時間外・休日労働に関する規定の適用除外が認められています。しかし、役職や肩書が「店長」「リーダー」であるだけでは管理監督者とはみなされません。権限・給与・勤務実態などを総合的に判断する必要があります。

パートや短時間勤務の従業員が管理監督者に該当するケースは非常にまれです。深夜手当については、管理監督者であっても適用除外とはなりませんので、22時以降の勤務には深夜手当を支給する必要があります。

残業時間の上限規制と36協定(義務と手続)

パートの残業代を正しく支払うだけでなく、「そもそもどこまで時間外労働をさせられるのか」という上限規制を理解し、残業時間をコントロールすることも重要です。

上限規制のルール(特別条項を含む)

時間外労働の上限は、原則として以下のとおりです。

  • 月45時間以内
  • 年360時間以内

これを超える時間外労働をさせるには、「臨時的な特別の事情」がある場合に限り、特別条項付き36協定を締結する必要があります。その場合でも、

  • 時間外労働+休日労働の合計が、1か月で100時間未満
  • 2〜6か月平均で80時間以内

といった制限が設けられており、短期間であっても過度な長時間労働をさせないようにルールが整備されています。パートを含めた全従業員の勤務時間を合計し、健康確保措置(医師面談など)とも連動させた管理が求められます。

36協定:締結から届出・更新まで

時間外労働や休日労働をさせるためには、労働者代表とのあいだで36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ることが法律上の義務です。

主な流れは次のとおりです。

  1. 労働者代表の選出
    正社員・パート・アルバイトを含む従業員から、公正な手続きで代表者を選出します。
  2. 協定内容の協議・締結
    対象となる業務・事業場、対象労働者の範囲、延長できる時間の上限、法定休日労働の有無などを定め、協定書を作成・締結します。
  3. 労働基準監督署への届出
    所定の様式で36協定届を作成し、管轄の労働基準監督署へ提出します。近年は、厚生労働省や都道府県労働局のサイトから、電子申請での届出も可能となっています。
  4. 周知・更新
    有効期間を定め、期間満了前に更新手続を行います。就業規則や職場掲示等で、協定内容を従業員に周知しておくことも重要です。

36協定の内容が、実際の勤務時間の管理と乖離していると、協定違反として指摘される可能性があります。勤怠データを定期的に確認し、必要に応じてシフトや業務量の見直しを行いましょう。

シフト設計と工数コントロール

残業時間の上限規制を守るためには、単に「残業を禁止する」だけでなく、シフトと業務の設計を工夫して工数をコントロールすることが重要です。

  • 繁閑差を踏まえたシフトパターンの選択
    曜日や時間帯ごとの来客数・入電数などのデータをもとに、必要な人数を算出し、パート・アルバイト・正社員の配置を組み合わせてシフトを組みます。
  • 勤務時間帯ごとの人材配置
    深夜や休日の時間帯は割増賃金が発生するため、「どの時間帯を誰に担当してもらうか」を明確に決めることで、賃金コストと人材の負担のバランスを取ります。
  • 採用計画との連動
    恒常的に残業時間が上限に近い状態が続いている場合は、新たなスタッフの採用や雇用形態の見直しも検討しましょう。人材不足を残業で補う運用を続けると、離職率が上がり、結果的に採用コストが増加する悪循環に陥りかねません。

実務対応:就業規則・雇用契約・勤怠の整備

ここまで見てきたルールや計算方法を職場で実装するためには、就業規則・雇用契約書・勤怠管理の3点をセットで整備することが重要です。

雇用契約/労働条件通知:記載のポイント

パートの雇用契約書や労働条件通知書には、次のような項目を明確に記載します。

  • 勤務時間帯(始業・終業時刻)と1日・1週間の所定労働時間
  • 休憩時間とその取り方
  • 所定外労働・時間外労働の有無と依頼方法
  • 賃金の種類(時給・日給・月給)と計算方法
  • 残業代・深夜手当・休日手当など割増賃金の計算方法
  • 給与の締切日・支給日
  • 休日・休暇の種類と法定休日の位置づけ
  • 就業規則が適用される旨と閲覧方法

これらを明確にしておくことで、「思っていた条件と違った」というトラブルを防ぎ、採用後の定着率を高めることにもつながります。PCで出力できるテンプレートを用意しておき、都道府県労働局や厚生労働省が公開しているひな形も参考にするとよいでしょう。

勤怠の適正把握(ガイドライン準拠)

残業代の未払いを防ぐうえで最も重要なのが、勤務時間の適正な把握です。厚生労働省のガイドラインでは、以下のような方法が推奨されています。

  • タイムカード・打刻機・PCやスマホアプリによる客観的な記録
  • 出退勤時刻だけでなく、休憩時間や中抜けの管理
  • 研修・ミーティング・指示による自宅学習など、指揮命令下にある時間の把握
  • 在宅勤務や複数店舗勤務など、業種や職場事情に応じた管理方法の統一

勤怠データを合計し、残業時間・休日労働・深夜労働の時間を自動で集計できるシステムをご利用いただくと、人事部や店舗マネジャーの負担も軽減されます。無料トライアルがある勤怠管理サービスを試し、職場に合った方法を選択するとよいでしょう。多くのサービスは会員登録だけでご利用を開始できるため、導入前に操作感や集計方法を確認しておくと安心です。

業種別の注意点(小売・飲食・物流・コールセンター等)

パートの勤務形態や時間帯は、業種によって大きく異なります。例えば、以下のような違いがあります。

  • 小売・飲食
    夕方〜深夜のシフトが多く、深夜労働の割増賃金がコストの大きな要素になります。
  • 物流・倉庫
    早朝や深夜の時間帯に荷受け・仕分けが集中し、長時間労働になりがちなケースもあります。
  • コールセンター・サポート事務所
    シフト制での時間労働が多く、繁忙時間帯に合わせた人員配置と残業時間のコントロールが重要です。

業種ごとの特徴を踏まえて就業規則やシフト運用を設計し、パートやアルバイトの勤務時間と割増賃金のコストを見積もることが、人事・労務戦略と採用計画を立てるうえで不可欠です。

社会保険(短時間労働者)の適用拡大と連動管理

短時間労働者に対する社会保険(厚生年金・健康保険)の適用拡大も、パートの勤務時間や給与と密接な関係があります。一定の条件(週の所定労働時間・月額賃金など)を満たすパートについては、社会保険の加入義務が発生します。

  • 週20時間程度以上勤務
  • 月額賃金が一定額以上
  • 雇用期間の見込みが2か月を超える 等

残業やシフト増により、結果的に社会保険の適用要件を満たすようになったパートについては、早めに加入手続きを進める必要があります。勤怠と給与、社会保険、採用条件のすべてを連動させて管理することで、法律違反や未払い保険料のリスクを防げます。

最低賃金と割増の関係(都道府県別の把握)

残業代の割増賃金を計算する際は、時間外労働分や固定残業代を除いた通常の賃金が、都道府県別の最低賃金を下回らないかどうかも確認が必要です。通常時給が最低賃金ぎりぎりの場合、固定残業代の導入や手当の付け方によっては、固定残業代等を除いた賃金が最低賃金を下回る「違反」となる可能性があります。

最低賃金は毎年見直されており、日本全国の水準や発効日は厚生労働省や都道府県労働局のサイトで確認できます。賃金制度やシフトパターンを見直す際には、最新情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士に相談しましょう。

パートの残業代についてよくあるQ&A(企業が直面するケースを解説)

最後に、採用・求人現場や職場の相談窓口によく寄せられる質問を、Q&A形式で解説します。

パートに残業を依頼できる条件/断られるケース

Q. パートに残業を依頼することはできますか。断られた場合はどう対応すべきでしょうか。

A. 36協定を締結し届け出ていること、就業規則や雇用契約に時間外労働の可能性や依頼方法を記載していることが前提条件です。さらに、家庭や通学など個々の事情にも配慮し、合理的な範囲での依頼にとどめる必要があります。
雇用契約やシフト募集時に「残業あり/なし」や「1日○時間まで」などの条件を明示しておけば、採用後のトラブルを減らせます。

シフト変更・応援要請時の割増判定

Q. 急な欠勤で、別店舗からパートに応援に来てもらうとき、残業代や休日手当はどう考えればよいですか。

A. 元のシフトと変更後のシフトを通算した勤務時間が、1日8時間・週40時間を超えるかどうか、また法定休日に該当していないかを確認する必要があります。応援先の勤務時間だけを見るのではなく、全体の勤務時間を合計して判断しましょう。

休憩未取得・付与不足の扱い

Q. 忙しくて休憩時間を十分に取れなかったパートがいた場合、どのように対応すべきでしょうか。

A. 法定休憩時間を付与できなかった場合、その時間も労働時間として扱われます。結果として残業時間や割増賃金の対象が増える可能性がありますので、勤務時間と休憩時間の管理を見直すとともに、休憩を確実に取れるようなシフト・業務配分に改善することが重要です。

交通費・手当と割増の母数

Q. 交通費や各種手当は、残業代の割増賃金を計算する際の「母数」に含める必要がありますか。

A. 労働基準法上、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当の範囲は限定されています。通勤手当や住宅手当など、一部の手当は除外できますが、それ以外の多くの手当は基礎賃金に含める必要があります。就業規則や給与規定で手当の定義と支給条件を整理し、社会保険労務士に確認すると安心です。

まとめ(経営・労務の実装ポイント)

最後に、パートの残業代・割増賃金をめぐるポイントを整理します。

  1. 用語とルールの理解
    所定労働時間と法定労働時間、時間外労働・休日労働・深夜労働の定義と割増率を正しく理解することが出発点です。
  2. 36協定と上限規制の順守
    時間外労働をさせるには36協定の締結と届出が必要であり、月45時間・年360時間などの上限規制を守ることが重要です。特別条項付き協定を結ぶ場合も、月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内といった制限を意識しましょう。
  3. 勤怠の適正把握
    PCやスマホ、打刻機などを活用して勤務時間を客観的に記録し、残業時間・休日労働・深夜労働を正確に把握します。ガイドラインに沿った管理を行うことで、未払いリスクを大きく低減できます。
  4. 就業規則・雇用契約の整備
    就業規則や雇用契約書に、勤務時間・休憩・休日・割増賃金・固定残業代などを明確に記載し、従業員にわかりやすく説明します。社会保険労務士監修のひな形を参考にするのも有効です。
  5. 未払いを出さない計算と監査の運用
    給与計算のロジックと勤怠データを定期的に点検し、未払いの兆候を早期に発見・対応します。必要に応じて外部専門家からの回答やアドバイスを受け、社内の労務管理レベルを継続的に高めていきましょう。
  6. 採用・人材戦略との連動
    パートの残業代や社会保険、最低賃金の水準は、人材採用・定着・職場環境の整備とも密接な関係があります。残業に頼らないシフト設計と適正な賃金水準を実現することで、求人市場における競争力も高められます。

パートの残業代のルールは一見複雑ですが、基本的な考え方と計算方法を理解し、就業規則・雇用契約・勤怠管理を一体で整えることで、実務運用は大きく安定します。自社の業種・規模・職場の事情に合わせて、無理なく運用できる仕組みづくりを進めていきましょう。

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本記事は、シェアフル株式会社内の弁護士が監修のもとで記事内容の正確性・法的妥当性を確認しています。

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