バイトも源泉徴収の対象になる?源泉徴収票の見方や確定申告のやり方を解説

バイトをしていると、「源泉徴収」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
しかし、知識がないと源泉徴収が行われる理由や、源泉徴収ができないと言われた際にどうしたらいいか分からなくなってしまいます。
そこで今回の記事では、「バイトは源泉徴収の対象になるのか」や「源泉徴収ができない場合の対策」を解説します。
「バイトをしているけど、源泉徴収は自分に関係あるのか知りたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
源泉徴収とは?

企業が源泉徴収を行うことで、従業員は自分で所得税を納める必要がなくなります。
とても便利な仕組みですが、「源泉徴収とはどういった仕組みなのか」を理解している人は少なく、税金を納めすぎる可能性もあります。
知らなかったという理由で、そのまま放置することは非常にもったいないです。
そこで、「源泉徴収の仕組み」や「源泉徴収で税金を納めすぎた時の対応方法」を解説していきます。
源泉徴収とは給与から税金を天引きする制度
源泉徴収が行われると、バイトとしてはたらいている従業員が所得税を計算して納税する負担を減らすことができます。
源泉徴収とは会社や使用者が、所得税を差し引いた金額を従業員に給与として支払う制度です。差し引いた税金は、従業員に代わって企業が税務署に納税することになっています。
源泉徴収の仕組みがないと、従業員は自身の所得を計算して確定申告し、所得税を納める必要があります。
所得税を計算する際には、給与収入が103万円までであれば所得税はかかりません。
しかし、これらを考慮して所得税を求めるのは、従業員にとって大きな負担となります。
バイト先の企業が源泉徴収をしてくれると、従業員は所得税を計算して納税する手間を省くことができます。
源泉徴収で納めすぎた税金は戻ってくる場合がある
源泉徴収で納めた所得税が、実際に納めなければならない金額よりも多かった場合、確定申告や年末調整をすることで還付されることがあります。
本来所得税は、1月1日~12月31日の所得から計算されるため、源泉徴収により所得税を納税すると、過不足が出る可能性があります。
具体的には、短期的に稼ぎすぎると源泉徴収により所得税を多く納税してしまいます。
- 8月に短期バイトで25万円を稼ぐと、8月の源泉徴収で所得税が差し引かれます。
- その後にバイトに入ることができず、その年の給与所得が103万円以下の場合、所得税を納税する必要はない。
- つまり、源泉徴収により所得税を払いすぎているということです。
このように、所得税を納めすぎた場合は確定申告や年末調整をすることで、還付金として戻ってくるケースがあります。
年末調整と確定申告とは?
源泉徴収により納めすぎた所得税の還付金を受ける方法は2つあります。
1.年末調整
2.確定申告
それぞれ解説していきます。
年末調整とは?
所得税を納めすぎた場合に、還付金を受ける方法の1つ目は、「年末調整」です。
年末調整とは、会社員が1年間に納めるべき所得税と、毎月給与から天引きされた源泉徴収額を比較し、税額の過不足を調整する手続きのことで、税金の過不足は12月や1月の給与で調整されます。
年末調整は毎年11月~12月ごろに実施され、従業員と会社は以下の処理を行います。
従業員 | 各種控除の申請 |
会社 | ①従業員の年間の給与所得の確定②控除額の確認③過不足額を計算し精算 |
これらの手続きにより、12月もしくは1月の給与から、所得税を納めすぎていた場合には還付され、不足していた場合は追加徴収されます。
確定申告とは?
所得税を納めすぎた場合に、還付金を受ける方法の2つ目は、「確定申告」です。
確定申告とは、個人事業主が年間の収入と納税する税額を、税務署に申告する手続きのことを指します。
バイトでも年末調整を受けられなかった場合、確定申告をすると所得税の還付を受けられる可能性があります。また、年末調整と異なり確定申告の場合、以下の手続きを全て従業員が行わなければなりません。
- 必要書類を準備
- 所得税の計算
- 申告書の作成・提出
実施期間も翌年の2月16日~3月15日となっています。年末調整の時期と異なるため、注意が必要です。
バイトや副業も源泉徴収の対象になる?

会社員やバイトのような給与を受け取るはたらき方の場合、基本的には源泉徴収の対象になります。
しかし、源泉徴収の対象となる要件は収入金額やはたらき方によって異なります。
また、会社員が副業をする場合に源泉徴収の対象となるかどうかも気になるところです。
ここでは、「どのようなバイトや副業が源泉徴収の対象になるのか」について、解説していきます。
バイトでも基本的に源泉徴収の対象になる
源泉徴収は、会社員だけでなくバイトとしてはたらく従業員も対象になります。
源泉徴収は以下の所得に対して適用されます。
- 給与所得
- 事業所得
- 利子・配当所得
バイトの場合、毎月の給与やボーナスに当たる給与所得が源泉徴収の対象にあたります。
ただし、1か月の収入が88,000円未満の場合は、年間の給与収入が103万円未満となる可能性が高いため、源泉徴収の対象にはなりません。
単発バイトでも源泉徴収の対象になる場合がある
単発のバイトの場合、1か月の収入が88,000円未満でも、源泉徴収の対象となる場合があります。
具体的な要件は以下になります。
- 日給が9,300円以上
- 2か月以内の日雇い契約
- 労働日ごとに給与支払いを行う
単発バイトの場合、源泉徴収の要件が異なることを理解しておきましょう。
副業でも源泉徴収の対象になる場合がある
会社員が副業をする場合は、収入の種類や金額によって異なります。
国税庁によると、源泉徴収の対象となる副業は以下の通りです。
1.原稿料や講演料など
2.弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
3.社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
4.プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
5.映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
6.ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
7.プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
8.広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
引用元:国税庁
ちなみに、会社員の副業として人気のWebライターやデザイナー、動画編集業務の報酬は「原稿料や講演料など」に含まれます。
ただし、上記の副業でも必ずしも源泉徴収が行われるわけではありません。
実際に、私はWebライターの副業をしていますが、源泉徴収をするクライアントもいれば、源泉徴収をしないクライアントもいます。
つまり、源泉徴収をするかどうかはクライアント次第です。
所得税の納税漏れにならないためにも、必ず源泉徴収がされるのかは確認しておきましょう。
以下の記事で源泉徴収票の見方を解説しています。
バイトが源泉徴収票をもらえるタイミングはいつ?

バイトが源泉徴収票を受け取るタイミングは、従業員の状況によって異なります。
- バイトとして勤務し続けている場合
- バイトを辞めた場合
それぞれ解説していきます。
年末調整の後
バイトを続けている場合、基本的には12月の年末調整後に源泉徴収票を受け取ることができます。
理由は、源泉徴収票は年末調整の内容を反映した状態で発行されるからです。
法律上で、翌年の1月31日までに源泉徴収票を従業員に交付する必要があるため、12月分の給与明細と一緒に受け取れるケースが多いです。
最後の給与確定後のおよそ1ヶ月以内
企業が源泉徴収票を交付する12月〜1月に、バイトを辞めているケースもあります。
その場合は、以下の通り源泉徴収票が発行されて受け取ることができます。
- 発行:最後の給与が確定した後1か月以内
- 受け取り:退職後1か月以内に給与明細と一緒に受け取りが多い
退職している場合は、自宅へ直接送付されるケースが多いため、わざわざ受け取りに行く必要はありません。
バイトの源泉徴収票がもらえない場合はどうする?

源泉徴収票は基本的には発行されますが、万が一発行されなかった場合の対応方法を2つ紹介します。
- バイト先に発行依頼をする
- 「源泉徴収票不交付の届出」を作成し税務署に相談する
それぞれ解説していきます。
まずはバイト先に源泉徴収の発行を依頼
1月の末になっても源泉徴収票が発行されない場合、まずはバイト先に発行依頼をしてみましょう。仮にバイトを辞めていても、最後の給与が支払われてから1か月以内に源泉徴収票は発行されています。
企業は従業員の源泉徴収票を発行する義務があるため、企業から従業員への交付が漏れている可能性が高いです。
再発行してから手元に届くまでに時間がかかるため、「源泉徴収票が発行されないな」と感じたらすぐに相談しましょう。
税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を提出
万が一、バイト先に源泉徴収票の発行を依頼しても発行してもらえない場合は、税務署に相談しましょう。
この時に必要な書類が「源泉徴収票不交付の届出書」です。以下の内容を記載してご自身の管轄の税務署に提出することで、税務署からバイト先に源泉徴収票を発行するよう指導が行われます。
- 届出者の情報
- 事業主の情報
- 源泉徴収票に関する情報
- これまでの経緯
出典:国税庁
詳しくは以下の記事で解説しています。
バイトの確定申告のやり方や必要なもの

バイトの場合、基本的には企業が行う源泉徴収と年末調整を行うことで、所得税の申告や納税は完了します。
しかし、確定申告をしなければならないケースもあるので注意が必要です。
ここでは、以下の3点について解説していきます。
- 確定申告が必要な人
- 確定申告のやり方
- 確定申告に必要なもの
確定申告が必要な人
バイトで確定申告が必要な人は、年末調整の対象にならない人です。
具体的には、以下の人が確定申告をする対象となります。
- 複数の会社でバイトをしている人
- 年末にその会社ではたらいていない人
複数の会社でバイトをしている、いわゆるダブルワークの場合、2つ目のバイト先では確定申告が必要です。
なぜなら、年末調整は1つの会社でしか受けられないからです。もう1社で支払いすぎた税金は、確定申告をしなければ取り戻せません。
また、年末調整は11月~12月に実施するため、この時期にはたらいていないと年末調整が受けられず、確定申告をする必要があります。
確定申告には難しいイメージがあり、敬遠する人が多いです。ですが、納めすぎた税金を取り戻すことができるため、多少面倒でも実施するべきでしょう。
確定申告のやり方
ダブルワークや年末までにバイトを辞めた人は、確定申告で前年の所得を申告する必要があります。
確定申告の提出方法は3つあります。
- e_Taxを使ったインターネットでの提出
- 郵送での提出
- 窓口での提出
最近では、インターネット環境があればいつでもどこでも申告できる国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を活用した確定申告が主流です。
e-Taxの公式サイトにアクセスして、源泉徴収票や保険料の控除額を参考に必要事項を入力していくと「確定申告書」が作成できます。
「確定申告書」の作成が完了したら、e-Taxから送信して確定申告完了です。
実際にやってみると、意外と簡単にできるため、確定申告が必要な人はぜひe-Taxで確定申告をしてみてください。
詳しくは以下の記事で解説しています
確定申告に必要なもの
最後に、確定申告をする際に必要なモノを紹介します。
・源泉徴収票
・控除証明書
・通帳
・【電子申告の場合】スマートフォンorパソコン
・【電子申告の場合】マイナポータルアプリ
・【電子申告の場合】マイナンバーカード
源泉徴収票や控除証明書を受け取ったら、無くさないように保管しておきましょう。
バイトの源泉徴収に関するよくある3つの質問

最後に、実際に確定申告をする際や新社会人になるタイミングで、アルバイトをしていた人が疑問に持つ点をまとめました。
4月から新社会人になりますが、源泉徴収票が必要って本当ですか?
1月以降にアルバイトをして収入がある場合、その年の年末調整で所得を正確に計算するために、アルバイト先の源泉徴収票が必要になります。
理由は、1~12月の給与をもとに年末調整で所得税を計算するためです。
もし、入社前にアルバイトをしていた人は、バイト先から源泉徴収票を発行してもらいましょう。
源泉徴収票は、退職してから1か月程度で発行されるため、必ず保管しておきましょう。
源泉徴収票を紛失したのですが、再発行はできますか?
源泉徴収票を紛失してしまった場合、アルバイト先に依頼すれば再発行が可能です。
再発行した源泉徴収票には、「再発行」と記載されますが、特段問題ありません。
申請してから再発行まで、1週間程度かかります。紛失した場合は、年末調整や確定申告など必要なタイミングで手元にないとならないように、余裕をもって再発行の依頼をしましょう。
源泉徴収されているか確認する方法はありますか?
源泉徴収されているかどうか確認する方法は大きく2つあります。
- 源泉徴収票
- 給与明細
源泉徴収票は、源泉徴収を行っていなくても発行されます。「源泉徴収税額」の欄に金額が記載されていれば、源泉徴収がされています。
また、給与明細で確認する場合は、「所得税」もしくは「源泉徴収税額」の欄を確認しましょう。
まとめ
源泉徴収の仕組みやバイトとの関係性について、解説してきました。
源泉徴収は、企業が従業員の代わりに所得税を国に納税してくれる仕組みのため、従業員の負担を減らすことができます。
しかし、源泉徴収で納めた所得税が、実際に納めなければならない金額よりも多いケースもゼロではありません。その際は、年末調整や確定申告をすることで納めすぎた税金を取り戻しましょう。
日常生活であまり意識する場面はありませんが、税金で損をしないためにも、源泉徴収についてしっかりと理解しておきましょう。