パート勤務5時間に休憩は必要?企業が知っておくべきルールと注意点

「パートにはたらいてもらう時、休憩時間は必要なの?」「うちは今まで特に設けていなかったけど大丈夫?」このような疑問を持つ企業担当者も少なくありません。 人材不足が深刻化するなか、短時間勤務のパート・アルバイトスタッフの採用は、多くの企業で欠かせない存在となっています。
本記事では、労働基準法に基づいた休憩時間の基本的なルールを解説するとともに、以下の内容について、わかりやすく解説します。
- 「5時間勤務」のパート従業員に対する企業側の対応ポイント
- 休憩時間に関するメリット・デメリット
- 実務上の注意点
- 採用活動・人材管理で留意すべき事項
誤解しやすい「5時間勤務=30分休憩必要?」といった疑問にも答えながら、トラブルを未然に防ぎ、適切な職場環境づくりに貢献できる内容となっています。
【結論】5時間勤務のパートに休憩は法的に不要。ただし例外に注意!
「5時間勤務」のパートに対して、企業が休憩時間を与える法的義務はありません。
労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超える場合に「少なくとも45分間」の休憩を、8時間を超える場合には「少なくとも1時間」の休憩を与えなければならないと定められています。逆に言えば、労働時間が6時間以下であれば、法的には休憩を与える必要はないのです。
※参考:厚生労働省「労働時間・休憩・休日関係」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken02/jikan.html
しかし、実務においては「法的義務がない=全く不要」というわけではありません。たとえば以下のようなケースでは、休憩時間を設けることが望ましい、あるいは必要になることがあります。
・実質的に6時間を超える労働がある場合(着替え・準備・片付けを含むなど)
・一部の従業員から休憩を希望する声がある場合
・労働環境が過酷(立ち仕事・猛暑など)な職場環境で健康配慮が必要な場合
・人材確保・定着のために福利厚生として導入したい場合
休憩を設けないままパート従業員に連続して5時間はたらかせると、「体力的につらい」「もう少しゆとりが欲しい」などの理由で離職リスクが高まりやすくなります。法律上は義務がなくても、従業員の声に耳を傾け、必要に応じて休憩制度を柔軟に設計することが、結果として企業の人材定着・採用成功にもつながるのです。
労働基準法における休憩時間の基本ルールとは?
休憩時間が必要となる勤務時間の境界線
労働基準法第34条では、休憩時間に関して以下のような基本的ルールが定められています。
・労働時間が6時間未満の場合:休憩付与の定めなし(企業の裁量に委ねられる)
・労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合:少なくとも45分の休憩が必要
・労働時間が8時間を超える場合:少なくとも60分の休憩が必要
このルールに基づいて、企業は勤務シフトの組み方や就業規則の作成、契約書への記載を行う必要があります。
休憩の定義と目的
また、単に休憩時間を設けるだけでなく、その「与え方」にも法的なルールがあります。労働基準法における「休憩」の定義は、単なる「業務がない時間」ではありません。休憩とは労働者が完全に労働から解放され、自由に過ごすことができる時間でなければなりません。つまり、休憩中に電話当番や来客対応などを命じられている場合、それは実質的に労働時間とみなされ、休憩と認められない可能性があります。
以下では、休憩を定義するうえで重要な3つの定義を解説します。
休憩の3原則:途中付与・一斉付与・自由利用
1.途中付与の原則
休憩は「勤務時間の途中で与える」必要があります。出勤前や退勤後の時間を休憩としてカウントすることはできません。
2.一斉付与の原則
原則として、同じ職場の従業員には同時に休憩を与える必要があります。ただし、交代制勤務や業務上の必要により一斉付与が難しい場合は、労使協定を締結することで、対象外とすることができます。
3.自由利用の原則
前述の通り、休憩時間は労働者が自由に使える必要があります。会社が休憩中に電話番や掃除を命じることは、原則として認められません。
※参考:厚生労働省 愛媛労働局「休憩」
https://jsite.mhlw.go.jp/ehime-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/shurouchu/2040208.html
5時間勤務でも企業が休憩を設けるメリット・デメリット
先述の通り、5時間勤務では法的に休憩を与える義務はありません。しかし、企業があえて休憩時間を設けることには、いくつかの実務的メリットが存在します。一方で、運用面でのデメリットや注意点も無視できません。
ここでは、企業が5時間勤務に休憩を設けるかどうか判断する際に参考となる、具体的なメリット・デメリットを整理しておきます。
休憩を設けるメリット
1.体力・健康面への配慮
5時間連続ではたらくのは、体力的にきついと感じる人もいます。特に、年齢の高いスタッフや立ち仕事・接客業務など、身体への負担が大きい業務では、30分でも休憩を設けることで疲労軽減につながります。
2.従業員満足度の向上
パート・アルバイトは、待遇面の「小さな配慮」に満足度が大きく左右される傾向があります。「短時間でも一息つける時間がある職場」は、はたらきやすさの面で好印象を与える要素となり、定着率の向上が期待できます。
3.業務効率・生産性の向上
休憩によってリフレッシュした状態で業務に戻れるため、集中力や作業精度が保たれやすくなります。結果的に、業務ミスやトラブルの削減にもつながります。
4.将来的な長時間勤務への対応柔軟性
今は5時間勤務でも、業務状況に応じて6時間を超える勤務になる可能性がある場合、あらかじめ休憩ルールを整備しておくことで、柔軟なシフト対応が可能になります。
休憩を設けるデメリット
1.拘束時間が長くなる
たとえば「5時間+30分休憩」のシフトを設定した場合、実働は5時間であっても拘束時間は5.5時間になります。短時間勤務を希望している人にとっては、この「30分の拘束時間」がネックになることがあります。
2.シフト・業務調整が複雑になる
とくにピークタイムが短時間に集中する飲食業や小売業などでは、勤務時間の途中にスタッフが抜けることで人員が足りなくなる可能性があります。業務の流れを考慮したシフト管理が求められます。
3.休憩場所・制度整備のコストが発生
休憩スペースの確保、休憩時間の記録・運用ルールの明文化など、制度導入には一定のコストや事務負担が伴います。
5時間勤務での休憩付与ルールのよくある誤解とリスク

5時間勤務における休憩時間の取り扱いは、企業側・従業員側の双方で誤解が生まれやすいポイントです。「短時間だから関係ない」「30分は必須」「パートだから例外」など、あいまいな理解のまま運用を続けると、労働基準法違反や労使トラブルに発展するリスクがあります。
このセクションでは、よくある誤解と、その誤解に基づくリスクについて整理します。
違法となるケース
1. 実質的に6時間超の労働となっている場合
表面的には「5時間勤務」としていても、準備や後片付け、引き継ぎ時間を含めて実質的に6時間を超えている場合、休憩を与えなければ労働基準法違反となります。特に飲食や介護の現場では、タイムカードの打刻時間と実労働時間が乖離しているケースが散見されます。
2. 休憩中に業務を命じるケース
例えば、電話番や来客対応をしながらの休憩、倉庫番をしながらの昼食など、「自由利用」が担保されていない場合、その時間は休憩とは認められません。その結果、法律上の休憩を与えていないと判断される恐れがあります。
3. 休憩を分割して付与しているケース
ごく短時間の休憩を分割して提供する場合、トータルでは定められた休憩時間を満たしていても、自由利用が事実上制限されていると評価される可能性があります。法的に求められる休憩時間は、連続して一定時間を確保する必要があります。
※参考:厚生労働省「休憩時間を分割する場合どのようなことに注意が必要でしょうか。」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_14.html
違反時の罰則とリスク
労働基準法第34条に違反した場合、企業には以下のような罰則やリスクが発生する可能性があります。
罰則:6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
休憩の未付与が認められた場合、労働基準法違反として罰金刑を科される可能性があります。
リスク:労働者からの申告・訴訟や企業イメージの低下
はたらき方に不満を持った従業員が、労働基準監督署に申告したり、労働組合や弁護士を通じて訴訟に発展するリスクも無視できません。企業イメージの毀損や、求人応募数の減少など、採用面でも大きなダメージを受ける可能性があります。
実務上の休憩時間の運用方法と注意点
5時間勤務であっても、企業が任意で休憩を設ける場合や、実質的に6時間以上の労働になる可能性がある現場では、適切な運用ルールの整備と従業員への周知が不可欠です。
ここでは、休憩時間に関する実務上の運用ポイントと、注意すべき具体例を紹介します。
休憩時間の設定・通知方法
1.就業規則での規定
休憩時間は、就業規則で必ず規定する必要があります。
2.シフト表・業務指示への反映
パートタイム勤務では、日々の勤務時間が異なることが多いため、毎回のシフトにおいて「何時から何時まで休憩」といった情報を明確に記載することが求められます。
休憩の記録・勤怠システムでの管理
1.勤怠システムでの正確な打刻
休憩時間を記録する際は、「休憩入り」「休憩終了」のタイミングを正確に打刻することが重要です。曖昧な打刻や自己申告による記録は、後々の証明で不利になる可能性があります。
2.勤怠管理ツールの活用
近年は、クラウド型勤怠管理システムを導入する企業が増えています。これらのツールでは、休憩時間の自動判定や、法定時間を超えた場合のアラート機能なども備わっており、コンプライアンス強化に役立ちます。
従業員とのトラブルを防ぐために
1.「なぜ休憩がないのか」の説明
5時間勤務であっても、「休憩がない」ことに対して不満や不信感を持つ従業員は少なくありません。そのため、「6時間未満の勤務では休憩が法的に義務付けられていない」ことを丁寧に説明し、納得を得ることが重要です。
2.トラブル事例と対策
たとえば、「あの人は5時間勤務でも30分休憩があるのに、私にはない」という不公平感から不満が生じることがあります。このようなケースでは、業務内容やシフト時間の違いを根拠に説明し、対応の一貫性を保つ必要があります。
採用・人材管理担当者が知っておくべき5時間勤務時の対応ポイント

5時間勤務のパートに対する休憩時間の取り扱いについて、採用担当者や人事担当者が正しい知識を持っていないと、求人での誤表記や契約トラブルに発展しかねません。特にスキマバイトや短時間勤務のニーズが高まる中、募集段階から労務リスクを見据えた対応が求められます。
このセクションでは、実務上でよく発生する注意点と、その具体的な対応策を解説します。
求人票や求人サイトでの表記
求人情報における休憩時間の記載は、求職者との認識違いを防ぐ重要なポイントです。
・「勤務時間:10:00~15:00(休憩なし)」など、休憩有無を明記することで、後から「聞いていない」といったクレームを防ぐことができます。
・「拘束時間」も合わせて記載することで、通勤やライフスタイルとの相性を重視する応募者への配慮にもつながります。
・求人媒体ごとに「休憩」の表記欄が分かれている場合もあるため、記入漏れのないようチェック体制を整えましょう。
雇用契約書・就業規則への記載方法
契約時の文書においても、休憩の取り扱いは明文化しておくことが重要です。
・労働時間が6時間未満の場合、「休憩時間なし」と記載しつつも、企業側の裁量で付与する可能性がある場合は、その旨も併記すると安心です。
・「労働時間6時間未満は休憩なし、6時間以上の場合は45分を付与」といった文言を明確に記すことで、業務の状況に応じてフレキシブルに対応できます。
勤務時間の管理体制整備
勤務時間と休憩の運用に関するトラブルを未然に防ぐには、管理体制の強化が不可欠です。
・管理者(店長・リーダー)への教育を定期的に行い、労働時間と休憩時間の基本ルールを徹底しましょう。
・労使協定や36協定の締結内容と整合性が取れているかも重要な確認ポイントです。
・勤怠システムの導入によって、「自動的に休憩が差し引かれる」「休憩を忘れるとアラートが出る」といった機能を活用すれば、人的ミスによる違反リスクを最小化できます。
よくある質問(FAQ)
5時間勤務のパートタイムに関しては、現場ではたらく人や管理者から数多くの質問が寄せられます。ここでは、実際によくある質問とその回答を簡潔にまとめました。
Q.複数の短い休憩(例:10分×3回)に分けても問題ない?
A.短い休憩の合計が法定休憩時間を満たしていても、連続性がなければ正式な休憩とみなされない可能性があります。可能な限り連続した時間を確保しましょう。
Q.トイレ休憩は休憩時間にカウントしても良い?
A.トイレなどの生理的現象に伴う一時的な離席は、休憩とはみなされません。休憩としてカウントするには、「業務からの解放」が確保され、自由に過ごせる状態であることが条件です。
Q.パートだから休憩の取り扱いが異なるの?
A.パートタイマーでも、労働基準法の休憩に関する規定は正社員と同様に適用されます。勤務時間に応じて休憩の有無・時間を適切に設定しましょう。
Q.5時間勤務でも休憩を設けるときは賃金は発生する?
A.一般的に、業務から完全に解放された時間(休憩)には賃金は発生しません。ただし、休憩中も業務指示や拘束がある場合は「労働時間」とみなされ、賃金が必要です。
Q.休憩中に電話当番をしているが問題ない?
A.「自由利用」ができない休憩は、休憩とは認められません。電話番などの業務対応が必要な状態は、事実上の労働と見なされる可能性が高いです。
Q.勤怠システムで自動的に休憩を引かれているが問題ない?
A.勤怠システムの自動処理でも、実際に休憩が取得できているかどうかが重要です。実態とシステムが乖離していると、監査や労使トラブルの原因になります。
Q.5時間勤務を超えて残業になると、どのタイミングで休憩が必要?
A.6時間を超える勤務になった時点で、45分以上の休憩が法的に必要になります。予定外の残業でも、所定の休憩を与えなければなりません。
Q.業務の都合で一斉に休憩が取れない場合はどうする?
A.労使協定を結ぶことで、「一斉休憩」の原則を適用除外とすることができます。その場合でも、各従業員に適切な休憩を与える必要があります。
Q.シフトに「休憩あり」と記載していたが、与えることができなかった。問題ない?
A.問題です。休憩を与えると明記している以上、実際に与えなければ労基法違反となる可能性があります。現場の運用がシフト表通りに行われているか、定期的なチェックが必要です。
Q.従業員が「休憩はいらない」と言っている場合は与えなくても良い?
A.法定時間を超える勤務には、従業員の意思にかかわらず休憩を与える義務があります。休憩なしでの長時間勤務は、労働者の健康や安全を損なう恐れがあり、違法となります。
まとめ|5時間勤務の休憩は「義務ではない」が「配慮すべき」
パートタイムでの5時間勤務における休憩時間の取り扱いは、労働基準法上では「義務ではない」とされています。しかし、実務の現場ではこの一言だけでは収まりません。
法的には休憩付与義務がなくとも、従業員の健康や満足度、生産性を考慮した柔軟な対応が重要です。また、誤解や法令違反がトラブルの原因となるケースも多いため、管理体制の整備や情報共有の徹底が求められます。
採用や人材管理においては、「法令を満たせばいい」ではなく「トラブルを未然に防ぎ、従業員との信頼関係を構築する」という視点が不可欠です。シフト設計や求人票の記載、就業規則の明文化を通じて、ミスマッチや誤解の芽を摘みましょう。
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