源泉徴収票の乙欄とは?甲欄との違いと適切な対応方法を解説

源泉徴収票には「甲欄」「乙欄」「丙欄」といった納税者区分があり、特に「乙欄」はアルバイトや副業をされている方にとって重要な知識です。この記事では、源泉徴収票の乙欄とは何か、甲欄との違い、そして適切な対応方法について詳しく解説します。
源泉徴収票の乙欄とは?甲欄との違いと正しい扱い方
源泉徴収票の「甲欄」「乙欄」「丙欄」の違い
源泉徴収票の納税者区分である「甲欄」「乙欄」「丙欄」は、それぞれ以下のように定義されています。
「甲欄」は、主たる給与所得者(本業)に適用される区分です。会社に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合に適用されます。一般的な正社員やメインの職場として働いているパートやアルバイトがこれにあたります。
「乙欄」は、従たる給与所得者(副業など)に適用される区分です。「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない場合に適用されます。副業やスキマバイト、掛け持ちアルバイトなど、メインの職場以外で得る収入に対してこの区分が適用されることが多いです。
「丙欄」は、日雇労働者(日給や時間給で働く短期労働者)に適用される区分です。継続して2ヶ月を超えない期間を定めて雇用される労働者が対象となります。
乙欄が適用される具体的なケース
乙欄が適用される代表的なケースには以下のようなものがあります。
- 副業・複数の仕事を掛け持ちしている場合:本業以外の職場では「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していないため、乙欄が適用されます。
- 短期雇用やスキマバイト:短期間のアルバイトやスポット的な仕事では、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しないことが多く、乙欄扱いとなります。
- アルバイト・パートを複数掛け持ちしている場合:複数のバイト先がある場合、一つをメインとして「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、それ以外は乙欄となります。
- 退職後の再雇用:退職後に同じ会社で短期的に働く場合など、「給与所得者の扶養控除等申告書」を再提出していない場合は乙欄扱いとなります。
- フリーランスの一部の仕事:業務委託ではなく雇用契約で受ける仕事がある場合、乙欄が適用されることがあります。
源泉徴収票の乙欄が適用される条件

源泉徴収票の乙欄が適用される主な条件は以下の通りです。
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない:これが最も基本的な条件です。通常、一か所の勤務先にしか申告書を提出できないため、それ以外の勤務先では自動的に乙欄が適用されます。
- 他に主たる給与所得がある場合:既に別の場所で本業があり、そちらに「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合は、他の勤務先では乙欄が適用されます。
- 雇用期間が短い場合:短期のアルバイトや臨時の仕事では、手続きの簡略化のために乙欄が適用されることが多いです。
- 勤務先に源泉徴収義務がある場合:支払いを受ける金額が一定以上(月額88,000円以上など)の場合は、源泉徴収の対象となり、申告書を提出していなければ乙欄が適用されます。
源泉徴収税額表の見方と使い方
給与所得の源泉徴収税額表(月額表)の見方
給与所得の源泉徴収税額表(月額表)は、毎月の給与から源泉徴収する所得税額を計算するための表です。使い方は以下の通りです。
- まず、月々の給与の総支給額を確認します。
- 源泉徴収税額表の「甲欄」または「乙欄」を選択します。
- 給与の総支給額に該当する行を見つけます。
- 扶養親族等の数に応じた列を確認し、その交点にある金額が源泉徴収税額となります。
乙欄の場合、扶養控除がないため、一律で税額が決まります。乙欄は甲欄よりも一般的に高い税率が適用されるため、同じ給与額でも乙欄の方が源泉徴収される税額は多くなります。
給与所得の源泉徴収税額表(日額表)の見方
給与所得の源泉徴収税額表(日額表)は、日給や時給で支払われる給与の源泉徴収税額を計算するための表です。使い方は月額表と似ていますが、日々の給与に対して適用します。
- 日給または時給に勤務時間を掛けた日々の給与額を確認します。
- 源泉徴収税額表(日額表)の「甲欄」または「乙欄」を選択します。
- 給与額に該当する行を見つけます。
- 扶養親族等の数に応じた列を確認し、その交点にある金額が源泉徴収税額となります。
日額表も乙欄の場合は扶養控除が適用されないため、一律の税額となります。スキマバイトや短期雇用の場合の多くは日額表の乙欄が適用されています。
賞与に対する源泉徴収税額の計算方法
賞与に対する源泉徴収税額の計算は、通常の給与とは異なる方法で行われます。
- 甲欄の場合:支給月の前月に支払われた給与額と、扶養親族等の人数に基づいて、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(国税庁)」から該当する税率(算出率)を求め、それをもとに計算します。具体的には、その算出率を賞与額に掛けて、源泉徴収税額を算出します。
- 乙欄の場合:賞与に対しては一律20.42%(復興特別所得税を含む)の税率が適用されます。これは甲欄に比べて高率であり、税負担が大きくなります。
- 計算例:
- 甲欄で月給30万円、扶養家族2人の場合の10万円の賞与:約4,200円の源泉徴収
- 乙欄の場合の10万円の賞与:約20,420円の源泉徴収
このように、乙欄適用の場合は賞与に対する税負担が大きくなります。
源泉徴収票の乙欄に関する注意点

源泉徴収票の乙欄適用は税負担が重くなる
源泉徴収票の乙欄が適用されると、甲欄と比較して税負担が重くなる傾向があります。これは主に以下の理由によるものです。
- 基礎控除や配偶者控除、扶養控除などの各種控除が適用されない:乙欄では「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していないため、基礎控除や扶養控除などが源泉徴収の段階で考慮されません。
- 高い税率が適用される:控除がないため、同じ給与額でも課税対象額が多くなり、結果として高い税率が適用されます。
- 賞与に対する高い源泉徴収率:前述のように、賞与に対しては一律20.42%という高い税率が適用されます。
例えば、月給20万円の場合:
- 甲欄(扶養家族2人):源泉徴収額は約2,500円程度
- 乙欄:源泉徴収額は約8,000円程度
このように、同じ給与でも乙欄適用の場合は約3倍以上の税金が源泉徴収されることがあります。
源泉徴収票の乙欄と年末調整の関係
源泉徴収票の乙欄が適用される場合、年末調整を受けることができないという重要な注意点があります。
- 年末調整の対象外:乙欄適用の給与については、勤務先で年末調整を受けることができません。これは、給与所得者の扶養控除等申告書を提出していないためです。
- 確定申告が必要:乙欄適用の給与がある場合、正確な税額を計算するためには確定申告が必要となります。複数の収入源がある場合は特に重要です。
- 還付の可能性:乙欄での源泉徴収は多めに税金を納めている場合が多いため、確定申告をすることで税金の還付を受けられる可能性が高くなります。
乙欄適用者が確定申告をする際の注意点
乙欄適用者が確定申告をする際には、以下の点に注意する必要があります。
- 全ての収入を合算する:甲欄適用の給与と乙欄適用の給与、さらにはその他の所得も含め、全ての収入を申告する必要があります。
- 源泉徴収票の確保:全ての勤務先から源泉徴収票を取得し、源泉徴収された税額を正確に申告しましょう。
- 各種控除の申請:確定申告では、基礎控除や扶養控除、社会保険料控除など、適用可能な全ての控除を申請することができます。
- 医療費控除や寄附金控除などの追加控除:年間の医療費が一定額を超える場合や寄附をした場合など、追加の控除を申請することも可能です。
- 還付金の受け取り方法の確認:還付金を受け取るための銀行口座情報を正確に記入しましょう。
- 申告期限の遵守:確定申告の期限は毎年2月16日〜3月15日です。期限を過ぎると還付が遅れる可能性があります。
源泉徴収票の納税者区分が途中で変更になった場合
乙欄から甲欄への変更手続き
乙欄から甲欄へ変更する場合、以下の手続きが必要です。
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出:勤務先の経理担当者などに申告書を提出します。これにより、甲欄適用となります。
- 他の勤務先での申告書の取り下げ:既に他の勤務先で申告書を提出している場合は、そちらでの申告書を取り下げる必要があります。給与所得者の扶養控除等申告書は一か所の勤務先にしか提出できないためです。
- 変更時期の確認:通常、申告書提出の翌月の給与から甲欄が適用されます。申告書提出のタイミングと適用開始時期を確認しましょう。
- 源泉徴収税額の変化の確認:甲欄適用後は源泉徴収税額が減少するため、手取り額が増える可能性があります。変更後の最初の給与明細で確認しましょう。
甲欄から乙欄への変更手続き
甲欄から乙欄へ変更する場合、以下の手続きが必要です。
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」の取り下げ:勤務先に申告書の取り下げを申し出ます。書面での届出が必要な場合もあります。
- 他の勤務先での申告書の提出:他の勤務先を主たる給与所得とする場合は、そちらに申告書を提出します。
- 源泉徴収税額の増加の確認:乙欄適用後は源泉徴収税額が増加するため、手取り額が減少します。変更後の給与明細で確認しましょう。
- 確定申告の必要性の理解:乙欄適用となった場合、年末調整ができなくなるため、確定申告の必要性が高まります。
丙欄から甲欄・乙欄への変更手続き
丙欄から甲欄・乙欄への変更は、雇用形態の変更に伴うことが多いです。
- 甲欄への変更:日雇労働から継続的な雇用へ変更し、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出すると甲欄適用となります。
- 乙欄への変更:日雇労働から継続的な雇用へ変更する場合、申告書を提出しない場合は乙欄適用となります。
- 雇用契約の確認:雇用期間が2ヶ月を超える場合は、自動的に丙欄から甲欄または乙欄への変更対象となります。雇用契約の内容を確認しましょう。
- 源泉徴収方法の変化の理解:丙欄から変更になると、日額表から月額表での源泉徴収に変わる可能性があります。計算方法の違いを理解しておきましょう。
まとめ
源泉徴収票の乙欄は、副業やスキマバイトなど「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない勤務先での給与に適用される納税者区分です。乙欄適用の場合、甲欄と比較して高い税率で源泉徴収され、年末調整も受けられないため、確定申告が必要となります。
特に複数の収入源がある方は、適切な納税者区分を理解し、必要に応じて確定申告を行うことで、適正な税負担と可能な還付を受けることができます。源泉徴収票の納税者区分は税負担に大きな影響を与えるため、自分の状況に合わせて最適な選択をすることが重要です。
副業やスキマバイトが一般的になっている現代では、乙欄についての知識は多くの方にとって役立つものです。この記事を参考に、適切な税務管理を行いましょう。
アルバイト・パートの採用単価を削減できるおすすめは、成果課金型の「シェアフル」
スキマバイトサービス「シェアフル」は、初期費用、掲載費用0円で、成果報酬の課金システムです。
人材採用ができていないのに、お金を払わなければいけないなどの無駄な出費を抑えることが可能です!
予算が限られている、人材採用がうまくいかないなどお悩みがございましたら、ぜひ以下より資料を確認して見てください!