【令和7年版】扶養控除申告書の提出が必要ない人とは?企業担当者が知っておくべき提出基準と対応ポイント

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企業の人事・労務担当者にとって、扶養控除申告書の提出要否の判断は年末調整や源泉徴収の正確性に直結する重要な業務です。とくに、従業員の雇用形態が多様化し、副業・ダブルワーク・短期雇用者が増えるにつれ、「誰に提出を依頼すべきか」「どの従業員は提出が不要なのか」という判断が難しくなっています。

扶養控除申告書は、正式には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」といいます。給与の支払を受ける人(給与所得者)が、扶養控除などの諸控除を受けるために行う手続のために必要なものであり、給与所得者の配偶者や扶養親族の状況、合計所得金額の見積額などを基に、所得税および住民税の計算に必要な情報を勤務先へ申告するための書類です。提出の有無は、源泉徴収税額の算定や年末調整の実施可否に大きな影響を与えます。

本記事では、国税庁の定めるルールを踏まえながら、以下のような観点で扶養控除申告書の取り扱いを整理します。
・提出が必要な従業員
・提出が不要となる従業員
・提出期限の考え方
・提出漏れが発生した場合の影響
・実務で起きやすいケース別判断
・企業側の管理フローや注意点

多様な雇用形態の従業員を抱える企業でも、提出要否を正確に判断し、税務リスクを回避できるよう実務対応をわかりやすく解説します。

目次

結論:主たる勤務先が自社ではない従業員などからの提出は必要ない

国内において給与の支給を受ける居住者は、原則として扶養控除申告書を提出する必要があります。しかしながら、給与の受け取り先が2か所以上ある方は、生活費の中心となる給与である「主たる給与」を受け取る「主たる勤務先」を選び、そこにのみ提出することとなります。また他にも、年の途中で退職した方や、国内に居住していない方などは提出する必要がありません。

具体的には、以下のような従業員からの提出が不要となります。

・他社に主たる給与の支払者(主たる勤務先)があり、自社は従たる勤務先に該当する従業員
・スキマバイトなどで源泉徴収税額表の丙欄を適用する、雇用契約が2か月以内の従業員
・非居住者として取り扱われる従業員
・その年の途中で退職し、以降は自社から給与の支払が発生しない従業員

こうした従業員に扶養控除申告書を提出してもらっても、企業側の年末調整・給与計算では基本的に利用されないため、現場の負担を増やすだけになってしまいます。それだけにとどまらず、二重の控除申告となり、後々の是正や精算が必要になる可能性もあるため注意が必要です。

参照:国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm

参照:国税庁「no.2514 パートやアルバイトの源泉徴収」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2514.htm

年の途中で転職した場合の扱い

年の途中で転職した場合、扶養控除申告書は「新しい勤務先」に提出する必要があります。前職で既に扶養控除申告書を提出していたとしても、退職後にその効力は事実上なくなり、現職の勤務先が新たに主たる給与の支払者になります。

転職先の企業は、入社手続きのタイミングで扶養控除申告書を配布し、「最初の給与の支払日の前日まで」に提出してもらうよう案内しましょう。その際、前職の源泉徴収票の提出も同時に依頼し、年末調整で今年分の給与収入を合算できるようにしておくことが重要です。

主たる勤務先が自社である従業員は原則提出が必要

主たる勤務先に扶養控除申告書を提出した従業員は、源泉徴収税額表の「甲欄」が適用されることが一般的で、基礎控除や扶養控除、配偶者控除などが源泉徴収税額の計算に反映されます。年末調整時には、年間の給与収入や各種保険料(社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除など)、住宅借入金等特別控除の有無、退職所得の有無、公的年金等の雑所得なども含めて、別途提出される保険料控除申告書などの情報も合わせて、最終的な税額が計算されます。

参照:国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2511.htm

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扶養控除申告書とは?企業が正しく理解すべき基本概念

まずは、扶養控除申告書の基本を押さえておきましょう。扶養控除申告書は、居住者である給与所得者が、その年の所得税や住民税の計算に必要な「所得控除の情報」を勤務先の企業へ申告するための書類です。控除の対象となる配偶者や扶養親族の有無、生計が一かどうか、年間の合計所得金額の見積額、障害者や勤労学生に該当するかどうかなどの事項が記載され、それに基づいて給与の源泉徴収税額が決まります。

参照:国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm

企業側から見ると、扶養控除申告書は給与計算・年末調整・源泉徴収票作成・住民税の課税情報など、さまざまな業務の起点となる書類です。正社員だけでなく、条件次第ではアルバイト・パート・スキマバイトユーザーも対象となる可能性があるため、採用の段階から丁寧な案内が求められます。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の正式名称と位置づけ

扶養控除申告書の正式名称は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。毎年、国税庁がその年の様式と記載要領、記入例を公表しており、企業はそれをベースに従業員へ配布します。この申告書は住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」を兼ねているため、税金計算上は所得税と住民税の両方に影響を与える重要な書類です。

書類には、従業員本人の氏名、住所、生年月日、個人番号(マイナンバー※記載不要のケースもあります)、勤務先名、給与支払者の情報、配偶者や扶養親族の情報、各種控除の適用状況などが記載されます。企業側は従業員から提出を受け、内容を確認したうえで社内に保管し、税務署や市区町村から求められた場合に提示できるよう管理しなければなりません。

参照:国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2511.htm

この書類が年末調整や所得税処理に与える影響

扶養控除申告書は、年末調整や源泉徴収の計算の出発点となります。従業員の給与収入(給与所得)に対して、給与所得控除や基礎控除、各種所得控除(扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、寡婦控除、ひとり親控除、障害者控除、勤労学生控除など)を適用できるかどうかは、この申告内容に基づいて判断されます。

具体的には、毎月の給与支払時に源泉徴収税額表(甲欄・乙欄・丙欄)のどの区分を適用するか、年末調整で最終的な税額をどう算出するか、過不足の精算や還付をどう行うか、といった部分に直結します。記載誤りや提出漏れがあると、税額の過不足、確定申告の必要性、源泉徴収票の再発行、従業員からの苦情など、企業側にとっても負担の大きい問題を引き起こします。

参照:国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2511.htm

扶養控除申告書の提出期限と企業の管理対応

提出期限を守ってもらうことは、企業にとって極めて重要です。期限を過ぎてからの提出は、源泉徴収額の修正や年末調整のやり直しにつながり、管理コストが大きく膨らみます。ここでは、提出期限の考え方と、企業が取るべき管理対応を整理します。

提出期限:入社時・年初・転職時などの基準

扶養控除申告書の提出期限は、原則として「従業員がその年の最初に給与の支払を受ける日の前日まで」です。新たに入社した従業員(中途就職)の場合は、「入社後、従業員が最初の給与の支払を受ける日の前日まで」が期限になります。

また、一度提出した後でも、結婚・離婚・出産・死亡・同居老親との同居開始・子どもの留学・親族の国外転出・介護認定・学生から勤労学生への区分変更など、家族構成や扶養親族の状況や、その他申告書の記載内容に異動があった場合には、「その異動の日後、最初に給与の支払を受ける日の前日まで」に異動の内容等を記載した申告書の提出が必要です。

参照:国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2511.htm

未提出の場合の影響と企業側リスク

「扶養控除申告書を提出しなかった場合、どうなる?」という質問は従業員からもよく寄せられますし、企業としても影響を理解しておく必要があります。

所得税・源泉徴収額の過不足リスク

期限までに扶養控除申告書が提出されない場合、その従業員については源泉徴収税額表の乙欄を適用することになります。基礎控除や扶養控除、配偶者控除などが考慮されない前提で計算されるため、同じ給与収入でも甲欄適用者と比べて手取りが少なくなります。

また、扶養控除申告書がないと年末調整が行えないため、その従業員には確定申告を行って税額の精算(還付など)を受けるよう案内が必要です。「会社が年末調整をしてくれると思っていた」という誤解から、企業への不満につながることもあります。

企業側にとっても、源泉徴収票の説明や確定申告の案内、年末調整対象外者の管理といった業務が増え、労務・人事担当者の負荷が高まります。場合によっては、税務署から提出状況や保管状況の確認が入る可能性もあり、管理体制の不備が指摘されるリスクもゼロではありません。

参照:国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2511.htm

提出漏れ防止の社内フロー構築

提出漏れを防ぐためには、社内フローの整備が不可欠です。例えば、次のようなステップで運用する企業が増えています。

・入社時に採用担当が扶養控除申告書を配布し、必要事項の記入方法(書き方)と提出期限を説明する
・年初や年末調整のタイミングなど、特定の時期に全従業員に更新版の様式を配布・送付し、前年との違い(変更点)や注意事項を周知する
・人事・労務担当が回収状況を一覧で管理し、提出期限の1週間前、3日前、前日にリマインドメールを送る
・未提出者には上長経由で個別フォローを行い、最終的に乙欄適用となる場合は影響(税額が多く天引きされること、年末調整ができず確定申告が必要になること)を説明する
・提出された書類は、内容チェック(空欄の有無、合計所得金額の記載漏れ有無、続柄や生年月日の整合性など)を行ってから給与計算システムへ登録する

こうしたフローを就業規則や社内規定に明記し、担当者だけでなく現場の管理者にも共有しておくと、運用が安定しやすくなります。

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扶養控除申告書に関する税制・控除内容の基本

提出の要否だけでなく、扶養控除申告書に記載される「控除」の内容を理解しておくことも重要です。企業側は税額の最終決定者ではありませんが、誤った記載をそのまま受け入れてしまうと、後から修正や確定申告が必要になり、結果的に従業員にも負担をかけてしまいます。

主な控除の種類と対象

扶養控除申告書に関連する主な控除は、次のようなものがあります。

・基礎控除:全ての納税者が対象となる基本的な控除で、合計所得金額が一定額を超えると控除額が減少します。
・扶養控除:従業員と生計を一にする16歳以上の親族がいる場合に適用される控除で、特定扶養親族や老人扶養親族など、年齢や同居の有無により控除額が変わります。
・配偶者控除・配偶者特別控除:生計を一にする配偶者(同一生計配偶者)の合計所得金額が一定の範囲内である場合に適用される控除です。配偶者特別控除は、配偶者の所得が一定以上の場合に段階的に控除額が変動します。
・寡婦控除・ひとり親控除:配偶者との死別・離婚や未婚で子どもを養育している場合など、一定の条件を満たす納税者に適用される控除です。
・障害者控除:本人・同一生計配偶者・扶養親族が障害者に該当する場合に適用される控除で、特別障害者や同居特別障害者など区分に応じて控除額が異なります。
・勤労学生控除:学生で一定の給与収入・合計所得金額の範囲内にある場合に適用される控除です。

これらの控除の適用可否は、扶養控除申告書の各項目に正しく記入されているかどうか、収入金額・所得金額の見積額が妥当かどうかによって決まります。

参照:国税庁「各種控除について(給与所得者用)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2021/pdf/94.pdf

控除対象者の判定と確認ポイント

企業側がチェックする際のポイントとしては、次のようなものが挙げられます。

・扶養親族や配偶者の生年月日、住所、続柄が正しく記載されているか
・同居か別居か、国内か国外か、留学や単身赴任などの状況を含め、生計を一にしているかどうかの事実関係
・収入金額や合計所得金額の見込みが、勤務先や職種、公的年金の受給状況などから見て大きく乖離していないか
・同一生計配偶者に、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者が含まれていないか
・国外居住親族を扶養控除の対象とする場合、親族関係書類や送金関係書類、必要に応じて38万円以上の送金を証明する書類が用意される見込みかどうか(30歳以上70歳未満且つ、所定の条件を満たす必要があります)

参照:「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/kokugai/index.htm

もちろん、最終的な判定や申告内容の責任は従業員本人(申告者)にありますが、企業として明らかに不自然な記載に気づいた場合は、本人に確認を行い、必要に応じて国税庁や税務署の情報をご覧いただくよう案内することが望ましいでしょう。

参照:「令和7年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/2025bun_01.pdf

【ケース別】扶養控除申告書が不要となる代表的パターン

ここからは、実務上よく問題となる「提出不要」パターンをケース別に整理します。採用や入社手続きの場面で、この判断を誤ると後から修正が難しくなるため、人事・労務担当者は代表的なケースを押さえておきましょう。

副業・ダブルワークで他社に主たる給与がある場合

副業やダブルワークをしている従業員の場合、「どの勤務先が主たる給与の支払者か」を最初に確認する必要があります。主たる給与の勤務先には扶養控除申告書の提出が必要ですが、従たる給与の勤務先では提出は不要です。

自社が従たる勤務先であるにもかかわらず、扶養控除申告書を受け取ってしまうと、結果として複数の勤務先に同じ控除申告が行われることになり、税務上の問題が生じます。これを防ぐために、入社時に「主たる勤務先の有無」「他社での扶養控除申告書提出の有無」を確認するチェック項目を設けておくと安心です。

年の途中で退職した場合

年の途中で退職した従業員については、退職後に自社から給与の支払がない限り、退職後に新たに扶養控除申告書を提出してもらう必要はありません。退職までに支払った給与については、源泉徴収票を発行して本人へ交付し、本人が新しい勤務先で年末調整をするか、あるいは自ら確定申告を行うことで税額が確定します。

企業としては、退職時に源泉徴収票の交付時期や確定申告の必要性、退職所得や住宅ローン控除などとの関係を簡単に案内しておくと、後々の問い合わせを減らすことができます。

短期雇用・スキマバイトなど一時的雇用の場合

1日ごとに雇用契約を結ぶような短期雇用や、日額表の丙欄を適用するスキマバイトなどでは、扶養控除申告書の提出は原則不要です。これらの方は、主たる勤務先が別にあり、自社は短期・副次的な就業先に過ぎないケースが多くなります。

ただし、当初は短期の予定であっても、その後2か月を超える勤務が見込まれるようになった場合には、丙欄から甲欄への切り替えと同時に扶養控除申告書の提出を依頼する必要があります。勤怠やシフトのデータと給与計算を連携させ、一定の勤務日数や在籍期間を超えた方に自動的にアラートが出るようにしておくと、切り替え漏れを防ぎやすくなります。

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扶養控除申告書の管理・回収・保管の実務

ここからは、企業側の実務として、扶養控除申告書をどのように配布・回収・保管するかを整理します。スキマバイトを含む多様な雇用形態を扱う企業ほど管理対象となる従業員数が多くなり、紙ベースの運用では限界が見えやすくなります。

書類の配布・回収フロー

基本的なフローは次の通りです。

・入社時:雇用契約書や社会保険の書類とあわせて扶養控除申告書を配布し、提出期限と記入方法を説明する
・年初や年末調整などの時期:在籍する全従業員(主たる給与の支払者に該当する人)に新しい年度の様式を配布・送付する
・異動時:結婚や出産、死亡、同居老親との同居開始、離婚、子どもの留学や国内外での転居など、扶養関係に変化があった場合に、異動届として再提出してもらう
・回収:人事・労務担当が一覧表や管理ツールで回収状況を管理し、提出期限前に複数回リマインドを行う
・内容チェック:必要事項が記載されているか、空欄や明らかな誤記がないかを確認し、不明点は従業員に問い合わせる

このフローをテンプレート化し、年ごとの様式変更があっても、運用を変えずに済むようにしておくと効率的です。

電子申請・クラウド管理の導入メリット

近年は、クラウド給与・年末調整ツールを活用し、扶養控除申告書の作成・提出をオンラインで完結させる企業が増えています。

電子化のメリットとしては、次のような点が挙げられます。

・従業員がスマートフォンやパソコンから入力でき、入力チェック機能により空欄や桁数ミスを自動検出できる
・国税庁の最新様式や記入例に沿ったレイアウトが自動で反映されるため、記載誤りが減る
・人事/労務担当が回収状況をリアルタイムで把握でき、未提出者へのリマインドもシステム上でまとめて実施できる
・給与計算システムと連携し、控除額の自動計算や源泉徴収税額の算出、年末調整計算まで効率化できる
・紙の書類に比べて保管スペースが不要になり、バックアップやアクセスログの管理も容易になる

動画マニュアルやオンラインヘルプを組み合わせることで、はじめて扶養控除申告書を作成する従業員にもスムーズにご利用いただけるようになります。

保存期間と個人情報管理の注意点

扶養控除申告書は、税務調査や市区町村からの照会に備えて、「申告書等の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間」保存する必要があります。その間は個人番号(マイナンバー)や住所、生年月日などの個人情報を適切に守らなければなりません。

紙で保管する場合は、施錠可能なキャビネットで管理し、閲覧権限を人事・労務・経理など必要最小限の担当者に限定します。電子データで保管する場合は、アクセス権限の設定、パスワード管理、暗号化、アクセスログの記録などを通じて、情報漏えいのリスクを低減します。

また、保管期間が終了した書類は、シュレッダーや専用の廃棄サービスを利用して、第三者が内容を復元できない形で廃棄することが大切です。

提出要否の判断フロー

ここまでの内容を踏まえ、企業担当者が現場で迷わないための「提出要否の判断フロー」を簡単にまとめておきます。

提出が必要な従業員の条件

一般的には、次の条件を満たす従業員は扶養控除申告書の提出が必要と考えてください。

・国内において給与の支給を受ける居住者である
・自社がその従業員にとっての主たる給与の支払者である

これらに該当する従業員については、入社時や年初に扶養控除申告書の提出を依頼し、期限までに回収することが重要です。

参照:国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2511.htm

提出が不要な従業員の条件

一方、次のような従業員については、扶養控除申告書の提出が不要となるケースが多くなります。

・他社が主たる給与の支払者であり、自社は従たる給与の支払者である
・日々雇用やごく短期のスキマバイトなどで丙欄を適用する従業員であり、2か月を超えた継続雇用の予定がない
・非居住者として取り扱われる

・その年の途中で退職し、以降自社から給与の支払がない

ただし、短期雇用から長期の継続雇用へ切り替わる場合や、主たる勤務先が途中で変わる場合など、条件が変われば提出が必要になる可能性があります。定期的な情報更新とチェックが欠かせません。

扶養控除申告書に関するよくある質問(FAQ)

最後に、企業の人事・労務担当者からよく寄せられる質問をQ&A形式で整理します。現場マニュアルや社内ポータルに転載しておくことで、担当者間の認識をそろえることができます。

アルバイト・パート従業員も提出は必要?

雇用形態(正社員・アルバイト・パート)にかかわらず、その勤務先が主たる給与の支払者であり、居住者として扱われる場合には、扶養控除申告書の提出が必要です。逆に、他社で主たる給与を得ており、自社が従たる勤務先である場合には、扶養控除申告書の提出は不要で、乙欄での源泉徴収が行われます。

スキマバイトで採用した人も提出は必要?

スキマバイトとして短期間だけ就業する方であっても、自社がその人にとっての「主たる給与の支払者」になる場合は提出が必要です。一方で、多くのスキマバイトは以下のようなケースが多いため、扶養控除申告書の提出が不要となる場合があります。

・別の勤務先で継続的に給与を受けている

・あくまで短期・単発の従たる収入としてはたらいている

・日々雇用・日額での支払いとなり「丙欄」を適用する

扶養控除申告書の対象者は?

扶養控除申告書の対象者は、「企業から給与の支払を受ける居住者」のうち、その企業が主たる給与の支払者である従業員です。具体的には、正社員だけでなく、条件を満たすアルバイトやパート、契約社員、スキマバイトなども含まれます。非居住者や従たる給与の従業員、日々雇用で丙欄を適用する従業員などは対象外となるのが一般的です。

提出後に扶養関係が変わった場合は?

扶養控除申告書は一度提出したら終わりではなく、途中で状況が変わった場合には「異動」として再度申告する必要があります。結婚や離婚、配偶者の死亡、子どもの出生や死亡、同居老親との同居開始・終了、国外居住親族の帰国や転居、学生から勤労学生への切り替え、公的年金の受給開始など、合計所得金額や扶養親族の状況に影響する出来事があった場合には、異動の日の後、最初に給与の支払をする日の前日までに再提出してもらいましょう。

扶養控除申告書を出さない社員はどうなる?

扶養控除申告書を提出しない従業員については、企業は乙欄で源泉徴収を行い、年末調整は実施しません。そのため、その従業員は自分で確定申告を行い、税額の確定や還付を受ける必要があります。

そのため、事前に「提出しない場合は税額が多く天引きされる可能性があること」「年末調整が行われないため、確定申告が必要になること」を説明しましょう。

まとめ:扶養控除申告書の提出要否を正しく判断し、企業リスクを防ぐ

扶養控除申告書は、単なる年末調整の書類ではなく、給与計算・源泉徴収・住民税・社会保険との関係を含め、企業の労務・税務実務のベースとなる重要な書類です。

誰に提出を依頼するのか(対象者)、どのような条件で提出が必要ないのか(提出不要なケース)、提出期限はいつか(最初の給与支払日の前日など)、提出しないとどうなるのか(乙欄適用、確定申告の必要性)、といったポイントを社内で共有し、運用フローを標準化することで、従業員の税負担の過不足や年末調整のやり直し、税務署からの指摘といったリスクを大きく減らすことができます。特に、スキマバイトや副業としてはたらく方を多く採用している企業では、従たる給与の扱いや短期雇用から長期雇用への切り替えタイミングなど、判断が難しいケースが日常的に発生します。そのため、会計ソフト、国税庁や税務署の情報、人気の動画解説なども活用しながら、自社の実情に合った運用ルールを作成・実施し、はたらく人材と企業の双方にとって安心できる年末調整・税務対応を実現していきましょう。

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本記事は、シェアフル株式会社内の弁護士が監修のもとで記事内容の正確性・法的妥当性を確認しています。

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